試合レポート

明徳義塾vs関西

2010.11.14

明徳義塾vs関西 | 高校野球ドットコム

北川(明徳義塾)

活躍を見せた明徳義塾の3・4番 タレント揃いの関西

2010年明治神宮大会が開幕した。開幕戦は中国地区代表・関西と四国地区代表・明徳義塾の対決。
1回の表、関西はヒット、バントヒットで無死満塁のチャンスを迎える。しかし4番渡邊がサードゴロ併殺に倒先制のチャンスを逃す。
明徳義塾は1番の梅田がレフト前ヒット。2番今里のライト線を破る長打で明徳義塾が1点を先制。
2回の表、水原がライト越えの本塁打で3対2。3回の裏、二つの押し出し四球により2点を勝ち越して5対2。
6回の裏、3番先田のタイムリーと4番北川の左中間を破る2点タイムリーツーベースで8対3と突き放す。関西は8回に堅田の犠牲フライで1点を返したものの、明徳がその裏、1点を追加し、9対4。明徳がそのまま逃げ切り2回戦に進出した。

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注目は、来年の高校球界を代表するだろうスラッガー北川倫太郎(2年 右/左 185センチ82キロ)。

この試合は左中間を破るツーベース1本のみ。しかし飛距離だけではなく、左にも強烈な打球を飛ばせるのも彼の長所。

今日改めて感じたことは打席での集中力の高さだ。打席に入るまで念入りに素振りをして打席に入る。打席に入ってからはしっかりと足場を固めて自分のリズムで構えることができている。

彼は低め・臭い球には手を出さず狙い球を打つまではしっかりとボールを見極めることができている。
そして6回に彼のヒットゾーンである外角に入った直球を左中間へ運んだ。
1年生から明徳の4番に座り、常にマークされてきた北川。まともに力勝負をしてもらえない。その中でも勝負強さを発揮した。
守備については無難に処理しているが、あまり肩は強くないので、カットマンにしっかりと返す、打球に素早く反応し、ポジショニングを工夫するなどといった考えたプレーで幅を広げていくこと。

甲子園では5番を打っていた先田弦貴(三塁手 右/右 170センチ64キロ)は3安打の活躍。
スクエアスタンスから小さく足を上げて軸がぶれない打撃が持ち味。サードへの内野安打、ライト線を破るスリーベース、センター前ヒットと猛打賞を記録。
四国大会では不調だったらしいが、思い切りの良い打撃スタイルで復調をアピールした。


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堅田(関西)

一方、敗れた関西。粗っぽさは残るチームだが、個々のレベルは明徳義塾を上回っており、今回はチームの中心選手である3人を紹介したい。

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中国地区屈指の好投手・堅田裕太(左/左 175センチ75キロ)は広島から指名された岩見優輝(大阪ガス)のような投手。
サイド気味に投げる投球フォームから投げ込む直球は常時135キロ前後(マックス140キロ)を計測。彼のストレートはキレ型ではなく、球威型。
変化球は120キロ前後のスライダー、120キロ前後のチェンジアップ、125キロ前後のシュート、100キロ前後のカーブを投げていく。変化球の切れは良く、特にシュートは外角低めに沈むので、右打者にはかなり有効的。チェンジアップ、スライダーのキレ自体は良かった。

ただこの試合では5四死球とコントロールが荒れた。2-3になることもしばしばで、テンポが悪かった。
投げるボールの精度の高さは感じるが、緻密さを欠きツメの甘い投球は選抜から変わっていなかった。
また投球だけではなく、クイックやフィールディングの動きなど、課題が残った。

ただ、ポテンシャルが高い投手なだけに全体のレベルアップと共に、ディティールの上達で投手として更に幅を広げることができる。
冬を超えて中国地区から全国を代表する左腕へ。期待できる逸材だ。

1年から主力選手として活躍していた4番の渡邊雄貴(三塁 180/80)はサードからライトへコンバート。
この試合ではセンターオーバーの三塁打と一時は同点となるセンター前タイムリーを打った。
スタンスはやや右足を引いたスクエアスタンス。グリップを高めに置いて大きく構える。投手の足が降りたところから始動を仕掛けていき、足を小さく上げて真っ直ぐ踏み込んでいく。ぐいっとトップを深くとっていき、振り出して行く。
リーチの長さがありながら肘を畳むのが上手く、センター前のタイムリーの時は詰まりながらも肘をしっかりと畳んで打ち返してセンター前ヒット。
長打は長いリーチを活かしたあわやバックスクリーン直撃と思わせる一打を見せてくれた。ベースランニングは一塁を蹴ってからの加速が速い。

守備について。シートノックから強肩を披露。打球の反応については本職の外野手としてはこれからだが、カバーリングはしっかりしている。
今日の試合は途中からショートを守っていたが、人工芝でも落ち着いた守りを見せており、彼は内野手向きの選手ではないだろうか。
身体能力と技術が合わさった選手であり、選抜では注目の一人だ。


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水原(関西)

水原浩登(投手兼遊撃手 右/右 178センチ78キロ)は投打に高いセンスを感じさせるプレーヤー。
打っては2ラン・レフトオーバーの二塁打を含むマルチヒット。投手としては最速142キロをマークした。

(投手)
右オーバーから投げ込む直球は常時135キロ~140キロでマックス142キロを計測。
ストレートの勢い、キレは中々なものを感じさせるが、ややストレートはシュート回転して抜ける傾向がある。
変化球は120キロ前後のスライダー、120キロ前後のシュート、90キロ前後のカーブを投げこむ。
球の勢いは中々で、身こなしのよさ・クイックの機敏さにはセンスを感じさせる。

(野手)
スタンスはオープンスタンス。バットを立てて構える姿にはセンスを感じさせる。
投手の足が降りたところから始動を仕掛けていき、小さくトップを取って振り出していく。
第1打席は高めの変化球を思い切り上から叩きつけてライトスタンドへ運び、そして8回の表にはスライダーを膝を使って拾いレフトオーバーの二塁打を放った。

打つときに軸足を動かす特徴のある使い方をする選手だが、スイングは鋭いし、タイミングを取るのが上手く、センスは長けている。
ショートの守備はフットワークの良さ・地肩の強さを活かした守備は見所がある。人工芝に慣れていなく、もたつくことはあったものの、悪くない。

(まとめ)
投手としてはまとまりがあり、球速を更に伸ばしていけると面白いタイプ。
野手としてはスイング自体も鋭いし、あとはグリップが入りすぎる癖を少しずつなくしていけば、打者としても面白い選手なので、現段階ではどちらに適正があるかは結論付けられない。
選抜以降も引き続きチェックして見極めていきたい。個人的には一押しの選手である。

(文=河嶋 宗一)
(写真=高校野球情報.com編集部)
(写真img37~img60=中谷 明)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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