試合レポート

鳴門vs小松島

2010.07.28

2010年07月27日 オロナミンC球場  

鳴門vs小松島

2010年夏の大会 第92回徳島大会 決勝

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鳴門ナイン

死闘制した鳴門、3度目の正直で「古豪復活」なる!

【試合経過】

勝つも涙、負けるも涙。そしてスタンドも涙。2時間24分に及ぶ死闘となった徳島大会決勝戦は、涙なしでは語れない素晴らしいミラーゲームとなった。

この試合、まず主導権を握ったのは小松島。初回、前日の準決勝に比べ変化球が浮き気味の鳴門先発・吉田忠浩(3年)に対し、3番・増田大輝(2年)のタイムリーと、4番・山本史典(2年)の内野ゴロの間に2点を先制する。

一方、「2点取られても焦りはなかった」と石堂忠継主将も語ったように伝統の渦潮打線に絶対の自信を持つ

鳴門

は、3回裏になるとこれまで1人で全イニングを投げ続けた疲労から球が真ん中に集まりだした小松島先発・西口元気(3年)への反撃を開始。
まずは3番・眞田和久(3年)アウトコースの難しい球に巧くバットを合わせて1点を返すと、2死満塁から5番・春藤亮介がサウスポー攻略のお手本となる逆方向、三遊間への2点タイムリーヒットで一気に逆転。

その後も5回には4番・鈴江啓太(3年)のタイムリー、6回にも春藤のこの日4打点目となる2点タイムリー3塁打で、小松島から野球では安全圏とされる4点のリードを奪うことに成功する。

ところが、試合はこのままでは終わらなかった。8回、「全員野球では日本一」(豊富尚博監督)を体現するベンチからの声援を背にした6番・川原央(3年)の犠牲フライで今年の徳島県高校野球界を席巻してきたダイナマイト打線に火が点いた小松島は、3対7で迎えた9回、増田、山本の連続タイムリーと5番・奥田雄哉の犠牲フライで1点差に。続く川原も安打で続き、2死1・2塁と長打が出れば逆転のチャンスを築いた。

しかし小松島の反撃もここまで。「冬場は学校近くの大手海岸や妙見山の階段を登ってスタミナを付けた」吉田が7番・津江慧多(3年)に投じた161球目は力なくショート眞田の下へ。そして、そのボールが眞田からサード杉本京太(1年)に送られた瞬間、

鳴門

は昨秋、今春といずれも決勝で敗れていた小松島に対し、夏の大舞台においてそのリベンジをついに達成したのである。

さらにこの優勝は高校野球監督歴25年目、平成19年度に昭和60年度~平成6年度以来、2度目となる母校の監督に就任し4年目を迎える森脇稔監督にとっても、潮崎哲也(現:埼玉西武ライオンズ1軍投手コーチ)を擁した昭和61年(1986年)第68回大会と平成5年(1993年)第75回大会に続く決勝挑戦3度目にして始めての栄冠。
「3度目の正直」づくめとなったこの勝利は、新チーム結成時に掲げた「古豪復活」を、15年ぶり6度目となる夏の全国大会出場という最高の結果で成し遂げたものとなった。

【選手・監督コメント】

■鳴門:森脇 稔監督
「(OBの)潮崎(哲也)とは試合前にコーチを通じて話をしました。『ミラクルですね。頑張ってください』と言われましたね。ウイニングボールは僕が貰っていいのかというくらい。子供たちが耐えて成長したことがこの結果につながったと思います。春以降、津川祐規(3年)をレフトからセカンドにコンバートしたことにより守備が安定したことが大きかったですね。春はエラーで負けたりしていたのですが、今大会では津川も含めて大事な場面で守れたと思います。

大会を通じてみると厳しいゾーンの中で1・2回戦を粘って勝ち上がってきたのがよかったです。それまでは大会になったら力を出し切れず、チャンスを作ってもランナーが返せなかったのですが、(2回戦の)

富岡西

戦を越えてチームが成長したと思いますし、練習試合より打てるようになりました。(過去2敗、今回3回目の対戦となる)小松島に対しては私が言わなくてもみんな意識していましたが、今日はそれを敢えて1つのテーマにしていました。『最後の意地を出せ!』ということを言って、実際に9回はいつもなら逆転されていたところで最後の意地を出してくれました。今のチームには『伝統を新たに作れ』ということを言っていましたが、昨夏1回戦負けの先輩の分までよくやってくれました。

甲子園でも『派手なプレーはするな』と言いながら助け合って信じて練習をやってきたいつも通りの戦いをしていきたいですね」

■石堂 忠継一塁手(3年・主将)
「以前、

鳴門

が強かったことはOBからいろいろと聞かされていましたし、森脇監督からも『自分たちで新しい時代を作っていけ』と言われていたので、『復活しないといけない』という想いはもっていました。嬉しくて泣いたのは初めてです。

今日は小松島に2点を先制されても焦りはなかったですし、徐々に追いつけばいいと思っていました。最初は相手の西口(元気)のチェンジアップに詰まっていましたが、体力が落ちてくると捕えられるようになりました。逆転した後に終盤追い上げられても、今までやってきた練習を信じていれば負けるわけはないと思ってプレーしたので、気持ち的には余裕がありました。今考えれば全ては無駄ではなかったです。小松島に2つ負けたこともプラスに考えられるようになったし、昨秋四国大会の

済美

戦で粘ったことも今に活きています。小松島に勝って甲子園に行くことは抽選会でも相手キャプテンの埜上(数馬)くんにも話をしたし、3回目は負けられないと思っていたことが、今日の勝利につながったと思います。

このチームはチャンスで打てるメンバーが揃っているので、誰かが打たなくてもフォローができるチーム。これまでは甲子園に行くことを目標にしていましたが、甲子園では自分たちの野球を楽しんでやりたいです」。

■吉田 忠浩投手
「中盤に味方が得点を取ってくれたので、そこでは自分も余裕を持って、相手も焦ってくれたのでうまく打ち取れました。特に5回・奥田くんに0-3から2球スライダーを投げて三振に取ったボールはよかったですね。(3点を奪われた)9回は1つずつアウトを取ることだけを考えていました。最終的に1点多ければいいと思っていたので、1点差にまでさせるつもりはなかったですが、余裕を持ってピッチングができていたと思います。今大会では全部投げることは監督やコーチからも言われていたし、その自覚もありました。

甲子園に行くのは小学校6年生のときに小松島を応援しに行って以来、投げるのは初めてなので、まず1勝したいです」。

■小松島:豊富 尚博監督
「選手たちはホンマに野球が好きで、純粋で、4月に(名西から)来た僕を素直に受け入れてくれました。新任監督のチームは色々と難しいところがあるのですが、それでも選手たちは僕についてきてくれて、その部分では本当に3年生には助けられました。

特にキャプテンの埜上(数馬)の存在は大きくて、彼にはいろいろなところで助けてもらいました。さらに鈴木航とか細田(大輔)も『絶対1人じゃない。俺らがついている』という声を最後までかけてくれたことに感謝しています。西口(元気)にはいつも通り『全員で戦う。お前は1人じゃない』ということだけを言ってありました。彼も本来の力を出し切ってくれたと思います。このチームはそれに尽きますし、9回の攻撃でそれが凝縮されて全部出し切ったと思います。全員野球という意味では日本一だと思います。その中でも1点差で負けたということは力負けですね」。

(文=寺下 友徳


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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