Column

「目線は常に日本一へ」兵庫の公立の雄・社が固めた強い決意【後編】

2019.01.12

 昨秋の兵庫大会では、小野津名関西学院市立尼崎を退け、4強入りを果たした。準決勝で明石商に敗れた後に臨んだ報徳学園との3位決定戦では延長13回の死闘の末、惜敗。あと一歩の所で近畿大会出場は逃したが、昨夏の甲子園大会でベスト8に輝いた名門を追いつめた一体感のある戦いざまは強く印象に残った。
 後編では、オフの期間の取り組みや甲子園出場に向けた強い決意を伺った。

【前編】『目標』ではなく『決意』の域へ!兵庫県の公立の雄・社が痛感した勝負への姿勢

オフ期間に実施した新たな試み

「目線は常に日本一へ」兵庫の公立の雄・社が固めた強い決意【後編】 | 高校野球ドットコム
ミーティングを行う様子

 走塁面では「盗塁力の向上」を課題に掲げた山本監督。カギとなるのは「タイミングはアウトでも、捕手の送球が逸れてセーフになればオッケー。結果オーライのように映るセーフでもそれは立派な盗塁という考え方をチーム全体で持てるようになること」と話す。

 「ストップウォッチで測った机上の計算では盗塁が厳しいと思われる場面でひるむ選手になってほしくないという思いがあります。キャッチャーの送球が逸れたということはスタート前からプレッシャーをかけることができたと解釈すればいい。多くの高校生捕手はここ一番の場面でなかなか二塁にストライクを投げることができませんし、公式戦で送球が逸れる割合は練習試合の倍はあると思っています。『思いのほか送球は逸れるもの』という感覚が宿れば、スタートを切る勇気も増しますから」

 オフ期間のランメニューに関しては、今オフは新たな試みを実施した。これまでは、オフ期間突入と同時にいわゆる「冬場の走り込み」メニューを組み入れてきたが、今オフは、12月いっぱいの走り込みを封印。その狙いを山本監督は次のように語った。

 「秋季大会期間中に大きくしてきた体をさらにスケールアップしたいという思いがありました。筋力を上げることでエンジンを大きく、強くすることができれば走るスピードも上がっていく。これまでは冬場は、長距離走、300メートルダッシュ、短距離ダッシュなどを冬場にガンガンおこなってきましたが、走り込みをおこなうと、体はなかなか大きくならない。まずはウエイトトレーニングと自重トレでエンジンのスケールアップをはかり、年が明けてからランメニューを入れていく、というやり方でこのオフは進めています」

[page_break:打ちにいって見逃せる技術]

チーム全員が高い意識を持つために合言葉を変更

「目線は常に日本一へ」兵庫の公立の雄・社が固めた強い決意【後編】 | 高校野球ドットコム
2018年ドラフトでは近本光司(阪神)、辰己涼介の2選手がドラフト1位でプロ入りを果たした

 対外試合禁止のオフ期間は約3ヶ月。長い期間に感じがちだが、ナインは「オフは実質8週間」という意識の中でオフ期間を過ごす。
「正月休み、修学旅行、3学期の定期考査、学校の入試期間をそれぞれ1週間とカウントすると、チーム全体でしっかり練習できる期間は4週間も削られてしまう。つまり12週間マイナス4週で8週間。高校球児にとっては長く感じてしまいがちなオフ期間ですが、実際はそんなに時間はないということに気づいてもらいたいんです」

 「2ヶ月」ではなく「8週間」と伝えるのは、「週で表した方が、『時間は思ったよりもない!』という感覚がより強調されるかなと思いまして…」と山本監督。
 「選手たちに『8週間前の自分と今日の自分ってどれほど変わった?』と質問すると、みんな突然、恐怖に陥ったような表情をするんです。そんなに変われてないぞと。8週間前なんてついこないだのことじゃないかと。長いと思っていたオフが実は思ったよりも短いということに気づけることで、選手たちは一気に集中モードに突入することができる。それが最大の狙いです」

 42名の部員を率いる長井誠哉主将は、来たる春、そして夏に向けての思いを次のように語った。
 「今までは『甲子園に出場し、勝利を挙げる』を合言葉に掲げ、日々の練習を追求してきたのですが、そこに目線を置いていたのでは、そこにすら届かないということを秋の戦いを通じ、思い知らされました。そこで、つい最近、選手全員で話し合い、どんな相手がやってきてもうちは大丈夫といえるように『甲子園大会の決勝レベルの相手をイメージしながら練習し、日本一になる』という合言葉に変更しました。そのためには学年、立場に関係なく、全員がキャプテンの意識をもって、チームのためになると感じたことを遠慮なく発言できるチームになる必要がある、と。この夏、どのチームがやってきても兵庫を制覇できるよう、目線を常に日本一に置き、日々、日本一の練習を重ねていきたいと思っています」

(文・服部 健太郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.02

激戦必至の春季千葉準決勝!関東大会出場をかけた2試合の見所を徹底紹介!

2024.05.02

【長野】松商学園、長野日大、東海大諏訪などが県大会出場へ<春季県大会支部予選>

2024.05.01

【神奈川】関東大会の切符を得る2校は?向上は10年ぶり、武相は40年ぶりの出場狙う!横浜は6年ぶり、東海大相模は3年ぶりと意外にも遠ざかっていた春決勝へ!

2024.05.01

春季大会で頭角を現した全国スーパー1年生一覧! 慶應をねじ伏せた横浜の本格派右腕、花巻東の4番、明徳義塾の正捕手ら入学1ヶ月の超逸材たち!

2024.05.01

【兵庫】報徳学園、須磨翔風などが順当に夏の第1シード獲得!昨秋ベスト4の長田、滝川二はノーシードに

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.28

【広島】広陵、崇徳、尾道、山陽などが8強入りし夏のシード獲得、広島商は夏ノーシード<春季県大会>

2024.04.28

【長野】上田西、東海大諏訪、東京都市大塩尻が初戦突破<春季県大会支部予選>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?