今年の高校生は速球投手揃い。志望届を提出した有望な高校生投手をピックアップ!
今年、この世代を取り上げるとき、最初に野手を取り上げて、そのあと、投手を取り上げた。それは、清宮幸太郎を筆頭に野手の人材が豊富だから。そのため2017年度は野手の年だと位置づけた。しかし安田尚憲、中村奨成、増田珠といった目玉野手たちはプロ志望を表明したものの、3位~6位ぐらいの指名が予想されそうなBクラスの野手のほとんどが大学・社会人を決断。
逆に野手は指名候補が少ない年となってしまった。逆に投手の力量、人材レベルは高卒1年目から、6人が一軍登板した昨年度と比べるととどうしても落ちるが、例年並みに落ち着いたといえる。今回は、志望届けを提出した高校生投手たちを紹介していきたい。
150キロ右腕7人衆に注目!
田浦文丸(秀岳館)
まず今年はマックスだけでいえば、150キロ以上投げる投手が6人いる。そのほかにも140キロ後半を投げる投手も多くいる。これでも豊作といわれないのだから、ハードルの高さを実感する。
甲子園で唯一の150キロを計測した清水達也(花咲徳栄)、最速151キロ右腕・石川 翔 (青藍泰斗)、最速150キロ右腕・牧 丈一郎 (啓新)、平良 海馬 (八重山商工)、山口翔(熊本工)、最速150キロ右腕・尾形 崇斗(学法石川)、最速151キロ右腕・岡林飛翔(菰野)は評価が高い選手であり、将来性も高く、右投手が欲しい球団はうってつけの投手たちである。
清水は、アーム式のフォームから繰り出すストレートは、常時145キロ~140キロ後半を計測。さらに、落差抜群の130キロ台のスプリットを投げる。リリーフでの登板が多いが、将来のリリーフ候補としても面白く、いずれは先発投手を試しながら投球の引き出しを増やしてほしい投手だ。石川は奥行きと完成度の高さを持ち合わせた怪腕。
細身の体型ながら、コンスタントに145キロ前後を投げ込む。最後の夏になって、ストレートもだいぶ力強くなり、縦横の2種類のスライダーの切れ味も増し、実戦的な投手へ成長した。牧は、右スリークォーターから威力ある速球を投げ込む大型右腕。ただ速いだけではなく、スライダー系統の変化球を中心にしっかりとまとめる能力がある。
平良は平均球速140キロ後半をたたき出す投手で、さらに、切れのある変化球でしっかりと投球を組み立てられる投手で、完成度は高い。初戦敗退だが、スカウト陣の評価は高い。尾形も、夏前に150キロを計測。どの試合でも、140キロ中盤のストレート、落差鋭いカーブ、切れのよいスライダーをコンビネーションに安定したピッチングが期待できる投手だ。山口は昨秋から最速149キロを計測していたようにスピード能力は非常に高い右腕。この夏は151キロを計測。切れの良いスライダーの精度も高い。岡林は好不調の波は大きいが、それでもはまった時の速球は威力抜群。夏の大会では4本塁打を打っている長打力も必見。大きく育てていきたい投手だ。
最速149キロ左腕・櫻井周斗(日大三)は、今年の高校生では希少価値が高い本格派左腕。コンスタントに140キロ中盤をたたき出す馬力の大きさに加え、分かっていても打てない縦スライダーはプロでも大きな武器となりそう。チェンジアップに磨きをかけるなど、投球の幅を広げようと工夫している点もプラスといえるだろう。同じ左腕でいえば、U-18代表として大会最多奪三振を記録した田浦文丸(秀岳館)は、田口麗斗(巨人)、堀瑞輝(北海道日本ハム)の成長曲線を描きそうな実戦派左腕。140キロ中盤の速球、分かっていても打てないチェンジアップ、スライダー、カーブを巧みに投げ分ける投球術は高校生としてはハイレベルだ。
