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敗退したら活動自粛 大阪の名門・上宮、復活に向けできるだけ長い春に【前編】

2021.04.23

 1993年春優勝、1989年春準優勝など、甲子園で輝かしい実績を残してきた大阪の名門・上宮。しかし、1997年春を最後に甲子園から遠ざかっており、昨秋も5回戦で旋風を巻き起こした大阪山田に4対7で敗れた。

 今年は打力がウリのチームで、32年ぶりとなる夏の甲子園出場を目指している。復活を目指す名門の現在地に迫ってみた。

夏は32年聖地から遠ざかる

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上宮ナイン

 取材に訪れたのは水曜日だったが、練習が始まるのは午後5時前と遅い。大阪市天王寺区の学校から電車と自転車で1時間以上かけて、太子町にある兄弟校・上宮太子のグラウンドに通っているからだ。上宮太子とグラウンドを共有しているため、平日に使えるのは水曜日と金曜日だけ。それ以外は室内練習場を使用し、土日は他校で練習試合を行うことが多い。

 決して恵まれている環境とは言えないが、「環境で結果が左右すると我々は思っていませんし、この環境でどう勝ち残っていくのかを常々考えさせてもらっています」と2014年8月から指揮を執る村田 侑右監督は話す。

 グラウンドを使える日は守備や走塁など、実戦練習に時間を費やす。この日もシートノックとシート打撃を行い、実戦感覚を養っていた。それ以外の日は室内練習場での打撃練習やウエイトトレーニングがメイン。メリハリをつけながら強化を図ってきた。

 2017年夏に4強入りするなど、近年も上位に度々顔を出している。昨夏の独自大会は学年問わずベストメンバーで挑み、5回戦で興國に敗れた。

 旧チームからは中堅手の金山 朋矢(3年)と4番を打つ右翼手の大薗 元輝(3年)がレギュラーとして出場していた。以前から学年のまとめ役をしていた金山が主将に立候補し、新チームがスタート。打撃好調で練習試合の勝率も高く、「良い形で秋の大会を迎えられたと思っています」と指揮官は秋の大会に自信を持っていた。

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負けたら自粛 できるだけ長い春に

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村田侑右監督

 秋の大阪大会は1回戦で桜宮に8対1で勝利を収めると、2回戦から4回戦までは3試合連続で11得点と自慢の攻撃力を発揮し、順調に勝ち進んだ。

 5回戦の大阪山田戦も初回に2点を先制したが、「タイムリーエラーをいくつかしてしまったことで、リズムが悪くなってしまった」(村田監督)と守備が乱れて逆転負け。自分たちから試合の流れを手放してしまい、持ち味の打力も発揮することができなかった。

 失策で敗れた反省から、冬場は守備の強化に注力。一球に対するこだわりをこれまで以上に持ち、取れるアウトを確実に取ることを意識づけてきた。

 すると、3月以降の練習試合では強豪校相手にも好ゲームを連発。「大阪でも強い高校や甲子園に出るようなチームにも少ない点数で抑えて、こちらがしっかり打撃をして勝つことができていたので、それは反省が活きたのかなと思います」と話す金山をはじめ、選手たちに自信をもたらす結果となった。

 春季大会に向けて良い流れができつつあったが、4月に入って大阪では新型コロナウイルスの感染者が増加。ちょうど取材に訪れた4月14日に府から部活動の休止要請が出て、大会の開催や出場が危ぶまれる事態となった。選手、指導者ともに動揺が広がってもおかしくないが、村田監督はあくまで目標は夏だと言い切る。

「『どういう状況になるかわからないけど、今をしっかり全力を尽くしてやっていけるように頑張っていこう』ということは日頃から伝えております。もし、春の大会がなくなったとしても夏の大会を目指して勝つことを目指して頑張っていきたいと思います」

 練習前のミーティングでも村田監督はあくまでも最終目標は夏であると選手に説き、気持ちが揺れ動かないように努めていた。

 結果的に大会は開催され、大会期間中の活動は認められることになったが、敗退した瞬間にしばらくの間、活動自粛になることが決まっている。夏に向けて充実した時間を多く過ごすためにも春季大会でなるべく勝ち進んでおきたいところだ。

(取材=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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