Column

独自のセイバーメトリクスの指標も開発!伝統校・鳥羽に現れた文科系マネージャー

2024.03.16


橋詰祐季

第一回夏の大会の優勝校・鳥羽高校。これまで夏6回春4回甲子園に出場し、今も京都の強豪高校として知られる学校だ。そんな伝統校野球部に“文科系”の男子を発見した。

<鳥羽高校のマネージャー特集はこちら>
「私たちは“なんでも屋”じゃありません!」選手を甘やかさない鳥羽高校の女子マネージャー論【野球部訪問】
*****
グランドに着くなり、目に留まった男子生徒がいた。
真っ黒に日焼けした野球部員の中でひときわ目立つ色白。スラッとした体型でタブレットを持っている。
ちょっと野球部員に見えないこの男、京都・鳥羽高校野球部の橋詰祐季くんだ。サイバーメトリクスを駆使して野球を数値化して、選手をサポートする異色のマネージャーである。

橋詰くんが野球のデータに興味を持ったのは、小学三年生まで遡る。テレビで野球中継を見ていた橋詰は、スコアに興味を持ち「野球の記録を取ってみたい」と感じたという。中学三年生になったとき、父からパソコンをもらい、エクセルに野球のデータを入れ始めた。最高の玩具を手に入れた橋詰くん。独学でエクセルを使いこなせるようになり、ますます野球データに夢中になっていった。

高校受験を控え、鳥羽高校の学校説明会を訪れた橋詰くんは当時野球部の監督をしていた山田知也先生に出会う。
「山田先生に『野球のデータに関わる仕事をしたいんです』と相談すると、『大歓迎です』って言ってくださったんです。その時点で『鳥羽の野球部に入る』って決めました」(橋詰くん)

独自に開発した指標「進塁率」

野球部に入部した橋詰くんは、セイバーメトリクスを早速導入して、データ解析を始めた。「進塁率」という独自の指標も作った。これは一塁に進塁された投手が、その後どれだけ進塁をされるか、打者はどれだけ進塁させたか、を数値化するものだ。
「『進塁率が高い人を2番とかにしたら良いんじゃないですか』などいろんな提案を先生に言ったりしてます」
目をキラキラさせながら「データの魅力」を話してくれる橋詰くん。日々集めたデータから「鳥羽の勝利」につながるアウトプットを引き出そうとしている。
「練習効率を上げたりすること、大事だと思っています。例えばデータから『流し打ちができてない』とわかったら、流し打ちを練習する。そういうデータの活用っていうのはできるんじゃないかなって思っています」
もちろん野球はデータが全てではない。しかし、データという切り口があることは、チームにとって大きな強みになる。正しくデータが使えれば、数値から行動の振り返りができ、的確な対応もできるようになる。

夏に向けて橋詰くんが始めたことがある。
「全部の打席を分析する『全打席分析』っていうのをやり始めました。ボールカウント、球種、などを全部出して『この時に打ちました』というデータを全部出してる状況です。選手の傾向をより詳細に掴むことで、強みと弱みがより分かってきて、チームの強化に繋がるんじゃないかなと思ってます」

「この『全打席分析』、結構時間かかるのでまだ終わってないんですけど」とおどける姿にはまだあどけなさが残っている。異色のデータ系マネージャーが鳥羽のこれからに注目したい。

<関連記事はこちら>
◆【野球部訪問・鳥羽高校第1回】第一回夏の優勝校・鳥羽(京都)は“古豪”なんかじゃない!「つねにアップデートする野球」で甲子園を狙う
◆【野球部訪問・鳥羽高校第2回】性格も投球スタイルも正反対の“レフティーズ”が京都に旋風を巻き起こす!
◆【野球部訪問・鳥羽高校第3回】超伝統校が考える「新規格バットへの驚くべき対策」とは?
◆「私たちは“なんでも屋”じゃありません!」選手を甘やかさない鳥羽高校の女子マネージャー論【野球部訪問】
◆【京都】立命館宇治、龍谷大平安の初戦の相手は?<春季大会組み合わせ>

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.26

新潟産大附が歓喜の甲子園初出場!帝京長岡・プロ注目右腕攻略に成功【2024夏の甲子園】

2024.07.27

昨夏甲子園4強・神村学園が連覇かけ鹿児島決勝に挑む!樟南は21度目の甲子園狙う【全国実力校・27日の試合予定】

2024.07.26

名将の夏終わる...春日部共栄・本多監督の最後の夏はベスト4で敗れる【2024夏の甲子園】

2024.07.26

報徳学園が3点差をひっくり返す!サヨナラ勝ちで春夏連続甲子園に王手!【2024夏の甲子園】

2024.07.26

「岐阜県のレベルが上がっている」県岐商が2年ぶりの決勝進出も、岐阜各務野の戦いぶりを名将・鍛治舎監督が称賛!【24年夏・岐阜大会】

2024.07.25

まさかの7回コールドで敗戦...滋賀大会6連覇を目指した近江が準決勝で涙【2024夏の甲子園】

2024.07.24

享栄、愛工大名電を破った名古屋たちばなの快進撃は準々決勝で終わる...名門・中京大中京に屈する

2024.07.21

【中国地区ベスト8以上進出校 7・20】米子松蔭が4強、岡山、島根、山口では続々と8強に名乗り、岡山の創志学園は敗退【2024夏の甲子園】

2024.07.21

愛工大名電が今夏3度目のコールド勝ちでV4に前進!長野では甲子園出場37回の名門が敗退【東海・北信越実力校20日の試合結果】

2024.07.21

名将・門馬監督率いる創志学園が3回戦で完敗…2連覇狙う履正社は快勝【近畿・中国実力校20日の試合結果】

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.07.08

令和の高校野球の象徴?!SJBで都立江戸川は東東京大会の上位進出を狙う

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.27

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」