駿台甲府(山梨)は昨年春季県大会で優勝し、夏の山梨大会もベスト8進出と、山梨学院や東海大甲府がけん引する山梨の高校野球の情勢に、変化をもたらそうとしている。若き指揮官・但田邦之監督の下で、着々と実力を伸ばし続けている。就任4年目で関東大会3度出場の実績を残していることが、強さの証拠でもある。
2021年の秋は新型コロナウイルスの影響で出場を辞退した。春の大会から巻き返しを図ることになる。今回は、そんなチームをけん引していく主力選手たちを紹介する。
・石川大樹
最速138キロを計測するが、本格的に投手に挑戦し始めたのは駿台甲府へ入学してからという。あらかじめ軸足を曲げておき、軸足にしっかりと体重を乗せたうえで縦回転で投げる。下半身を意識して使っているのが印象的なフォームになっている。
立川シニアでの中学3年間は捕手を経験。肩の強さはあったものの入学時は最速127キロ。上半身に頼った野手投げの影響や突っ込んでしまう癖があり、下半身が使えていないフォームになっていたことが原因だった。そこでダルビッシュ有投手(東北高出身)や大谷翔平投手(花巻東出身)の2人の投球フォームを参考にして、体重移動を見直したことで、自分に合った使い方を徐々に見つけ、球速と制球力を高めた。
175センチ、75キロと突出した体格ではないが、ボールの質で相手打者を抑えるような実戦タイプの右腕として活躍が期待される。
・成島航生
最速135キロを計測する駿台甲府2枚看板の1人。山梨ボーイズ時代は左翼手がメインだったが、コーチの勧めで投手へコンバートして、駿台甲府での2年間で球速を10キロ伸ばした。170センチ、76キロと小柄だが、がっちりとしている体格で、力強い球を投げ込む。
そのポイントとなっているのは連動性だ。元々、制球力に課題を抱えていたこともあり、バウンディングと呼ばれる短距離選手が取り組む全身を使ったジャンプトレーニングや、メディシンボール投げ、シャドーピッチングなどを通じて連動性を覚えさせ、下半身を使ったフォームを習得してスピードを上げた。
最速140キロへ。伸びのある直球を投げるため、握力など筋力を強化しつつ、力の方向を真っすぐ捕手方向へ向くように創意工夫を凝らしている。将来的には、球の威力で押し込むパワー系の投手として活躍するのではないか。
・森本耕志郎
172センチ、83キロと体格の良さが魅力で、高校通算18本塁打をマークしている。長打力が光るが、本人は「ホームランだけでは上のレベルでは通じない」と大学以降も見据えて、打率も残せる選手を目指している。鈴木誠也外野手(二松学舎大附出身)やオリックス・吉田正尚外野手(敦賀気比出身)を理想像としており、ポイントとしているのが下半身の使い方だという。
右の股関節に溜めたパワーをしっかりボールに伝えることはもちろんだが、最後まで押し込めるようにするため、壁となる左の股関節を抜くようにして、右側で最後まで押し込めるようなイメージで練習している。
捕手としても二塁送球1.9秒台を記録。力強い球を投げ込む。山梨県屈指の打てる捕手として春季大会以降はマークされる逸材だろう。
・渡辺蒼海
50メートル6.3秒の脚力に加え、高校通算10本塁打と、旧チームでは1番打者を任された俊足強打の選手。
安打の延長線にホームランがあると捉え、どれだけ打率を残すことができるかを重要視している。そのためにも、普段の練習からポイントに掲げるのがレベルスイング。投球の軌道に合わせてスイングできるように、ビデオ撮影でフォームチェックを欠かさない。
暇さえあればプロ野球選手の映像も見るなど、研究熱心な部分も人間的な魅力である。なかでもよく見ているのが巨人・坂本勇人内野手(光星学院出身)。憧れの存在であることもあるが、安打の確率を上げるためにインコース打ちを参考にしているという。
自分で考え、行動を起こせる部分は、大学以降も継続した際は強みになる。あとはパフォーマンスでアピールすることができれば、逸材として注目を集めるのではないか。
・和田遥佑
168センチ、65キロと小柄ではあるが、高校通算4本塁打を打つだけのパンチ力はある。駿台甲府でウエイトトレーニングを積んだことで、2年生に進級して以降に打撃にパワーが付いたと話す。本来、持ち合わせていたバットコントロールの高さを生かすアベレージヒッターの一面を持ちながら、下半身を使って長打を飛ばす強打者だ。
それ以上に光るのは守備。高校1年生の春から始めたという二塁手の守備は、広い守備範囲に、素早い握り替えと、広島・菊池涼介内野手(武蔵工大二出身)を彷彿とさせる。和田自身も参考にしているという。大事にしているのは捕球するまでの準備。1歩目を素早く切るために上体をあまり落とさず、スプリットステップも入れるなど適度な力感をもって打球を追いかける。
そのうえで、送球するためにステップしやすい打球への入り方を意識するようにしている。加えて楽天・浅村栄斗内野手(大阪桐蔭出身)のグラブさばきを見るなど、あらゆる選手を見て吸収し、さらなる成長を目指している。
魅せる守備が光るスラッガーとして、一気に注目が集まるだろう。
・樋口大輝
巧打が光るアベレージヒッター。軸足にしっかりと重心を乗せたうえで、バットを振りぬくスイングが印象的だが、本人も突っ込まないようにするためにも軸足に体重を乗せることは意識しているポイントだという。そのうえで、センターから反対方向へ打つイメージで球を待ち、失投が来れば長打を打ち返すような、力強さも身に付けていきたいという。
三塁の守備にはあまり自信がないというが、打球への反応が良く、スローイングも力みを感じさせない柔らかいフォームをしている。攻守にわたって高い潜在能力を感じさせる実力者といっていい。
・五明徹太郎
木製バットでも快音を響かせていた。力強いスイングが魅力的だったが、その点は意識しているポイントという。力が伝えられるような無駄の少ないスイングや、円を描くようなイメージで最短距離でスイングを心掛けている。
そのために楽天・浅村栄斗内野手(大阪桐蔭出身)のスイングを参考にフォームを固めているという。
(取材=田中 裕毅)
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