北東北大学野球連盟は近年、多くのプロ野球選手を輩出している。元メジャーリーガーで現在は広島で活躍する秋山 翔吾外野手は八戸大(現・八戸学院大)出身、WBC日本代表にも選ばれた西武・山川 穂高内野手は富士大出身。またドラフト2位ルーキーの日本ハム・金村 尚真投手(富士大出身)が先日プロ初勝利を挙げるなど、若手にも有望株がそろう。
今年も4月15日の春季リーグ開幕戦から、続々とプロ注目の4年生が登場した。今回は、開幕から実力が光った有力選手たちを紹介する。
富士大は投打の柱が持ち味発揮
中岡 大河、松尾 翼(富士大)
富士大は注目の最速150キロ右腕・中岡 大河投手(4年=広島商)が開幕投手を務めた。140キロ台の直球と多彩な変化球で青森中央学院大打線を翻弄し、7回6安打7奪三振2失点(自責1)。駆けつけた多くのスカウト陣にポテンシャルの高さをアピールした。
「1ボール2ストライクを3球でつくって、カウントを有利にすることを意識してきた」。その言葉通り、テンポ良く投げ込み相手につけ入る隙を与えなかった。カウント3ボールになる場面もあったが、与四死球は死球1つのみ。「3球投げた後の切り替えもうまくできた」と手応えを口にした。
高校時代は3年夏に甲子園を経験するも、当時の最速は138キロで目立った存在ではなかった。大学進学後も下級生のうちは登板機会に恵まれなかったが、昨春は7試合に登板して防御率0.33と好成績を残し、金村を抑えて最優秀防御率賞、ベストナインを受賞。結果が出始めてからは、ぼんやりとしていたプロへの思いが確固たるものとなった。
直球の威力や巧みな投球術はもちろん、多彩な変化球も強み。現在はツーシーム、スライダー、カーブ、チェンジアップ、シンカー、カットボールと6種類の変化球を操る。今春は2季ぶりのリーグ優勝を目指し、エースの役割を全うするつもりだ。
野手では、開幕戦に「3番・二塁」でスタメン出場した松尾 翼内野手(4年=作新学院)が2打数1安打1打点、2四球と中軸の役割を果たした。特に2回の第2打席では特大の適時二塁打を飛ばし、持ち前のパンチ力を見せつけた。
163センチ、74キロと小柄ながら、走攻守に優れた才能を持つ。昨秋首位打者賞、最多盗塁賞、ベストナインと3つのタイトルを獲得するなど、実績も十分だ。華麗な二塁守備もアピールし、プロへの扉を開きたい。
八戸学院大、青森大の本格派投手は課題残しつつも存在感
高橋 凱(八戸学院大)庄司 陽斗(青森大)
近年好投手を次々と輩出している八戸学院大は、最速152キロ右腕の高橋 凱投手(4年=湯沢翔北)が開幕から速球を光らせた。岩手大相手に先発し、3回3安打1失点。初回に連打を浴び、自らの牽制ミスも重なって失点したものの、その後は最速151キロの直球を中心に立て直した。
本人は直球に手応えを感じつつ、「追い込んでから勝負球を投げきれなくて当てられた場面が多かったので修正したい。投球以外のフィールディングもミスなくできるよう改善しなければ」と次を見据えていた。
秋田の県立高校出身で、高校時代は全国的には無名の存在。「高校の時はチーム内に目標にする選手はいましたけど、プロに進めるレベルのピッチャーはいなかった」と話すように、プロ野球は遠い世界に感じていた。しかし大学進学後、一線級の投手と接する中で考えが変化する。
特に、入学時4年生だった現広島の大道 温貴投手(春日部共栄出身)からは大きな影響を受けた。投球はさることながら、ストイックな練習姿勢など参考になる部分が多かったという。大道はドラフト3位で広島に入団し、この年は同学年の中道 佑哉投手(八戸学院野辺地西出身)も育成2位でソフトバンク入り。さらに昨秋のドラフトでは、松山 晋也投手(八戸学院野辺地西出身)が中日から育成1位指名を受けた。
「大学に入ってから、ものすごいピッチャーを見て、どのレベルまで達すれば注目されるか、プロを目指せるか、わかるようになった」。八戸学院大に進んだからこそ見えてきたプロへの道。先輩たちに続くべく、理想を追求する。
青森大の速球派左腕・庄司 陽斗投手(4年=聖和学園)は、ノースアジア大戦に7回から登板し、2回1失点だった。雨中の登板とあって制球が定まらず、最速も139キロにとどまったが、気迫あふれる投球で存在感を示した。昨秋は左肘の違和感で登板なしに終わっただけに、大学ラストイヤーはフル回転を誓う。
北東北は開幕戦で登板機会のなかった4年生の中にも、八戸学院大・千葉 嵐投手(4年=流通経済大柏)、ノースアジア大・宮城 凌我投手(4年=宮古工)ら好投手が並ぶ。今秋は何人のプロ野球選手が誕生するのか、注目が集まる。
(記事=川浪 康太郎)