イチロー氏に「化け物」と言わせた高松商・浅野はどこまで成長するのか
高松商・浅野 翔吾
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プロ野球界の盟主、巨人が今ドラフトで1位指名として公表したのが、高松商(香川)の浅野 翔吾外野手(3年)だった。右打者としては今年の高校生No.1といっても過言ではない。このところ日本一から遠ざかっている巨人としても、右スラッガー外野手が喉から手が出るほど欲しくなるのはわかる。
浅野が有名私立で育ったのではなく、高松商という公立校が生んだスラッガーというのがどこか嬉しくなる。公立校でも、こんな逸材が育つ。全国の球児も励まされることだろう。
高松商・長尾監督を取材したことがある。2016年のセンバツのことだ。高松商は1996年夏以来の甲子園出場で古豪復活と話題になった。絵にかいたようなスモールベースボールを実践するのかと思いきや、正反対のような野球をした。送りバントのケースでも違う攻撃をしたり、基本に忠実な上からたたくような、右打ちが上手なそんな打者ではなく、豪快にスイングしてパワフルな打球を放っていた。結果は準優勝。しかも、決勝は智辯学園(奈良)に延長11回サヨナラ負け。優勝にあと1歩だった。自分のなかで伝統校のイメージが覆された。
「失敗と書いて成長と読む」
長尾監督の座右の銘である。考えを押し付けるのではなく、自分で考えさせる。その結果、選手を成長させていく。「やんちゃ」とも言われる選手の「とんがった部分」を押さえつけることなく、まずは選手が思うようにやらせる。その結果には冷静に対処する。そんな指導方法で選手を育てていたという印象だった。
浅野は長尾監督の指導方法の象徴的存在なのかもしれない。本塁打ばかりを狙っていた浅野を1番打者で起用し、塁に出る打撃の意識を芽生えさせた。左打席で打つこともアドバイスした。すべては浅野をスケールの大きい選手にさせるための方策だったのかもしれない。長尾監督は徳島池田の「やまびこ打線」にも憧れていた。浅野は生まれるべくして生まれたのかもしれない。
浅野はプロでもスイッチヒッターでやりたい希望があるという。右投手だから左で、左投手だから右で、という選択ではなく、変化球投手だから、速球投手だからという理由で打席を選んできたとも言われている。高松商はイチロー氏が指導したことでも有名だが、浅野が左打席で左中間への本塁打を放ったことに、イチロー氏も「化け物ですね」と舌を巻いたという。
型破りなスラッガーは、どこまでたどり着くのだろうか。長尾監督の座右の銘ではないが、いっぱい失敗していっぱい成長してほしい。
(記事=浦田 由紀夫)