有力投手を北から紹介すると、甲子園で最速148キロのストレートに加え、130キロを超えるカットボール、スプリットボールで勝負する剛腕・阪口 皓亮(北海)は大化けの可能性を持った逸材だ。最速149キロ右腕・吉住 晴斗(鶴岡東)、最速145キロの速球と切れ味鋭い変化球で、この夏の秋田大会で37イニングを投げ、44奪三振、防御率1.95の藤井 黎來(大曲工)、佐渡島初のプロ野球選手を目指す菊地 大稀 (佐渡)も躍動感あるフォームから繰り出す140キロ台のストレートは実に球質が良い。難波 侑平 (創志学園)は、140キロ後半の速球、複数の変化球を投げ分け、器用なピッチングができる投手だ。もちろん広角に長打が打てる打撃も魅力だ。田中 優大(羽黒)は、入学当初、外野手だったが、地肩の強さと上背の高さが見込まれ投手転向。長身から投げ込む速球は常時140キロ前後だが、投手歴が浅く、実戦力を突き詰めていきたい素材だ。
全国に潜む逸材投手たち
遠藤敦志(霞ヶ浦)
関東地区では霞ヶ浦の遠藤淳志は、フォームの土台が実によく、回転のよい140キロ前後のストレートは非凡なものを感じさせる。2年前、横浜DeNA入りした綾部翔と同じく大化けを期待させる逸材だ。最速145キロ左腕・北浦 竜次は腕の振りがやや外旋気味だが、それでもコンスタントに常時140キロ台をたたき出す馬力の大きさ、独特の曲がりをする変化球は必見。粗削りだが、長所である変則気味のフォームから速いストレートを投げられる素質にさらに、ひと手間加えれば、さらに面白い投手に成長する可能性を持っている。同校初のプロ野球選手を目指す山上 信吾(群馬常磐)も、手足の長いフォームから繰り出す最速146キロのストレートを武器にする大型右腕だ。金久保優斗(東海大市原望洋)は、先発でも平均球速140キロ中盤を計測するスピード能力、切れ味抜群のスライダーで勝負する速球派右腕。ピッチングの引き出しを増やしていければ、先発型を担える投手となるだろう。最速147キロ右腕・宮路 悠良(東海大高輪台)は、ラストサマーで投球を覚え、変化球の精度を上げ、東東京大会決勝進出。準々決勝で帝京に勝ったり、東東京大会で成長した内容を残せたことが高卒プロ志望のきっかけとなった。
神奈川ナンバーワン右腕・本田仁海(星槎国際湘南)は、140キロ前半の速球を内外角、低め、高めへ出し入れする投球術が光る本格派右腕。投球の基礎がしっかりとしていて、フォームの土台もよいので将来のローテーション候補として面白い投手だ。また、甲子園優勝に貢献した綱脇彗(花咲徳栄)も、130キロ後半の速球、切れのあるスライダー、落差あるチェンジアップで勝負する好右腕。ピッチングを知っている投手で、高卒4年目でローテーション投手に定着した二木康太(千葉ロッテ)のような成長を期待したい投手。
他では、184センチの長身から最速149キロの速球を投げ込む田中 瑛斗(柳ヶ浦)も、フォームの土台が良く、切れ味鋭い変化球の精度も高い。甲子園出場の小松 章浩(おかやま山陽)は、勢いあるフォームから140キロ前半の速球で勝負する本格派右腕。翁田 大勢(西脇工)も、恵まれた体格から投げ込む147キロ右腕。馬力の大きさは、全国トップクラスの逸材だ。他では145キロ右腕の東 晃平 (神戸弘陵)、最速146キロ右腕・中川虎大(箕島)、速球の威力は140キロ近くだが、身体能力が高く、大化けが期待できる小笠佐々木 健 (小笠)、投打に才能が高く、投げては140キロ後半、打っては本塁打連発の高木 渉(真颯館)もどう評価されるか楽しみだ。
ドラフト候補になる右腕は、身長180センチ越えで、速球も140キロ越えという逸材が多いが、その中で異色な存在が山本 拓実 (市立西宮)だ。167センチと小柄だが、最速148キロ。どの試合でも直球はコンスタントに145キロ前後を計測するスピード能力、球質の良さは必見。130キロ近い高速スライダーの切れも素晴らしく、ピッチングも押し引きが上手く、十分に指名候補として推していい投手だろう。
今年は能力的には高い投手が多く、昨年のように高卒1年目からバリバリ一軍で経験できるような投手はいないが、しっかりと素質を伸ばすことができれば、大化けが期待できる投手が多いのが特徴。各球団がどんな戦略をとっていくのか、注目をしていきたい。
(文=河嶋宗一)
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