「谷間の世代で強くない」九州王者・大崎の清水監督が語る本音と使命とは
昨秋、九州大会を制した長崎県・大崎。離島にしてつい3年前までは部員は僅か5人、さらに初戦が九州大会決勝の再戦となる福岡大大濠に決まったことなど、話題づくしの選抜甲子園初出場となった。
だが清水央彦監督をはじめ、選手は皆どこか俯瞰したように「谷間の世代」、「ここまで行けると思ってなかった」と口にする。その真意、そして選抜甲子園での戦いを彼らはどのように考えているのだろうか。
地域の方々に納得してもらえる試合を
清水監督の話しを聞く選手たち
「この冬は打撃が課題でした。かと言って、ピッチャーもボールに力があったかと言えばなかったですし、秋は試合運びの上手さで勝ったと思っています。やっぱり勝つ野球というより、負けない野球をしないといけません」
そう語るのは、2018年に監督に就任した清水央彦監督だ。
秋季九州地区大会を制した大崎だったが、その内容を見ると接戦の連続だった。初戦の開新戦こそ9対2と点差をつけて勝利したが、準々決勝の延岡学園戦、準決勝の明豊戦といずれも終盤の逆転劇で3対2と接戦を勝ち抜いた。
決勝の福岡大大濠戦こそ、相手エースの毛利 海大が登板を回避する中で、打線が繋がり5対1で勝利したが、打撃力、守備力、投手力のすべてにおいてパワーアップしないと、選抜甲子園はおろか、夏の甲子園も厳しいと危機感を滲ませる。
「ここまでは、打球はある程度飛んでるなと感じています。ピッチャーもボールが強くなりましたし、選抜もそうですが夏に向けても多少は可能性が出てきたかなと感じています。
正直、力のあるチームではないのですが、選抜も夏も頑張れるかなと多少は見通しは立ったと思います」
チームの戦力に関してはどこまでも控えめな指揮官であるが、その中で唯一口調を強めて選抜への思いを語る場面があった。
応援してくれる地域の方々についてだ。
学校のある西海市大島町は、人口約5000人の小さな島。選手は全員が長崎県出身選手だが、普段は寮生活を送っており地域に支えられながら野球に打ち込むことができている。地域の方々に納得してもえる試合をすることが大崎にとって一番の使命と考える。
「うちは地域の色んな方から応援されてやっているチームです。それに対して、納得できるような試合をしないと駄目ですよね。もちろん勝つのは一番いいと思いますが、勝てなくても応援した人に恥かかせるような試合にしてはいけないと思ってやっています」
[page_break:選手たちに慢心は絶対無い]選手たちに慢心は絶対無い
秋季大会での大崎
チームの中心となるのはエースの坂本 安司に、捕手で4番の調 祐李だ。
坂本は直球の最速は139キロだが、スピンの利いたボールをコーナーに投げ分ける制球力があり、変化球も多彩。佐世保市立日野中時代には全国中学校野球大会に出場して、高知中だった森木 大智とも投げ合うなど大舞台での経験値もある。
また4番の調は、清水監督が「教えてきた中でパンチ力は一番」と語る程の打撃力が持ち味。ここまで高校通算で11本塁打を放っており、打線のキーマンといえる存在だ。
「投手陣は、基本は坂本と2年生の勝本 晴彦が軸になってくると思います。この冬でだいぶ体が強くなっていると思うので、坂本ももう少しボールも速くなっているはずです。
調も、もう少しコンタクトが良くなるといいのですが、暖かくなると変わってきますし、やっぱりインパクトの強さは魅力です」実績を持つ選手も打線に並ぶ。
選抜甲子園は初出場、しかも九州王者として臨むことになるが、清水監督は選手たちに慢心はないと断言する。実力がないことを自覚し、甲子園でも謙虚に戦い抜くことを清水監督は選手たちに常に伝え続けていると話す。
「私は常に弱いと言い続けているので、慢心は絶対ないです。私も甲子園での戦いは多少は知っていますが、うちは下手すると本当にボロ負けするチームだと思っていて、それは常に言い聞かせています。なので選手たちに慢心はないと思いますし、油断もないと思います」
雨天により予定が1日ずれた初戦。地域の思いも背負い、どんな戦いを見せるのか注目していきたい。
(取材=栗崎 祐太郎)