報徳学園に勝つために神戸弘陵(兵庫)が始めた日本一の下克上【前編】
甲子園のお膝元であり、全国でも有数の激戦区である兵庫県。昨秋の県大会では神戸国際大附が頂点に立ち、近畿大会ベスト8まで勝ち進んだ。他にも明石商や東洋大姫路など実力校が揃う地区だが、そのなかの1つである報徳学園を破ったのが神戸弘陵だった。
旧チームは野島 勇太を擁していたが、これまでにも飯田 優弥などプロ野球選手を輩出している実力校だが、いかにしてライバル・報徳学園を破ったのか。
報徳学園の大敗から始まった
神戸弘陵のキャッチボールの様子
入り口にはサッカー部の横断幕が数多くあり、入ってすぐのところには全国屈指の強豪として知られる女子野球部のグラウンドがある。部活動が盛んなことがすぐにわかる神戸弘陵のグラウンドは校舎内の奥にあった。
近くには寮や雨天練習場、さらにはサブグラウンドなど施設が充実しており、選手にとって嬉しい環境である。取材当日は実戦練習を多めにやりながらも、空いているスペースを使ってトレーニングをするなど時間を無駄にしていないのが印象的だった。
ただ新チームスタート時は決して力がなかったことをエース・時澤 健斗は語る。
「打力がないだけではなく、守備も練習試合から勝負所でミスをしてしまうことが多かったです。そこから選手間で指摘し合ったことで成長したと思います」
攻守ともに課題を感じていたが、主将の林 天翔も「守り勝つチームを目指してノックをたくさん受けましたが、最初はボロボロでした」と発足時の状況を振り返る。それでも守り勝つチームを作るべく、ノックを中心に受けながら1プレーずつ選手間でも声を掛け合って、守備力強化を図ってきた。
指揮官の岡本 博公監督も「投手力があったので、センターラインを中心に野手がどれだけ周りを固められるか」と言うことに焦点を当ててチームを作り上げていった。そのなかで、チームにとって大きな節目が来た。8月末に練習試合でライバル・報徳学園と2試合を行った。
秋の大会でも対戦する可能性もあり、大事な一戦だったが、内容は神戸弘陵にとっては厳しい結果だった。
「2試合とも2桁失点をしてしまい、打っても1点くらいしか取れない試合展開でした。それくらい大差を付けられたので、『秋戦ったら勝つぞ』と思って練習への取り組み方は変わりました」(林 天翔)
岡本監督はこの試合で指揮を直接とったわけではないが、チームの変化を感じ取っていた。
「選手たちも試合を経て強さを感じていましたし、部長からも『報徳さんに勝たないと』と言うことは言っていましたので、練習を通じて自信を深められるようにしていきました」
先を見据えて勝負に出た地区予選
林天翔主将
目指してきた守り勝つチームを作るために、これまで以上にノックに対する意識が高まったのはもちろんだが、それ以上にスイング強化に力を入れるようになったことを林主将は語る。
「10球連続ティーを50セットで500スイングするようにしました。それくらいやらないと報徳学園に追いつくことはできないと思いました」
まるで冬場のような練習メニューだが、それだけ神戸弘陵が受けたインパクトは大きかった。ただその成果が秋季大会で発揮されることとなる。
神戸地区に属する神戸弘陵は兵庫工に8対3、神戸北には9対2というスコアで勝利して地区予選突破。9月から開幕した県大会へ出場決定と自分たちのペースで試合運びができているようにみえるが、選手たちの感覚は違っていた。
「負けている展開から逆転するなど苦しい試合運びが多かったです。ですが、そういった試合を制したことはチームにとって大きかったと思います」(山河 斗真)
林主将も「8回まで競ってしまうケースが多かったので、序盤から決められればと思います」と振り返るほど。ただ、そこには岡本監督のある考えがあった。
「時澤、山河の2人を登板させればもっと楽に勝てたかもしれません。ですが、投手陣の底上げや、野手陣に緊張感や粘り強さと言った上位校に勝てる力を付けるために、1年生を多く登板させました」
岡本監督も「1つの賭けに出ました」とチームの今後を見越した大きな勝負に出た。その結果、地区予選で負ければ起用した監督の責任となることは十分わかったうえだったが、選手たちは見事地区予選を突破。厳しい試合を経て「チーム力が徐々についてきました」と手ごたえを十分に感じることが出来た。
今回はここまで。次回は報徳学園との一戦やチームの強さを支える神戸弘陵の秘密にも迫っていきます。次回もお楽しみに!
後編はこちらから!
なぜ県8強・神戸弘陵(兵庫)はライバル・報徳学園にリベンジ出来たのか【後編】
(取材=田中 裕毅)
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