なぜ千賀滉大(蒲郡出身)は育成選手から超一流投手へ成長できたのか?思考法に迫る!【後編】
2020年のパ・リーグ全公式戦が終了。最多勝、最多奪三振、最優秀防御率の投手3冠を獲得したのがソフトバンク・千賀 滉大(蒲郡出身)だ。育成選手出身ながら、通算66勝、1006奪三振と、ソフトバンクでは押しも押されもせぬエースへのし上がり、今や多くの高校生投手が憧れる存在となった。そんな千賀はなぜ先発投手として活躍し続けるのか。
今回は、後編をお届けする。
前編はこちらから!
・「自分の感覚を信じる」 パ・リーグ投手三冠の福岡ソフトバンク・千賀滉大(蒲郡出身)の調整法 【前編】
超一流選手の交流は必要不可欠
今季、怪我で出遅れながらも、復帰後はパ・リーグ最多タイとなるQS率77.78と安定して試合を作り、規定投球回に到達。最多勝となる12勝、最多奪三振、最優秀防御率を達成した千賀。実際の試合でも先発ながら、常時150キロ~150キロ後半をコントロールよく投げ分ける投球はまさに規格外だったが、それでも無理に投げている感覚はなく、千賀がキャッチボールから大事にしている「5割の力加減で7割ぐらいのボールを投げ込む」感覚を実践し続けた結果が現在のパフォーマンスにつながっている。
さらに「体調面には気を使っています。これは僕だけではなく、プロ野球選手は意識していない選手は誰もいないというぐらいみんな大事にしています」と語るように、コンディション作りは欠かせない。
千賀にとって、コンディショニングに対する意識の変化は、先発として活躍し始めた2016年から。近年ではオフ期間でダルビッシュ 有(東北出身)との交流も大きかった。
「やはり超一流選手とのダルビッシュさんとの交流は本当に大きくて、新たな発見ばかりでした。超一流、一流になるにはそういった選手との交流は絶対に必要です」
ダルビッシュとの対話で初めたのが野球ノート。1週間の中で、トレーニング内容、良かったこと、悪かったことなど、自分が書きたいことを書く。
「参考になった部分も多いですし、自分の引き出しを具現化できました」
自分の頭の中を整理する上で、大きな助けとなった。
活躍するにはどういうことをすればいいか。うまく行かなかった時ほど悩みも大きい。今年はシーズン開幕も遅れ、調整が難しいシーズンの中、悩みもあった。「その中で何をすればいいか、絞りに絞って整理できました」と語るように、9月は2勝3敗ながら防御率2.31、10月は3勝1敗、防御率0.00と圧巻の好成績を残した。
自分の課題に対して逃げずに取り組めば道は開ける
オンラインインタビューに応じる千賀滉大(蒲郡出身)
今年は投手三冠を獲得したが、現状を満足するつもりはない。レベルアップするためにやらないといけないと思う課題は多くある。
「自分の中でまずは目標を立てる。その目標を達成するためにどうすればよいか、次に課題が見つかります。それは単純なものではなくて、それぞれの項目に枝分かれをしていて、考え出したら頭が痛くなります。それでもゴールは見つけて、そのゴールを達成するためにはどうすればいいのかを真剣に向き合い、考えながらやっていきます。
でも、高校時代の自分はどうだったかというと、ただ『速く投げたい』という思いはありましたけど、今と比べても漠然とやっていただけかなと思いますよ」
変わりたいなら、自分と本気で向き合い考え続けるしかない。そんな思いが伝わる言葉だった。最後に、千賀はいつかは花開きたいと願う球児たちへこうメッセージを送った。
「才能というのは誰しもあります。変な例えですえど、僕が野手の練習をもっと練習をしていたら、プロの舞台で野手として成功できていたでしょうか?もしかしたら、できていたかもしれないし、できなかったかもしれない。それは分からないですが、それと似たことで、みんな野球が好きで打ち込んでいると思うんですけど、まずは自分がどうすればよくなるかを考えた時に、たくさん枝分かれした課題が出てくる。その中で、本当に必死になって埋めようと思ってやっているのか。
それを一生追い求めていく中で、周りの人から、『才能が開花したな、芽が出てきたな』と言われるようになるのではないかと思います。
自分も、もっと凄くなりたいと言う思いはずっと変わらないと思いますし、現状で満足できるものは全くありません。自分が『うまくなりたい』と一生懸命やる中で、『こういうこともあるんだな』という発見は多くあります。そういった発見が自分の助けになるので、これからプロを目指す選手は貪欲にいろいろなことに触れていくことが、自分の成長の近道になると思います」
今も超一流を目指して挑戦を続ける千賀 滉大。2020年はまずは日本一を目指して。そして、2021年はどれほど進化した姿を見せてくれるか楽しみにしていきたい。
(記事=河嶋 宗一)