静岡、県立岐阜商など伝統校は独自システムで強化 東海地区の公立校の現実

法月彰弘(静岡)
昨年夏の東海4県でベスト4に残った公立校は、岐阜県では2年連続の甲子園出場を果たした伝統の県立岐阜商に加え、三重県では2年連続夏甲子園出場の三重三重以外の3校は準優勝の津商に松阪商、菰野と、いずれも公立校が残った。また、静岡県では掛川西が準々決勝で静岡との公立伝統校対決を制して4強入り。私学優勢という今の時代の中で、これらは健闘したほうだといえよう。
そして、秋季県大会でも三重県では津商が準優勝し、木本もベスト4に残り、21世紀枠の東海地区推薦校に選出された。さらには、三重白山、宇治山田商、四日市工といったところもベスト8に残った。三重県では、こうして公立勢が結果も残しており、健闘が光る。
岐阜県では、市立岐阜商と岐阜がベスト4に残り、東海大会進出の3位決定戦を争った。県立岐阜商も大垣日大に敗れはしたもののベスト8には残った。ほかには、関商工や岐阜城北も8強入りを果たしている。岐阜と市立岐阜商、さらには岐阜第一を下した岐阜城北と岐阜聖徳を下した関商工は健闘したといっていいであろう。県立岐阜商は、周囲の後押しもあって、独自の強化システムも定着しているので、県内4強の位置をキープしている。
しかし、愛知県の場合は昨年夏は愛工大名電、東邦、享栄、愛知啓成と私立校が独占した。21年夏は大府が健闘して4強に残ったが、22年夏はベスト8に残った公立校は、名古屋市立の富田のみだった。それでも、東浦が中京大中京を下すなど、序盤の戦いでは健闘が目立った。また、愛知向陽もいい雰囲気の戦いで4つ勝ってベスト16にまで残ったのは立派だった。
秋季県大会も何とか大府と刈谷がベスト8に残ったものの、やはり公立勢にとって、上位への壁は厚いという現実は否めない。それでも、西三河地区では西尾東や安城、西尾、三好、さらには岡崎工科と刈谷工科といったところがしのぎを削りあっている。東三河でも、伝統の成章をはじめ時習館、蒲郡、渥美農などが上位進出を窺っている。
尾張地区では小牧工科、尾北、近年充実している西春、犬山などが健闘している。知多地区でも、大府を追って半田、横須賀、東浦あたりが近年は健闘している。
選手獲得などに関しては、どうしても私学に比べると入学枠などでの不利は否めないというのは現実だろう。それでも、限られた条件の中で、それでも指導者たちも、積極的に地域の中学校などに働きかけるなどして、より、理想に近づいていけるように努力している。
静岡県では、県を代表する伝統校の静岡などには、学校裁量枠というスポーツ推薦制度があり、県内の有力選手に関しては、ある程度は選手獲得ができるという独自の制度があるので、東海地区でも愛知県などに比べたからかなり許容範囲が広く入学枠を確保することができている。こうした県を挙げての協力体制があることで、静岡や掛川西といった県立校の進学校が野球でも上位を競い合うことができている。こういう制度がある以上、それをどう生かしていくのかということもまた、学校の方針であり、チーム強化の方向性といってもいいであろう。
(記事:手束 仁)