今夏「全中」出場!中学軟式の実力校・水元中「野球が盛んな地域」で創部以来初の悲願達成
東京都葛飾区の区立水元中学校軟式野球部は、2001年創部とまだ歴史は浅い。それでもこの夏、創部以来初めて全国中学校 軟式野球大会に出場。近年着々と実力をつけているチームだ。主なOBには、今年春夏連続で甲子園出場を果たした専大松戸の石井 詠己主将や、中央学院大でルーキーながら投手陣の一角を担い、明治神宮大会初優勝へ牽引した清水 一眞(共栄学園)など実力のある選手を多く輩出している。今回はそんな水元中野球部の強さに迫っていく。
「30年以上見てトップクラス」だった逢坂のキャプテンシー

練習風景
水元中がある葛飾区には修徳中があり、隣の江戸川区には上一色中と、中学軟式野球部の強豪がいて、近隣チームのレベルも高い「野球が盛んな地域」に所在している。同校を率いるのは兼子典行監督。高校時代は軟式野球部、大学時代はソフトボール部でプレーしていた。水元中軟式野球部に入部してくる選手は、「基本、地元の子たちですね。水元地区や金町地区の子たちが来てくれています」と話す。今年の顔とも言える身長182センチの長身左腕・八津 快洋投手や、主将の逢坂 拓未外野手も、地元のチームから入部を決めた。
今年のチームについては「キャプテンの逢坂を中心に仲が良くて、チームワークがいいチームでした。もちろん力もありましたが、特別な子たちではないので、練習して練習して、作り上げたチームです」と兼子監督は説明する。さらにチーム1のムードメーカー・糸数丈治選手は「悪いことがあったら、それに対してズバッと言って、他人に対して怒れるチームです。それ以外にも基本的なことをしっかりとやるチームです」と力強く答えた。仲が良いだけでなく、隙を見せないチームになったのは主将を務めた逢坂の存在が大きかった。
逢坂主将については、兼子監督はこのように評価している。「もちろんバッターとしての力はありました。あの子の1番はキャプテンシーです。チームをまとめる能力が今まで見てきた中でも、30年以上みていますがトップクラスです」。打線でもクリーンアップを務め、関東大会ではチームトップの打率.400を記録し、全中出場に貢献した。181センチ・84キロと、すでにがっちりした体格で、高校野球の舞台でも活躍が期待される選手のひとりだ。
エース八津が関東大会でノーヒットノーラン達成

八津 快洋(水元中)
この代は新チーム当初から負けることが少なかったという。そんな常勝チームを作り上げたのは、盤石な3人の投手陣だった。左腕の築田駿翔投手は打線ではリードオフマンも務め、コントロールがよく先発投手として試合を作れる投手だ。内野手も兼任する安藤 佑太投手は小学校時代も全国大会の舞台を経験。力のある直球をコーナーにつく。チームの4番として打線でも中軸を担った選手だ。
そしてエースを務めたのが、八津 快洋投手。身長182センチの長身から130キロ近い速球を投げ込む。しなやかな腕の振りが特長で変化球も鋭く、緩急で次々と三振を奪える左腕として今後も注目すべきだろう。
磐石な投手陣で、この夏は都大会準優勝、関東大会優勝の成績を収め悲願の全中出場を果たした。関東大会の初戦では八津がノーヒットノーランを達成。エースの好投で勢いに乗った。そして決勝ではこれまで2度敗れていた全中常連校・上一色中にリベンジも果たした。全中の舞台はZOZOマリンスタジアム。「緊張していましたね。私も緊張しました(笑)」と兼子監督自身もプロが使用する球場で野球ができることに胸を踊らせた。
「こんな素晴らしいところでできる嬉しさ。テレビで観ている風速計を見たときに『うわーっ』って思いました。意外に中に入ったら風が舞っていたことも分かったりだとか、今まで緊張しない子が緊張していましたね」
初めての全中は初戦敗退。最終回に投球数等でエース八津が降板することとなり、逆転負けとなった。それでも「やるべきことを一つ一つやっていった結果です。みんなで頑張れたと思います」と近年、あと一歩届かなかった全中の舞台に出場できた今年チームの底力を感じた。
現在、野球部を引退した3年生は次のステップに向けて、下級生とともに汗を流している。逢坂主将は「高校に入ったら常にチームの中心となり、中軸を打って活躍したいと思っています」。八津は「全国大会で負けてしまったので、全国大会に出るようなレベルの高いチームに勝てるピッチャーになりたいです」と高校野球での活躍を誓った。
(取材:藤木 拓弥)