Column

ミレニアム世代のトッププロスペクト Vol.21「野村佑希」

2018.08.04

 ミレニアム世代の逸材をトッププロスペクト方式で紹介。今回もドラフト候補としてハイパフォーマンスが期待される逸材を追っていく。

ホームラン打者としての実力十分!強打者「野村佑希」

ミレニアム世代のトッププロスペクト Vol.21「野村佑希」 | 高校野球ドットコム
野村佑希 (花咲徳栄)

 昨年春、埼玉大会2回戦で花咲徳栄の4番、野村佑希(当時2年)の二塁打とホームランを見て魅了されてしまった。同3回戦、準々決勝、準決勝、決勝、さらに関東大会の早稲田実戦で延長10回、9対10の接戦でサヨナラ負けし夏の大会を前にした〝追っかけ″は終わるのだが、早稲田実戦を補足するとヒット、三塁打、ホームランを放ち、ホームランと単打3本を放った清宮幸太郎(現日本ハム)と見事に張り合った。

 2回戦のホームランを見ていたとき、球場にいた今成泰章・日本ハムスカウトに「凄いですね」というと、今成氏は「センバツ期間中の関西遠征でもホームランを量産したんだ」と教えてくれた。このやりとりだけで今成さんの野村に対する評価の高さがうかがえた。

 打つ以外の走守はどうだろう。早稲田実戦で放ったヒットのときの一塁到達は5.12秒、三塁打のときの三塁到達は12.31秒、第4打席の三塁ゴロのときの一塁到達は4.67秒だから、はっきり言って遅い。ところが2年のときの夏の甲子園大会決勝、広島広陵戦では第4打席で三塁打を放ち、このときの三塁到達は11.93秒、今年の春の埼玉大会準々決勝、山村国際戦では第4打席で二塁打を放ち、このときの二塁到達は8.17秒と速かった。ちゃんと走れば速いが、コンスタントに全力疾走するタイプでないことは間違いないようだ。

 ポジションは2年のときから外野手、投手、三塁手と複数をこなしている。正直、うまいと思ったポジションはない。ピッチャーでは「最速146キロ」スポーツ紙などで書かれている。私が「投手・野村」を見たのは過去に2回だけで、最もよかったのは昨年の埼玉大会2回戦、草加戦で先発してストレートは最速138キロを計測している。そのあとの浦和学院との決勝でも3番手として登板し136キロを計測しているが、球速で想像できるように投手としてはあまり可能性を感じない。

 走攻守を1つずつ見ていけば素質は完全に「打者」だと言えるが、昨年まではバッティングフォームに気になる部分があった。それは構えたときのグリップ位置が「高すぎる」ということ。この位置が最後まで低くならないので、悪い表現をすればマキ割りををしているように見えてしまう。

 言葉を足すと、この縦スイングがボールの下にバットを潜り込ませる長所になっている。さらにヘッドが最短でボールに向かっていけるフォームなので、打者が一番苦手とする内角胸元のボールにも対応することができる。しかし、高いグリップ位置はスイングを窮屈にするという弊害も生んだ。筒香嘉智(DeNA)を今年の春に取材したとき、野村を想定して高いグリップ位置について聞くと、「いいバッター(安定して好成績を挙げる打者)は肩より高い位置にグリップを置かない」と断言した。

 これから野村の当たりは止まるかもしれない、そう思いながら今春の埼玉大会準々決勝、山村学園戦を見ていたら、グリップ位置がそれまでの耳上から肩あたりまで下がり、ほとんど外角を攻められながら第4打席で2ストライクからの外角ストレートでとらえてライト前に運んで2人の走者を還した。これからどう変わっていくかわからないが、グリップ位置に問題意識があることがわかり、正直、ホッとした。

 ホームラン打者としての素質は左右の違いこそあれ、昨年の清宮幸太郎安田尚憲(ロッテ)とそう変わらないレべルにある。藤原恭大根尾昂(ともに大阪桐蔭)と並び称される強打者と言っていいだろう。

文=小関順二

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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