試合レポート

科技高豊田vs人環大岡崎

2022.07.11

西三河対決は、元気な科技豊田が、初回の3点を守り切って人環大岡崎を下す

<第104回全国高校野球選手権愛知大会:科技学園豊田3-2人環大岡崎>◇10日◇1回戦◇刈谷

 夜来の大雨で、グラウンド状況がよくなく、予定していた9時から3時間遅れてのプレーボールとなった。

 西三河地区勢同士の対戦となった。正式名称は共に長い、科学技術学園豊田(通称=科技高豊田)と岡崎学園から今春に校名変更となった人間環境大学岡崎高校(通称=人環大岡崎)。

 科技高豊田はトヨタ自動車の企業内学校の位置づけで、高校卒業資格の取得できるというシステムの学校であり、その中での部活動としての野球部である。卒業後はほとんどがトヨタ自動車の関連部署に就職していき社会へ出るというシステムだ。その前段階で、部活動を通して精神的にも肉体的にも強く育って行こうという人間形成を目的としている。PL学園で活躍し、その後トヨタ自動車でもプレーしていた二葉裕貴監督が就任しており、元気のいいチームだ。

 人環大岡崎は今年の春はブロック予選途中で残念ながら出場辞退という形になってしまった。それだけに、その悔しさと野球ができる喜びをぶつけて大会に挑む。昨秋は、岡崎学園として県大会にも進出して初戦突破も果たしており、チームとしての力はあることは示している。高校時代には浜松商で甲子園出場も果たしている田中宏信監督が指揮を執っている。

 実は、この両校は昨秋には、県大会後の全三河大会準決勝で対戦し、その時は科技高豊田が勝っている。この夏の両チームの初戦が、その再戦となった。

 科技高豊田の先発は、球に勢いがあるエースナンバーの杉本 幸大投手(3年)。県大会などでも好投を見せている。人環大岡崎は背番号3をつけた2年生左腕、大須賀 迅投手が先発だ。ともに先頭打者は三振で切って取るという立ち上がりだった。杉本は連続三振後、3番渡邊 喜良也外野手(3年)に安打されたものの次をしっかり抑えて無難な立ち上がり。

 大須賀は2番水野 一輝外野手(3年)に死球を与えてしまう。水野は、試合前の円陣ではいつもその輪の中心になって、パフォーマンスを含めて声出し係としてチームの士気を盛り上げていく元気印だ。その男を歩かせてしまったのだが、これで科技高豊田はこれで勢いづいた。続く今野 甚内野手(3年)がシュアな打撃で右前打。さらに神谷 浩平外野手(3年)も左前打で続いて満塁とする。

 1死満塁という場面で科技高豊田は5番小田 昂輝外野手(3年)が右中間へ上手に運んでいく三塁打を放ち走者一掃で、いきなり3点を先制した。さらに、1死三塁で大量点の可能性もあったが、ここからは大須賀が踏ん張って結局3点止まり。

 この初回の攻防からは、5、6点をめぐる戦いになっていくのかなとも思われた。人環大岡崎も3回、8番伊藤 樹生内野手(3年)の内野安打から、バント内野ゴロで三塁まで進めて、2番佳山 剛樹内野手(2年)の左前打でかえして2点差とした。ただ、その後は、人環大岡崎は3回途中からリリーフのマウンドに立った1番をつけた塩尻 圭祐投手(3年)が好投して、投手戦の様相となっていった。

 4回以降はお互いに0が並び、やや息苦しい展開となっていった。ともに走者は出すものの、両投手が要所はきちんと抑えていくという投球で辛抱戦となった。それに、守りでも好プレーが相次いで、引き締まった試合となっていった。

 8回、人環大岡崎は9番加藤 夢麻捕手(3年)が中越え三塁打を放つ。1番は三振に倒れたが2番佳山は四球で同点の走者として出塁。そして、3番渡邉は1ボールのカウントから三塁線へバントしてスクイズ成功。1点差としてなおも2死二塁。ここで、科技高豊田の二葉監督は4番吉田 汰月外野手(3年)には申告敬遠の指示。これが成功して何とか1点差のまま科技高豊田はこの回を凌いだ。

 そして、9回も死四球で2死一、二塁という場面で上位打線となったが、最後は杉本が踏ん張って、科技高豊田が辛くも逃げきった。

 科技高豊田は、チームとしては夏の大会はベスト32が最高である。だから、今大会のチーム目標としてはまずベスト8進出としていた。そこで当たる可能性の高いのが昨秋の優勝校だ。二葉監督は、享栄の大藤敏行監督と交流も深く、実は組み合わせが決まった段階で電話を貰い、「ベスト8をかけて戦おう」ということを言われたという。享栄とは、練習試合も何度か組んでもらっているとも言う。それだけに、ベスト8を賭けて享栄と戦うというのは大きな励みの目標になっているという。

 人環大岡崎の田中監督は、「春季大会をコロナで出場辞退となったことは、その後にしっかり練習試合を組めていたので、それほど影響はなかったと思う」ときっぱり。ただ、「春季大会前に練習自粛期間があって、そのことの方が影響としては大きかったかもしれない」という思いではあった。そして、この日の戦いに関しては、「攻撃としては走者を出せていたのだけれども、あと一本が出せなかったことが響いた。それでも、「リリーフで投入した塩尻は、これまでにないくらいにいい投球をしてくれた。最後の試合になってしまったけれども、そういう場で、ベストの投球ができたことはよかった」と、ここまでの選手の頑張りを評価していた。

 最後まで、息つく暇もないくらいの、緊迫感のあった好試合だったと言っていいであろう。

(取材=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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