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北信越勢の意識も変えた09年夏、日本文理の準優勝で歴史も変わる【新潟県・2018年度版】

2018.04.09

不利な環境の中で輝いた新発田農

北信越勢の意識も変えた09年夏、日本文理の準優勝で歴史も変わる【新潟県・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
新発田農高校

 長い期間、新潟県は高校野球の甲子園での実績ということで言えば下位に低迷している。甲子園での春夏の勝利数ということだけで言えば、昨夏の第99回大会終了時点で31勝(69敗)というのは、全国47番目の最下位である。46位の富山県が33勝で、まだ2勝の差がある。いずれにしても北信越勢が下位となっている。
 しかし、大会で上位に残った実績ということで言えば2009(平成21)年の夏に日本文理が準優勝を果たしたことで、キラリと光ることになる。そして、この準優勝以来、新潟県の高校野球そのものが大きく変わったことは確かだ。

 新潟県は日本でも一、二を争う豪雪地帯である。野球の実戦練習ということに関していえばそのハンディキャップはどうしようもない。早いときには11月下旬から雪に閉ざされ、グラウンドが完全に使用出来るようになるには4月中旬まで待たねばならない。それだけでも、非常に不利な条件であるということになる。

 だから、県内の高校も圧倒的な勢力を誇ってリーダーシップをとっていくというような学校が長らく存在しなかった。
 歴史を追ってみると、戦前は長岡中と新潟商が全国へ進出を果たしている。そして、[stadium]鳴尾球場[/stadium]時代の1920(大正9)年と23年に長岡中と新潟商がそれぞれ初勝利を記録している。甲子園でも26年夏に新潟商が勝利を記録している。しかし、以降は甲子園出場そのものが、58年春夏の新潟商まで途切れることになる。

 戦後初勝利は61年夏の新発田農まで待つことになる。その後は、新潟商長岡商糸魚川商工(現糸魚川白嶺)などが出場を果たし、長岡も復活する。

 その頃にインパクトを残したのは新発田農だ。農業高校は、生徒集めでも苦労するというのも正直なところだが、1979(昭和55)年に19年振りに甲子園に出場して以来、翌年もベスト16に進出するなどして、その試合ぶりは甲子園ファンの人気を得た。ことに1回戦で延長の末、広島商を下したことによって「新潟に新発田農あり」と注目されるようになった。この時代の新発田農は確かに県内を引っ張る存在となっていたであろう。
 緑のアンダーシャツと帽子に農業の「Agriculture 」の「A」が印象的だった。そんなところに農業高校としての自負も感じられた。

 

[page_break:公立勢に追いついた私立勢と日本文理の活躍]

公立勢に追いついた私立勢と日本文理の活躍

北信越勢の意識も変えた09年夏、日本文理の準優勝で歴史も変わる【新潟県・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
日本文理高校 現エース 鈴木裕太投手

 こうして公立勢がそれなりに実績を作ったが、やがて新潟県も私立勢が台頭していくことになる。まず、中越がその存在を示していた。1978(昭和53)年を皮切りに、83年、85年、86年と出場を重ねていき、2003(平成15)年までに夏だけ8回出場している。その後、やや途絶えたが15年夏に12年ぶりに出場し、翌年も連続出場を果たしている。甲子園では2勝10敗という記録が残っている。

 さらに、中越に続いて私立勢として力を出してきたのが、水島新司のマンガ『ドカベン』のモデル校として話題となった新潟明訓である。91年夏に初出場を果たしているが、90年代をリードする存在となった。当時の佐藤和也監督(現新潟医療福祉大)が、積極的に関東や東京のチームとも交流を持ち、毎年春には関東遠征を組んで力をつけた。県外校との試合によって、より高い意識を持たせ刺激を与える努力をしたことも大きかった。

 その新潟明訓を追うように、84年に創立した日本文理は、かつて宇都宮工で準優勝投手となった大井道夫監督が率いて97年夏に初出場を果たしている。さらに、06年春には、県勢としては悲願でもあったセンバツ初勝利を果たす。

 そしてエポックとなった09年、春は優勝した清峰に初戦で破れるものの、夏に快進撃を果たす。初戦で香川の香川寒川に競り勝つと日本航空石川立正大淞南、準決勝では県岐阜商を撃破して県勢初の決勝進出。決勝では、中京大中京に10対4とリードされて迎えた9回、二死から猛反撃で1点差としてスタンドを大いに沸かせた試合は、今も甲子園の名勝負の一つとされている。これで、新潟県の日本文理の存在は強烈に印象付けられた。

 また、チームとしても大躍進して、14年夏にも大分東邦富山商聖光学院を下して、ベスト4に進出している。わずかの間で一気に、新潟県勢の勝ち数を稼いだとともに、すっかり新潟代表は弱くないというイメージを定着させた

 

 こうして新潟県にも、全国レベルで引っ張る強豪が出現したことになった。17年秋もその日本文理を筆頭に中越新潟明訓に加えて北越が4強となっている。他にも帝京長岡東京学館新潟関根学園といった私学も台頭してきている。

 

 しかし、昭和の時代を支えた新潟商長岡商。そして小千谷、さらには十日町や03年の春21世紀枠で選ばれた柏崎、さらには11年に選出された佐渡島の佐渡も地場の名門校として気を吐いている。他にも、長岡向陵、県内1、2を競う進学校の新潟長岡なども好チームを作ってきている。新しいところでは新潟県央工村上桜ヶ丘なども健闘している。

(文:手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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