股関節の動き改善につながるコンディショニング
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
早いもので夏休みも終わり、学校生活が再開される時期となりました。地域によっては新チームので公式戦を迎えているところもあることでしょう。自分の実力を十分に発揮できるよう、試合前にはコンディションを整えて準備してくださいね。さて今回は股関節の動きを改善するためのコンディショニングについて考えてみたいと思います。股関節の硬さに悩む選手の参考になれば幸いです。
股関節の基本的な動きを理解しよう
股関節の基本6つの動作を覚えておこう
野球に限らず多くのスポーツではパワーポジションの姿勢から素早い動作を行うことが多く、止まった状態から素早く一歩目を切り、あらゆる方向へと動き出すことを可能にします。一般的には膝と股関節を軽く曲げ、体幹をやや前傾にした内野手の守備姿勢を想定してもらえるとわかりやすいでしょう。この姿勢からの素早く動き出すとき、股関節は体を移動させるだけではなく、下肢からの力を上肢に伝えるためにも大きな役割を果たしていますが、股関節の動きに制限があるとパフォーマンスにも影響を及ぼすことになります。
股関節の基本的な動きは6つあります。足を前方に振り出す屈曲・足を後方に伸ばす伸展、足を体から離れるように横に振り出す外転・逆に足を体に近づるように横に動かす内転、がに股のように膝や足先が外に開いて太ももが外側にねじれるものを外旋、内股のように膝や足先が内向きになり、太ももが内側にねじれるものを内旋といいます。これらの動きはスポーツ動作の中では単独で動くことはほとんどなく、2つ以上の動きが組み合わさって複雑な動きを可能にします。
ランジ動作で積極的に股関節を動かす
股関節を動きを改善するためには、日頃から股関節を意識したエクササイズを取り入れていくことが重要です。特に足を前後・左右に踏み出して行うランジ動作は筋力強化のトレーニングとしても使えますし、ウォームアップとして股関節を積極的に動かすためのエクササイズとしても使えます。ダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)であれば足を前後・左右に大きくスイングするものが挙げられますし、足を前に一歩踏み出すフロントランジでは踏み出し足のお尻のストレッチ、逆に足を後ろに一歩引くバックランジでは引いた足の太もも前面部のストレッチを行うことができます。足を左右に大きく開いて軽く膝の曲げ伸ばしを繰り返すと内転筋を中心としたストレッチにもなります。内旋・外旋などの回旋動作はキャリオカなどを用いる方法が挙げられます。
股関節のつまり感を改善したい
梨状筋の硬さは腰痛の要因ともなりやすいのでストレッチを習慣にしよう
股関節が硬いと感じる選手の中には、股関節が「つまる」と表現する選手がいます。膝を抱えるようにして股関節を屈曲させていくと、ある一定のところで「つまって」しまい股関節を十分に動かせないことがあります。こうしたケースでは、太もも前面にある腸腰筋(ちょうようきん)の動きを改善すると良くなる場合があります。腸腰筋をストレッチするだけでも良いのですが、できれば動かせられる範囲の中で腿上げを行ったり、足を前に振り出すスイング動作を繰り返し、腸腰筋を収縮させる動きを取り入れてみましょう。筋肉は筋収縮を行った後に伸ばすと、ただ単に伸ばしたときに比べてより伸張しやすい特性があります。これを利用して腸腰筋をトレーニング&ストレッチしてから股関節の屈曲をしてみると、つまり感が軽減されることがありますのでぜひ試してみてください。
がに股は力が分散されやすい
がに股は股関節がはじめからやや外旋されている状態ですが、これは股関節外旋をもたらすお尻の筋肉が硬くなっていると考えられます。特に腰痛の一因ともなりやすい梨状筋(りじょうきん)はお尻の深層部に位置し、脊柱の最下部にある仙骨と大腿骨をつなぐ股関節外旋筋です。この筋肉が硬くなると、足先はやや外向きへと移動してがに股状態になりやすく、片足で姿勢を保持して体を前方へと移動させるときに力が外側に抜けてしまい、パワーのロスを生み出しやすくなります。こうした動作を改善させる一つの方法として梨状筋のストレッチが挙げられます。梨状筋の柔軟性が改善すると股関節の内旋動作がよりスムーズになり、パフォーマンスの改善が見込めます。
股関節の動きは複雑ですが、基本の6つの動作を組み合わせながら構成されていることを覚えておきましょう。その上でそれぞれの動きを確認し、ウォームアップやトレーニングにおいても股関節を中心に丁寧に行ってみてくださいね。
【股関節の動き改善につながるコンディショニング】
●股関節の基本動作は「屈曲・伸展」「外転・内転」「外旋・内旋」の6つ
●この6つの動作が複合的に関与して複雑な動作を可能にする
●ランジ動作は筋力強化だけではなく、股関節のエクササイズとしても使える
●股関節が「つまる」ときは腸腰筋を収縮させてから伸ばすこと
●がに股は股関節が外旋された状態。力のロスにもつながる。
●お尻の深層部にある梨状筋のストレッチは股関節内旋動作をよりスムーズにする
(文=西村 典子)