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関西中央(奈良)様々な経験を通して伸びしろを伸ばす!【前編】

2019.02.25

 智辯学園天理に昨夏の甲子園で初勝利を挙げた奈良大付が存在感を放っている奈良県。その中で虎視眈々と甲子園初出場を狙っているのが創部16年目の関西中央だ。まだ野球部としての歴史は浅いが、2008年春に県大会準優勝、2009年秋に近畿大会出場という実績を持つ。悲願の甲子園出場を目指す同校の練習に潜入してみた。

社会勉強として全部員がアルバイト!?

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関西中央の練習の様子

 12月某日、2学期も終わりを迎えようとしている時期に関西中央のグラウンドを訪れた。学校から歩いて約10分ほどのところにあるグラウンドは黒土の専用グラウンドと十分に練習のできる環境が整っている。かつては女子高で当時はテニスコートと駐車場になっていたが、野球部創部と同時に強化を始め、専用グラウンドが作られたのだという。

 取材当日は朝9時から練習と聞いていたのだが、練習開始時間になってもグラウンドには数名しかいない。松田全史監督にその理由を聞いてみると2学期末テスト終了の翌日から冬休み最終日はアルバイト期間に充てており、アルバイトが休みの選手しか練習に参加していないからだという。

 アルバイトを開始したのは10年前。その理由を松田監督はこう語る。「お金儲けではなくて社会勉強が目的です。責任ある行動を取るとか、挨拶をしっかりするとか目上の人を立てるかとか、任された仕事を責任もってするとか要はそういうことなんです」。

 始めた地元の郵便局が中心だったが、今年は選手自らアポを取ってカフェ、運送屋、家電量販店など様々な所に応募をかけた。中にはなかなか決まらない選手もいたが、無事に全員の勤務先が決まったそうだ。アルバイトの勤務内容や気づいたことを日誌に書くことを選手たちには義務付けているが、その内容を見ると、「良い勉強しているのが凄く伝わってきますね。それを見ると来年もやろうと思うんですよね」と松田監督は語る。

[page_break:伸びしろではどこにも負けない!]

伸びしろではどこにも負けない!

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関西中央野球部の選手たち

 松田監督は奈良の伝統校である奈良郡山出身。同志社大を経て中学校の教員として軟式野球部を19年間指導した。その後、野球部の本格強化に動いていた関西中央に2005年から赴任。同年の春季大会終了後から2010年度まで監督を務め、一旦は姫島裕親現総監督に指揮を譲ったが、2015年度から監督に復帰している。

 松田監督にチームの特色を伺うと豊富な練習量だと答えてくれた。「コツコツやる子たちをこちらもコツコツ付き合いながらいかに伸びしろを大きくするかというところが一番のポイントじゃないかと思います。伸びしろが同じだったら天理智辯学園には勝てないですからね」。

 休養日は少なく、平日の練習は放課後の4時から8時頃まで行われる。その後は各自で自主練習を行うが、指導陣は基本的に見ているだけだという。「自分に厳しい練習をできる子がいる時は強いですね」と松田監督は自主練習の重要性を説く。

 2008年春に準優勝した時のエースは同級生で5人いた投手の中で最も球速が遅く、出番を求めてアンダースローに転向。前年の秋はベンチにも入っていなかったが、自主練習で毎日2時間走っていたという。春になり、他の主力投手の故障でエースの座を掴むと準決勝までの4試合をすべて完封。努力の成果が表れた瞬間だった。

 「そこら辺の公立の方がいい選手は集まっていますが、練習量でカバーできた感じです」。県内の有力選手が他の私学に流れる中、努力でその差を埋めてきた。

 前編はここまで。後編では部員の卒業後を見据えた指導について語ってもらいました。さらに昨年の悔しさや春、夏への意気込みを語ってもらいました。後編もお楽しみに!

(文・馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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