智辯学園に善戦した郡山(奈良)!通算12回の甲子園出場実績誇る古豪の現在【前編】
近畿王者・智辯学園、そして好投手・達 孝太を擁する天理などがひしめく奈良県。そんな智辯学園、天理とともに『奈良御三家』として並び称された公立校が存在する。それが公立校・奈良郡山である。
大和郡山市に学校を構え、県内でも有数の進学校としても有名な奈良郡山。春夏合わせて12回の甲子園出場実績を持つ実力校の今はどんな練習なのか。
荻野貴司さんを鍛えた名コーチ直伝のトレーニング
練習に打ち込む郡山の選手たち
学校に隣接されたグラウンドで日々練習をする奈良郡山。ただ野球部専用というわけではなく、他の部活動との共用となっており、取材当日もレフトの奥では陸上部が練習をしていた。また通常では授業が7限まで詰まっており、学校が終わるのは16時頃になる。
そこから準備等をすると、練習開始は16時30分となり、練習終わりは19時頃となる。練習時間は2時間30分程度と限られた環境と時間で、奈良郡山は鍛錬を重ねているのが現状だ。
「今は2学年で41名がいますが、全員で同じ練習メニューをこなします。ですので、選手それぞれが1球に対する集中力を高めなければ、練習量で劣っている我々は勝てません」
そのように語るのは指揮官の生島 秀峰監督だ。2019年から奈良郡山の監督に就任し、甲子園を目指し、選手育成に打ち込んでいる。この秋は近畿王者・智辯学園と初戦で対戦して敗れたが、スコアは3対5と善戦。加えて好投手・西村 王雅から12本のヒットを集めるなど、高い打力を発揮することが出来た。
だからこそ、「パワーとスピードを身につければ公立校の中で勝負できるチームになると思います」と生島監督は期待で胸を膨らませる。そのために取り組んでいるトレーニングがある。
そのトレーニングを監修しているのが、木村 新吾コーチだ。30年以上、郡山で指導をし続け、過去には千葉ロッテで活躍している荻野 貴司選手に指導した実績も持っている。そんな木村コーチが取材日、選手たちに課したメニューが以下の4種目だ。
・チューブを使った股関節周りのトレーニング
⇒股関節の柔らかさを保ったまま強化。ここを強化することでプレーの中での安定感を作るのが目的
・ハンマーを使ったトレーニング(上から振り下ろすパターン)
⇒筋力、特に広背筋強化を目的としたトレーニング。10キロのハンマーの重さの反動をしっかり使って、アウターマッスルを鍛える。
・ハンマーを使ったトレーニング(下から振り上げるパターン)
⇒下半身リードで腰の力を使って打つことで、バッティングの動きに繋げられるようにしていく。
・バランスボール×シャフトを使ったトレーニング
⇒バランスを保ちながら深部筋(インナーマッスル)といった小さな筋肉を動きの中で鍛える
勝負所での打撃を課題に挑んだ秋
郡山の練習模様
あくまで動きながらトレーニングをしていくのが木村コーチの指導方針。ハンマーを使ったトレーニングはアウターマッスルを鍛えるメニューであるが、それ以外は軽い負荷のなかで、全身を使って連動性を意識した中で鍛える。
つまり、動ける身体、野球のプレーで使える身体を作るためにトレーニングを組んでいる。そこに加えて、今年は上半身の強化にも力を入れているとのこと。「バットを軽く感じてもらえるようなパワーを付けて、私学に負けない打力を付けよう」という生島監督の考えも加えたメニューを組んでいる。
あくまで打力を武器に勝ち進もうとする郡山だが、新チームスタート時は勝負所でのバッティングに課題を山口 瑛士主将は振り返る。
「センターラインに旧チームの経験者がいたので、守備は大丈夫だったのですが、バッティングには力がなかったので、勝負所で1本が出せていませんでした」
夏休みはバッティング練習に多くの時間を割き、打力の強化に打ち込んできた。部員41名が同じメニューに取り組むが、この時に大事にしてきたのは選手間で指摘し合う姿勢だ。
「41人もいますので、時間を無駄にしないためにも客観的な意見として選手間で指摘し合ったり、1球を無駄にしないように意識しています」
夏休み期間中、練習試合を戦っても平均で10得点をたたき出すなど、確かな結果を残し続けていた。「全体のレベルは高かったと思います」と生島監督も手ごたえを感じていた。
しかし、秋は智辯学園の前に3対5で敗れ、早々にオフシーズンに突入する結果になった。
前編はここまで。後編では新チームの歩みなどを中心に見ていきます。
後編はこちらから!
10点勝負の超乱打戦で郡山(奈良)は県の頂点を目指す【後編】
(取材=田中 裕毅)