Column

再浮上の兆し見せる京都外大西がコロナ禍で見出した新たな練習スタイル【前編】

2020.11.03

 2005年夏に甲子園準優勝の実績がある京都外大西。2010年夏以降は甲子園から遠ざかっているが、最近の成績は上向きで、再浮上の機運が高まっている。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、異例だらけとなった今年の高校野球。京都外大西も多くの学校と同じように活動再開できたのは6月からだった。

コロナ禍で気づけたこと。そして両立を求めた戦い方の難しさ

再浮上の兆し見せる京都外大西がコロナ禍で見出した新たな練習スタイル【前編】 | 高校野球ドットコム
シートノックの様子

 今年は3年生の選手が15人だったため、夏の独自大会は全員がベンチ入りすることができた。その一方で西村 瑠伊斗(1年)や星野 一平(2年)など力のある下級生も起用し、ブロック決勝まで勝ち進んだ。ベストに近いメンバーで戦えていたように見えたが、実際には難しい戦いを強いられたと上羽功晃監督は振り返る。

 「ベンチに入れたからには3年生を全員使おうと思っていたので、いつもと同じような戦い方はできなかったですね。使うタイミングを計らないといけないですから」

 通常であれば、学年関係なくベストメンバーを組めばいいが、この夏はそうもいかなかった。勝利と3年生全員起用の両立を求めた中で最後の試合まで戦えたことは大きな成果だろう。

 また、コロナ禍で各校が悩まされたのが練習時間の問題だ。活動再開してからも練習時間の短縮を余儀なくされた学校は多く、京都外大西も平日の放課後練習が3時間半から2時間半と1時間程度短くなった。しかし、それがプラスになった面もあったと上羽監督は話す。

 「練習時間を長くしなくてもできるなと思いましたし、時間の使い方はちょっと変わった部分がありましたね。練習時間が短くなった中で無駄な時間をなくす意識が高まったので、そこはよかったと思います。そこは継続していきたいですね」

 今までのように練習できなくなったからこそ、気づくことができた部分はどの学校でもあることだろう。京都外大西にとって、それが時間への意識だった。グラウンド整備や練習の合間では選手たちがテキパキと動いており、意識は十分に浸透しているように感じさせられた。

[page_break:折れた木製バットを活用した驚きの練習の狙い]

折れた木製バットを活用した驚きの練習の狙い

再浮上の兆し見せる京都外大西がコロナ禍で見出した新たな練習スタイル【前編】 | 高校野球ドットコム
短いバットを使いトスバッティングにも取り組む

 練習内容にも目を見張るものがあった。それは短いバットを使って打撃練習を行っていたことである。折れた木製バットを活用し、根っこの部分を持ってバットを操作している。以前はバント練習や片手でのティー打撃で取り入れていたが、この新チームからはフリー打撃でも短いバットを使用することになった。その理由を上羽監督は次のように説明してくれた。

 「ボールを引きつけて、自分のポイントに持ってくる。要はボールを追いかけないことを意識づけさせたいんです。短くバットを持っていると、自分の近くにボールを呼び込もうという意識が持てるので、そこは変わった気がしますね。粘っこいバッティングができるようになったと思います」

 バットが短いと、体の近くまで引き付けなければ、ボールに当てることができない。以前は外に逃げていくスライダーに振らされる主力打者があったそうだが、それも徐々に改善傾向にあるという。

 ちなみに短いバットでフリー打撃をすると、当然だが、普通のバットよりも打球は飛距離が出ない。しかし、ドラフト候補になった18152(3年)は短いバットでも長打性の当たりを連発していた。

 残念ながらドラフト会議では指名されなかった山下だが、高い打撃技術には定評がある。短いバットで打球を飛ばすコツとして、「体の使い方とバットを通す角度だと思います」と解説してくれた。バットを上から出すのではなく、下からすくい上げて、ボールに乗せるような角度でバットを出せば、遠くに飛ばせるのだという。短いバットは正しい打ち方を身に付けるために役立つアイテムになっている。

再浮上の兆し見せる京都外大西がコロナ禍で見出した新たな練習スタイル【前編】 | 高校野球ドットコム後編はこちらから!
11年ぶりの聖地へ!京都外大西の再浮上のカギを握るのは我慢強さ【後編】

(記事=馬場 遼

関連記事
梅野隆太郎以来の「打てる捕手」。福岡工大城東・誉田貴之は自己否定と戦い続けてドラフト候補に
【日程・結果一覧】九州地区高等学校野球大会 福岡大会
阪神タイガーズの正捕手に座る梅野隆太郎!恩師が語るその進学秘話

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.13

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.05.14

【春季東京都大会総括】日大三、二松学舎大附など強豪校がノーシードの波乱! 新基準バットでも9本塁打の帝京が驚異の打力で王者に

2024.05.13

【北海道】帯広大谷、遠軽、函館大柏稜が全道大会出場へ<春季全道大会支部予選>

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.09

プロスカウトは190センチ超の大型投手、遊撃手、150キロ超右腕に熱視線!この春、浮上した逸材は?【ドラフト候補リスト・春季大会最新版】

2024.05.09

【熊本】九州学院は城北と文徳の勝者と対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?