Column

四国初制覇・大手前高松を支えた「ランナーコーチ」

2018.05.07

 2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し12年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に日々四国内外を飛び回る寺下 友徳氏の新連載コラム「四国発」がスタート!毎週1回を基本に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えしていきます。
 第3回の題材は春季四国大会初優勝を遂げた大手前高松の勝因を少し角度を変えた視点から探ります。

大手前高松「試合中に円陣を組まない」理由

四国初制覇・大手前高松を支えた「ランナーコーチ」 | 高校野球ドットコム
四国某所の清流

 5月7日。四国は雨模様です。新入生・新入社員の皆さんのみならず、気分が落ち込みがちな連休明けですが、くれぐれも五月病の発症には気を付けて、日々を元気に過ごしていきましょう!

 さて、前回の「四国発」でもお話ししたように、ゴールデンウィークには恒例の春季四国大会が行われました。試合内容はもちろん!この「高校野球ドットコム」を見て頂くとして、結果は初出場初優勝に王手をかけた創部3年目・聖カタリナ学園(愛媛)を13対9で下した大手前高松が、これもわずが野球部復活9年目での初優勝を遂げました。

 では、大手前高松が短期間で成果を残した理由とは?4年前に「野球部訪問」でも取り上げた「奪進塁」と「絶対評価」。過去の試合レポートでも触れてきた健大高崎(群馬)などから得たメソッド、これに加え以前は「1試合3失点以内」を、打力向上の昨今に合わせ「4失点以内」に修正した目標設定など要因は数多くあります。

 

 しかし、これらに加えて山下 裕監督はこんな表現で勝因を分析してくれました。

「選手たちが勝手にやり始めたんで」

 もう少し噛み砕いて言えば「選手たちが以心伝心で動けるようになった」。特に走塁面に関してはプランニングはランナーコーチ2人に一任され、山下監督はそれを追認するのみ。さらに試合中においても高校野球では恒例、大手前高松でも以前は行っていた守備から戻ってきた後の円陣は、一切なくなったのです。

 

 では、彼らはいかにして走塁面のプランニングを汲んでいるのか?善は急げ。表彰式を終えて高松への凱旋帰路に就こうとする背番号「17」・多田 宗一郎(3年・内野手・177センチ76キロ・右投右打・高松市立太田中出身)三塁ランナーコーチと、背番号「20」・田村 太一(3年・内野手・163センチ59キロ・右投右打・高松市立木太中出身)一塁ランナーコーチに少し足を止めてもらい、その一端を聴かせてもらうことにししました。

[page_break: 「練習」「事前分析」「シートノック」で創る走塁戦術]
四国初制覇・大手前高松を支えた「ランナーコーチ」 | 高校野球ドットコム
春季四国大会初優勝・大手前高松を陰で支えた多田 宗一郎(左・3年・内野手)と田村 太一(右・3年・内野手)

「練習」「事前分析」「シートノック」で創る走塁戦術

 「実は相手が右投手か左投手かで見方は違うんです。詳しいことは言えないんですが」といきなり鉄のカーテンを発動した多田・三塁コーチ。そこを何とか!とさらにお願いすると……。走塁戦術の組み立て方をこのように教えてくれた。

 「まずは相手投手の映像を見るのが基本、ここで一塁走者のリードをどれくらいとるかを決めます。ただ、試合と映像ではタイミングが違う部分もあるので、試合ではまず牽制をもらうリードをするんです」

 ここに田村・一塁ランナーコーチが注釈を加えてくれた。「それ以前にウチには走塁の決まり事もありますし、練習中のノックではランナー・コーチャーも付けた形で突っ込ませるタイミングも図っています。その上で、シートノックを見て最終確認をします」

 「最終確認」とは?ここで2人は春季四国大会決勝戦・聖カタリナ学園の「傾向」について内幕を明かしてくれました。

 「聖カタリナ学園さんはシートノックでは外野からの返球を一本でホームへ返したがる傾向がありました。もちろん僕らはヒット1本で二塁からホームへ還る走塁が基本なんですが、そこは参考になったと思います」

 確かに公式記録を見ると、大手前高松は4回裏に一度、5回裏にも一度、一・三塁の場面での適時打で一塁走者が一気に三塁を陥れている。彼らにとっては当たり前のルーティンワークであるが、実はできそうでできない一連の流れです。

 「昨秋の香川県高野連招待試合では健大高崎(群馬)に一・三塁を作られまくったので、冬はその練習をいっぱいしてきました」と出せた成果に笑顔の2人。6月16日(土)開催の春の香川県高野連招待試合・大阪桐蔭戦、そして甲子園初出場を期し、第1シードで迎える7月9日開幕の100回大会香川大会でも、多田 宗一郎田村 太一の「ランナーコーチ」ぶりが勝敗の命運を分けることになりそうです。

 さて、球児の皆さん、この考え方をどこまで入れるか。それともスルーするか。それは皆さんの「判断」にすべてが委ねられています。

(文・寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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