Interview

関戸康介とともに騒がれた二刀流・田村俊介はなぜ明徳義塾中から愛工大名電へ進んだのか【前編】

2021.01.13

 3年前の2018年の夏、野球界に衝撃を与えた森木 大智を擁した高知中のライバルだった明徳義塾中。当時は大阪桐蔭の右のエース・関戸 康介がいたが、ともにチームを牽引した男が今回のインタビュー相手だ。

 その名は田村 俊介。愛知の名門・愛工大名電へ進学し、投手としては最速145キロ、打者としては通算25本塁打という成績を残す。まさにセンスの塊といってもいい田村は、いかにして現在に至ったのか。

なぜ京都から明徳義塾中へ進学したのか

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田村 俊介(愛工大名電)

 幼稚園の年長のころから京都府舞鶴市で活動する共楽少年野球クラブで野球を始めた田村は左利きということもあり、ファーストをメインにしてきたが、「チーム事情で4年生になったときに投手を始めました」と投手生活は始まった。

 小学校を卒業し、明徳義塾中への進学を決意。親元を離れて、寮生活を始めることとなる。ただ、地元の中学校やクラブチームで継続することも選択肢にある中で、なぜ明徳義塾中へ進学したのだろうか。

 「中学の軟式にもスカウトの方が見に来てくださることを知っていましたし、軟式の方が怪我のリスクが少ないので、軟式野球を継続していました。そのなかで、過去に一度対戦した先輩が凄くいい選手で、『一緒にやりたいな』と思って追いかけていったのが決め手になりました」

 わずか12歳で親元を離れ、寮生活を始めた田村。「厳しいところもありましたが、自分のことを自分でやるだけでした」と苦しいわけではなく、むしろ合っていたとも感じていたとのこと。

 ただレギュラー奪取は簡単ではなかった。「全員が上手い選手ばかりだったので、自分の持っていることを出し切ろう」と田村は考え、武器にしていた打力で必死にアピール。何とか2年生の時にはスタメンを奪取すると、実績を積んでいく田村は130キロを超えるストレートに巧みなバットコントロールを活かしたプレースタイルでチームの主力選手へ。

 そして主将として迎えた3年生の夏、第38回全国少年軟式野球大会に出場して準優勝。「1年生の夏から全国を経験してきたことが活かせました」と集大成を発揮して田村は中学野球を終えた。

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愛工大名電へ進学し投手としてのセンスが目覚める

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田村俊介のピッチングフォーム

 いよいよ高校野球へ。田村も準備を進めていくことになるが、ここで1つ決断する。高校から愛工大名電への進学を決めるが、なぜ明徳義塾中を飛び出したのか。

 「高知県とは違う場所で力を試したいと思っていました。それで高校からは別のチームに行こうと思っていましたが、その時に愛工大名電が甲子園に『超攻撃野球』というのを掲げて出場していたのを見たんです。
 中学時代は打者メインでプレーをしていたので、高校でも打者として成長したいと思って愛工大名電への進学を決意しました」

 こうして明徳義塾中から地元に戻った田村は、高校からは愛工大名電への道を進むことを決意。再び親元を離れて寮生活を始めることとなる。

 2度目の寮生活には「もう慣れています」と問題はなかったが、プレーには課題があった。
 「ボールの大きさや重さに苦戦しましたし、バッティングでも感覚の違いに戸惑う部分がありました」

 しかし田村は1年生の春からベンチ入りをして、早くからチームの戦力としてプレーすることとなる。ただ、それは打者としてではなく投手としての活躍だった。
 「入学してすぐはキャッチボールばかりでしたが、縫い目が高くなって指先にかかりやすくなりましたし、そこで何かを掴みました」

 元々130キロを超えるボールを投げ込んでいた田村だが、さらに力を付けて145キロを計測するまで成長した。ではどんなことをポイントにしているのか。

 「普段から足を上げた時に、ねじってあげることでフォームに勢いを作れるようにしたいと思っています。その捻りが中学時代よりも今の方が大きくなりました。
 けどその分、開きが早くなっているので、右腕を横に出してあげて壁を意識することで抑えること。そして踏み出す足を真っすぐ出すことをポイントにしています」

 そして投手・田村は当時、奥川 恭伸(現東京ヤクルト)らがいた星稜との練習試合で登板。7回無失点の好投で白星を掴んだ。
 「プロ注目の選手たちが沢山いたので、『全力を出せれば』と思っていました。調子自体は普段通りでしたが、ボールが低めに集まって、それを振ってもらえた感じです」

 とにかく「絶対に勝つ」という気持ちだけは忘れずに投げ込んだ田村だったが、結果は思うようなものではなかった。

(記事=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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