Interview

苦しみ抜いた中川颯(桐光学園ー立教大)が生み出したアンダースロー論 vol.3

2020.12.16

 1998年世代は投手大豊作の1年。プロでは山本 由伸都城出身)、大学では早大の早川 隆久木更津総合出身)と実に多い。その中で異色の存在といえるのが立教大の中川 颯桐光学園出身)だ。高校時代から有名なアンダースローとして、二度の関東大会出場、最後の夏はベスト4。

 立教大進学後は1年春に大学選手権優勝を経験。61試合に登板し、10勝8敗、通算141奪三振と好成績を残し、今年のドラフトでは4位指名を受け、プロ野球選手になる夢を叶え現在、プロ野球界でアンダースローで実績を挙げたのはこの3人。

高橋 礼投手(福岡ソフトバンク)専大松戸出身
與座 海人(埼玉西武)沖縄尚学出身
牧田 和久(東北楽天)静清工出身

 中川はアンダースローで勝負出来る投手として評価され、夢を叶えることができた。では中川はいかにしてこの位置にたどり着いたのか。そのサクセスストーリーを振り返っていきたい。

 最終回のvol.3は大学で活躍するまでの道のりや今後の意気込みを語っていただいた。

苦しみ抜いた中川颯(桐光学園ー立教大)が生み出したアンダースロー論 vol.3 | 高校野球ドットコムvol.1〜2の記事はこちらから!
県内屈指のアンダースローのきっかけとなった帝京戦 中川颯(桐光学園ー立教大) vol.2
負けん気の強いアンダースローの中川颯(桐光学園ー立教大)の投手人生の始まり vol.1

中川が考え抜いた投球改革

苦しみ抜いた中川颯(桐光学園ー立教大)が生み出したアンダースロー論 vol.3 | 高校野球ドットコム
中川颯(桐光学園ー立教大)

 東京六大学のハイレベルの打者を抑えるために考え抜いた中川が出した答えは投球のすべてにおいて緩急をつけることだった。

 「この4年間で、変化球のキレも上がったんですけど、4年生で、投げる緩急、フォームの緩急、投球間の緩急。すべてにおいて緩急をつけて、打者のタイミングをずらす事を考えて投げていました」

 アンダースローとして速い130キロ台ながらも、150キロ超えのオーバースローのように圧倒できるわけではない。球速が大きく変わらないのならば、投球の間合い、ストレート、変化球に球速差をつけたり、フォームに変化をつけることを意識したのだった。速球、変化球の表面的なものから、投球に奥行きをもたせる意識に変わった。

 動作に緩急をつけながら安定した投球を続けるためにはフォーム固めが重要。中川はネットスローをオススメしてくれた。

 「投球フォームは実際にピッチングする時は打者に投げるときに意識しないほうがよくて、考えながらやっているとおかしくなってしまいます。脳みそを使うことと、身体を同時に使うことはとても難しいんですよね。

 マウンドに立った時に、無意識にできるようにすることが良いと思っていてフォーム作りする際にネットスローは下半身を使い方の反復の練習になりますし、段階を踏んでフォームを固めて、試合では無意識に良いフォームで投げるためには一番いいやり方だと思っています。」

 ストレートを投げるポイントについてアンダースローを始めた時から大きな変化がない。

 「ストレートの握りは普通に上投げと一緒なんですけど、リリースの仕方が違います。上投げの投手は中指が最後に離れるですけど、アンダースローは人差し指が最後に切るイメージですね。この投げ方についてはアンダースローから始めた時に変わりないです。渡辺俊介さんの本を読んで、磨いたものです」

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スライダーの握りを示す中川颯

 さらに決め球のスライダーの握りを見せてもらった。

 「僕は普通の投手の握り方がそんなに変わらないと思うんですけど、その日の調子によって親指の位置が変わっていきます。抜けやすいと思えば、親指を浅く握ったり、その日によって調整をします。曲げるポイントとしては 斜め上に十字の方向に浮かせるイメージですね。オーバースローならば上から下へのイメージですが、アンダースローならば、逆の角度と言う感じですね」

 また、アンダースローはどうしても左打者の対応が必要な課題になる。そのために逆方向への変化を描くシュート、シンカー、ツーシームが必要不可欠なイメージがある。中川はあることには越したことはないが、攻めの引き出しも増やすことができれば、勝負はできると語る。

 「左打者はシンカーは逃げるような球種も重要になりますが、僕自体、苦手意識はないです。
左打者のインコースに強いストレートを投げられるようになって、バックドア(打者の外角側のボールゾーンからストライクゾーンに変化)の巻いてくるスライダーを投げられるようになりましたので、左打者の投球パターンも増えてきました。

 左打者を苦手にしてしまうのは、抑えるパターンが少ないからだと思います。シンカーは引き出しの1つとして有効ですが、シンカー以外にも、有効になる球種も増えてくれれば、右、左も意識せずに投げられるのかなと思います。」

 立教大から提供いただいた投球動画を見ると、左打者の懐へ厳しいストレートを投げ込んで三振を奪ったシーンがあった。中川の言葉通り、内角へしっかりとつくコントロールと、球威があれば、勝負できることを証明した。

 そして4年秋は2勝、防御率3.14と好成績を残した中川はドラフト会議でオリックスから4位指名を受け、プロ野球選手になる夢を叶えた。

[page_break:アンダースローといえば中川と呼ばれる存在に]

アンダースローといえば中川と呼ばれる存在に

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中川颯(桐光学園ー立教大)

 4位指名を受けたことについては、中川自身、驚きだった。

 「まさかこんなに早い段階で指名されるとは思いませんでした。指名されるとすれば、最後のほうかもしれないと覚悟をしていたので、こうして4位に指名していただいたオリックスさんには感謝をしています」

 また指名時のエピソードも教えてくれた。いわゆるドラフト会議時の指名時の流れといえば、大画面でドラフト会議を観覧し、呼ばれた名前と同時に大歓声を上げるもの。しかし中川は変わった指名の瞬間だった。

 「僕は携帯で速報を見ていたんです。ちょうどCMだったんですよね。そしたら、仲間から『オリックス!オリックス!』という声が聞かれて知ることができて、他の選手とは違うものだったと思います(笑)」

 今はプロへ向けて準備をしている中川。同世代の投手たちには対抗心を燃やしている。

 「やはり同年代は良い投手が非常に多いですし、負けたくない思いは強いです」

 反骨心がアンダースローでプレーするエネルギーとなっている。

 「アンダースローの条件として体が柔らかい投手が良いといいます。もちろん柔軟性があったほうがいいと思いますが、自分は特別柔らかい投手ではないです。僕自身、性格的にもあまのじゃくなところがあって、負けん気が強い投手は向いていると思っています」

 穏やかな表情でこれまでを語ったくれた中川。リモート越しではあるが、その意志の強さは伝わる。最後にプロでの決意を語ってくれた。

 「アンダースローの投手として、OBである山田久志さん(通算284勝)、アンダースローになるきっかけになった渡辺俊介さん、今、活躍されている牧田さん、高橋礼さん、與座さん。その方に追いつけるように努力をして、いつかは抜かして、アンダースローといえば中川といわれるように段階を踏んで地道に謙虚に頑張ります」

 本格派揃いのオリックスにとっては差別化できる存在になれるか。そのためには1年目からのアピールが重要になる。

 負けん気の強さで這い上がり、今度は中川が子どもたちから憧れるようなアンダースローになることを期待したい。

(記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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