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東亜学園(東京)どのようにして高い打力を身につけていくのか【前編】

2020.10.16

 過去に3度の甲子園を経験し、今夏の東東京大会では優勝した帝京と準決勝で激突。敗れ亜はしたものの、7回まで1点リードする展開で王者を苦しめたのが東亜学園

 男子バレー部は全国制覇8度を誇る屈指の実力を持っており、野球部も毎年注目集める実力校として有名だが、グラウンドに行くと強豪とは少し違った印象を受けた。

限られた環境だからこそ密度を濃くした練習

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東亜学園①

 中野区に学校を構えている東亜学園だが、グラウンドは少し離れた小平市にある。授業が終わってからグラウンドに移動するが、そのグラウンドの形が特殊になっている。ライトが極端に狭く、ホームからネットまでが60メートルほどとのこと。

 そのため、バッティング練習をしていても、打球がネットを超えるのが取材日も多く見受けられた。グラウンドの様子をしっかり見ながら練習を見ていると、選手たちは木製バットを使って打撃練習に打ち込んでいた。

 金属バットを使ってしまうとネットを超えてしまうため、それを少しでも減らすために木製バットを使っていると指揮官の武田朝彦監督は語る。だが、そこにはちょっとした細工が施してある。

 「学校に協力して用意してもらった竹バットですが、85.5センチと少し長めになっています。これを大会3日くらい前まで使って打たせています」

 通常のバットは82もしくは83センチが多い中で、なぜ85.5センチ長めのバットを使って練習をさせているのだろうか。
 「少し長いので、それでヘッドの重さを感じながら振ることができます。その結果、飛ばす感覚を掴みやすくなります」

 ヘッドの走りや遠心力といったものを体に染み込ませるために、少し長めのバットを使っている。練習環境に限りがあり、ボールを打ち込む時間や量にも限界がある。制限がある中で、密度の濃いものにしていくためにも「技術を磨くしかない」と武田監督は考えており、木製バットはその一役を担っている大事なアイテムなのだ。

 その効果を武田監督はこのように語る。
 「金属バットはどこに当たっても飛ばせるので、力任せにどんな軌道でスイングしても強い打球が飛びます。ただ木製バットは先っぽや詰まれば折れますので、身体の近くでバットを使って、ヘッドを返さずにボールの内側を捉えるように最短距離で出していく。インサイドアウトの技術は習得しやすいです」

 実際に旧チームから試合に出場し、新チームでは4番に座る主砲・鈴木浩太朗に話を聞いても、「木製バットを使うことで、ミート力に繋がっていますし、試合ではしっかりバットを振ることができています」と確かな手ごたえを感じていた。

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ピッチャー対チームの構図で戦う

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東亜学園②

 今夏の大会ではベスト4まで5試合を戦って総得点31点だった東亜学園。打線が機能したように思えるが、武田監督は「言うほど打っていないと思います」と振り返る。その代わりに「効率よく点数が取れるような攻撃の引き出しは持っています」と語る。

 「エンドランといった作戦にも力は入れていますが、それ以上に相手守備の隙を突く。バッティングには自信がないので、そういった姿勢でランナーが塁上から相手投手にプレッシャーをかけています」

 常に選手たちには「打つだけが野球ではない」と話をするという武田監督。打者は3割打てれば一流だと評価される野球の特性上、打てないことの方が多いスポーツになる。

 ましては高校生でも150キロを超える速球を投げられる時代になり、いくら良い打者が揃っていても好投手と対戦すれば連打は簡単ではない。だからこそ1対1で勝負をするのではなく、ピッチャーに対してチームで勝負することが大事になる。

 時には四球を選び、またある時はアウトになっても良いから進塁打を打つ。こうしたチームバッティングをしていくことの大切さを伝えるうえで、武田監督がポイントにしていることはいかに有利なカウントに整えるかと言うことだ。

 「積極的に振りながらも、ボール球には手を出さないようにしています。そこで手を出してしまうと不利なカウントになりますので、我慢や粘りをテーマにしています」

 その感覚を培うためにグラウンドでの地道な基本練習だけではなく、学校生活からしっかりと意識をもって取り組めるか。チームをまとめる主将・竹本京飛も「学校生活から粘りや我慢と言うことは意識しています」と普段から気を付けることで、我慢や粘りに繋げてきた。

 今回はここまで。次回は伝統として好投手を中心とした守備を築くことが出来る理由に迫っていきます。

東亜学園(東京)どのようにして高い打力を身につけていくのか【前編】 | 高校野球ドットコム後編はこちらから!
東亜学園(東京)が毎年好投手擁する堅守のチームに仕上げられるワケ【後編】

(記事=田中 裕毅)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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