Column

「らしくない大阪桐蔭」から2ヶ月で真骨頂を発揮し、3年ぶり近畿制覇

2021.05.31

 大阪桐蔭智辯学園を破り、3年ぶり6度目の近畿大会優勝を果たした、2012年以降に限っては5回目の優勝。その夏はすべて甲子園出場を決めており、大阪桐蔭にとっては良いデータだ。

 大阪桐蔭は今年のセンバツで史上初の初戦敗退を喫した。当時から近畿の頂点に勝ち上がるまでの軌跡を追った。

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優勝旗を受け取る大阪桐蔭・池田陵真主将

 らしくない。

 実はセンバツ初戦敗退を喫した大阪桐蔭の戦いを見ていたOB選手たちに取材する機会があった。先輩たちは口を揃えてらしくないと語ったのだ。どういうところなのか?それは投手力でも打撃力でもなく連携プレーだ。

 大阪桐蔭の強さといえば、常に全力疾走、スキのないカバーリング、鮮やかな連携プレーなど高校生とは思えない守備力の高さを発揮していたのだ。センバツでの関戸康介松浦慶斗の不調は確かに誤算だったと思うが、今までの大阪桐蔭ならば、当たり前のようにできていなかったことが徹底されていなかった。そこに先輩たちは「らしさ」が欠けているように感じたのだ。

 もちろんこの「当たり前」ができるために、徹底とした反復練習が必要とする。大阪桐蔭OBに話を聞くと、高度な連携プレーができるためには日々の実戦練習で繰り返し行って、覚えていくと話す。ただ、今年は緊急事態宣言もあり、練習時間に大きな影響があった。それもあって、チームとして完成できなかったのはあるだろう。

 ただ西谷監督は選手たちにこう問いた。
 「主将の池田には、初戦敗退して、おこがましいかもしれませんが、俺は日本一を狙っている。ただ日本一を口にするのは簡単。もう一度、本気で日本一になりたいのか、選手に聞いてほしいと。それからの練習姿勢、生活面の取り組みについては私は関与していません」

 池田は「基礎的なことはできていなかったですし、技術面云々よりも、まずはすべてにおいて一からやり直しをしました」

 私生活、練習態度、練習でもカバーリング、全力疾走など。遊撃手の藤原夏暉は「出来ない時はチームメイト同士で指摘しあいました」と振り返る。

 大阪府大会では圧倒した戦いぶりで優勝。近畿大会では特に準決勝からロースコアの試合を制した。準決勝の智辯和歌山戦では3対2でサヨナラ勝ち、そして決勝戦の智辯学園戦では4対2とサヨナラ勝ち。2度負けている相手に、無失策試合を実現し、その中で球際の強さが見えた好プレーや、9回表には無死一塁の場面から前川右京の右前安打に、花田旭が三塁へ素晴らしい送球を見せ、進塁を阻止。まさに守り勝ちとも言える試合で、課題である守備、投手陣の底上げに成功を見せた。

 試合後、池田は「こうして近畿大会が優勝できて、日本一を目指す上で大きな1勝でした」と振り返り、西谷監督も「まだまだなところは多くありますが、粘り強く勝てたのは良かったことです」と選手の成長を評価した。

 わずか2ヶ月で、ここまでのチームにまで成長した大阪桐蔭。センバツの敗戦をしっかりと受け止め、課題を克服していく様子が見えた。あと願うのは、関戸康介松浦慶斗の完全復活である。才能として世代を代表する逸材だからこそ、ベストパフォーマンスを期待したい。

(文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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