Column

選手にセルフコンディショニングを勧める理由

2018.08.31

選手にセルフコンディショニングを勧める理由 | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 今回のコラムは実に200回目となりました。多くの方にお読みいただき、またいろんなところで「コラムを読んでます!」とお声がけいただきありがとうございます。コラム連載を開始した2010年当時はセルフコンディショニング関する情報も少なく、また選手自身がコンディショニングを行うということについても何をどうやっていいのか、わからないことも多かったと思います。トレーナーの役割として実際に選手を指導するだけではなく、選手自身が自分でできるように教育・啓蒙活動していくことも大切なことであると改めて感じています(そして継続していくことも)。これからもこのコラムを読む選手や指導者、保護者の皆さんをはじめ、多くの方々に役立つ記事をお届けできればと思います。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

 さて前置きが長くなってしまいましたが、今回はなぜセルフコンディショニングを選手に勧めるのか、その理由についてまとめておきたいと思います。

ケガは予防できることを理解する

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体と対話しながら、自分でできることを増やしていこう

 スポーツの現場では防ぎようのない突発的なケガが存在する一方で、自分の体をマネジメント(管理)することで防ぐことのできるケガも多くあります。特にスポーツ障害と呼ばれる「オーバーユース(使いすぎ)」「オーバーワーク(負荷のかけすぎ)」が主な原因となるケガは、同じ動作を繰り返すことの多い野球によくみられます。
 このようなケガは、ある日突然痛みを感じるというよりは「いつもと少し違う」「何となく痛いかも」といった小さな変化から始まるため、違和感を覚えながらもプレーを続けてしまうケースが大半です。そしてプレーを続ければ続けるほどだんだんとその症状が強くなる傾向があります。プレーができなくなるまで無理をするのではなく、最初の段階で気づいた小さな変化を自分自身で感じとり、ケガの程度がひどくならないようあらかじめ対策をとることでケガを予防しましょう。予防策としては練習量と質の問題、個人の身体的要因(体力レベルや年齢、性別など)、環境因子(天候や気温、グランド状態等)などを考慮に入れて、体力的負荷が大きくなりすぎないように配慮することが必要となってきます。

自分の体を理解する

 自分自身の体を理解することはアスリートにとって大切なことです。たとえば毎日ストレッチを行っていると「今日は筋肉が硬いな」とか「関節の動きがいつもと違うな」といった変化に気づきやすくなります。またその変化に対して何を行えばいいのかということも、実際に自分の体を動かして確認し、選択肢を増やすことができます。「ウォームアップ不足の時には体が動きにくい」ということに気づけば、自ら丁寧にウォームアップを行うようになるでしょうし、「腰が張っているときはお風呂に長めに入ると調子がいい」といったことなども実践を通してわかってくるでしょう。自分の体を知ると環境に依存しない体になることができます。

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環境に依存しない体になる

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環境の変化に強くなるためには、トレーナーに依存しすぎないことも大切

 誰かに体のことを任せっきりにしてしまうと、例えばその人がいなくなってしまうとたちまち困ってしまうことになります。もちろん他人の手を借りてコンディションを整えることも一つの方法ですが、自分自身である程度体のことを管理できるようになると、どんな環境でも対応することができます。
 また高校から大学に進学し、さらに野球を続ける場合でも、自分のできることを増やしておくことでフィジカル面のカバーをすることが可能です。スポーツ医学的な知識が必要な場合は専門家に相談したり、自分で調べたりすることもできます。セルフコンディショニングに対する知識を深め、実践していくことはどのような環境にも対応できる体づくりであるともいえるでしょう。

 セルフコンディショニングの「知識格差」をなくすために、少しでも参考になればとコラムを連載しています。その中で「自分でもできそうかな」とか「これは自分に必要かな」と思うものだけで構わないので、ぜひ実践してみましょう。よくいわれることですが「知っている」ことと「できる」ことには雲泥の差があります。必要性を感じて、自ら実践するようになれば、自分の体をマネジメントする能力も高くなり、できることも増えます。ケガ予防のみならずパフォーマンスアップに役立つものもたくさんありますので、ぜひ参考にしてくださいね。

(文=西村 典子

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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