今年のドラフトは右打者の価値が非常に高まっている情勢だ。
高校生では、大型スラッガーになる素質があった金子 京介(盛岡大附)、走攻守三拍子揃った大型外野手・花田 旭(大阪桐蔭)、甲子園でバックスクリーン弾を放ち、評価を上げた三塁手・立石 正広(高川学園)といった優秀な右打者がプロ志望届を出さないことが明らかとなった。
大学では山本ダンテ武蔵(國學院大)が未提出。正木 智也(慶應大)、ブライト 健太(上武大)が上位候補に挙がるのは、もちろん2人の能力の高さを評価しているのもあるが、今年のドラフト市場も関係しているだろう。
有薗直輝など外野手にスラッガー揃い
吉野 創士(昌平)、有薗 直輝(千葉学芸)、松川 虎生(市立和歌山)、池田 陵真(大阪桐蔭)
もちろん今年の高校生右打者も優秀な打者が多い。そんな逸材を紹介していきたい。
選手個人の評価、ドラフト市場の相対評価で高校生野手NO.1になりそうなのが有薗 直輝(千葉学芸)ではないだろうか。高校通算70本塁打の長打力は素晴らしく、肉体的な強さが他の高校生と比べても抜きん出ており、ロングティーでもガンガン柵越えさせる選手なのだ。長打力だけではなく、あまり三振をしない選手でもある。八王子の149キロ左腕・羽田 慎之介と練習試合をして、2打数0安打に終わったが、深いセンターフライ、そして鋭いレフトライナーだった。
この時の羽田は140キロ中盤の速球を投げられて、さらにスライダー、チェンジアップも投げられて、今、騒がされている隅田 知一郎(西日本工業大)、山田 龍聖(JR東日本)、佐藤 隼輔(筑波大)にひけをとらないボールを投げ込んでいた。そういう投手からしっかりとコンタクトできるタイミングの取り方の上手さには驚かされた。有薗の評価を引き上げているのは、三塁守備のレベルの高さだろう。球際にも強く、三塁側の深い位置からワンステップでダイレクトスローできる強肩は一級品。もともと投手としても、最速148キロを投げ込む強肩なので、ポテンシャルの高さは群を抜いている。
池田 陵真(大阪桐蔭)は今年の高校生右打者の中では技術的に優れている。大阪大会で圧倒的な打撃を見せたが、どのコースに対しても最短距離で振り抜き、広い[stadium]舞洲球場[/stadium]で確信できる本塁打を打ち続ける長打力は本物。さらに抜群の強肩。ここぞという場面で結果を出せるメンタリティーの強さは一級品だ。
捕手で抜けているのは松川 虎生(市立和歌山)だろう。スローイングタイム1.8〜1.9秒台のスローイングはもちろん。178センチ98キロと豪快な体格をしている割に、インパクトまでのスイング軌道に無駄がなく、技術的に完成されている。肉体的なポテンシャル、技術が備わった捕手は評価が高くなって当然。ドラフト上位に挙げる球団も多い。
メディアで話題に挙がる吉野 創士(昌平)は、高校通算56本塁打の長打力は見るべきものはある。さらに脚力、強肩も見栄えする。グラウンドに立つと映えるタイプで、花形選手になる可能性がある。ただスカウトからの指摘で聞かれるのは、スイング軌道。吉野が本塁打を打った試合を見ると、上手く拾ってリストの強さで運んだ打撃も多く、黒坂監督は入学当初から吉野のスイング軌道では、レベルが高い投手では絶対に通用しないので、スイング軌道、身体の使い方を教え込んできた。
もちろん、今でも完璧ではないが、成長は見える。自分の課題に向き合って取り組める選手なので、プロ入りしたらこんなに良くなったのか…と驚かされるに違いない。
水面下で評価が上がっているのは前田 銀治(三島南)。高校通算31本塁打とドラフト候補に挙がる野手の中では飛び抜けて高いわけではなく、スイングも荒削り。ただ、ツボにはまった時の飛距離、抜群の強肩、俊足はトップクラスで、今年の右打者ではこれ以上ない選手だ。一部の記事で調査書11球団があったが、これはその通りで、前田はプロ1本の方針。指名の可能性は十分にあるだろう。
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清水武蔵など内野手にも右の強打者が集まる
柳澤大空(日大藤沢)、清水 武蔵(国士舘)、渡邉 大和(高野山)
柳沢 大空(日大藤沢)は春の県大会で本塁打を記録したが、やや外回りなスイングで、変化球の対応に課題を抱えている。強肩でスペックは高いが、プロで活躍する時は大きく打撃フォームが改善されている場合だろう。ただその改善をプロでやるか、大学・社会人でやってほしいかは担当スカウトの判断になる。大型外野手タイプでは、西原 太一(宮崎商)、笹原 操希(上田西)の甲子園出場組と、U-15代表を経験している清田 蒼陽(大垣日大)は、中学時代、速球投手として活躍した強肩と、高校から大きく伸ばした長打力を伸ばしたスラッガーだ。
技術的に高度なスラッガーといえば、清水 武蔵(国士舘)の名前が浮かぶ。3回戦で東海大菅生と対決し、早くも姿を消すことになったが、11打数7安打。ホームラン性のファウルを連発し、適時二塁打を打たれた東海大菅生のエース・本田 峻也が「打たれる予感しかなかった」と語るほどの強打者。打席に入った時の集中力、スイング軌道の滑らかさ。すべてにおいて高レベル。また身のこなしが軽快で、強肩が光る遊撃守備も見逃せない。同じ遊撃手では、戸畑の藤野 恵音も注目だろう。180センチを超えながら、右打者で塁間タイム4秒以内で駆け抜ける脚力、強肩が光る守備、パワフルな打撃といずれも魅力的だ。
三代 祥貴(大分商)も高校通算20本塁打を超える長打力を持ち、さらに投げても140キロ台の強肩。期待の大型三塁手だ。中国地区の大型遊撃手・川口 真宙(高梁日進)、小森 航大郎(宇部工)の2人も注目が集まる。九州地区では22598(西日本短大付)は、甲子園では見せ場が少なかったが、長打力と堅実な守備を兼ね備えた大型遊撃手だ。
スラッガータイプでは、投手として145キロ、そして打者としても本塁打を量産する大型三塁手・野村 和輝(東大阪大柏原)、打撃技術の高さが魅力の三塁手・渡邉 大和(高野山)もリストアップされている。
捕手では二季連続甲子園出場を果たした北海の正捕手・大津 綾也はスローイングタイム1.83秒の強肩だけではなく、フットワークが軽快で、身のこなしの良さが素晴らしい。
そして県立岐阜商の大型捕手・高木 翔斗は広角に長打が打てて、さらにスローイングタイム1.9秒台の強肩。力量といえば、松川に次ぐ選手だろう。リードセンスなど野球頭脳の良さ、スローイング能力が高い好捕手・中川 勇斗(京都国際)も入るだろう。そしてスローイングタイム1.8秒台の強肩を誇る東出 直也(小松大谷)も甲子園で抜群のスローイング能力を発揮した。植田 麗(東海大星翔)は高校通算20本塁打を超える強打の捕手だ。
(記事:河嶋 宗一)