海城vs都立武蔵村山
小さきエース・渡辺向輝が7回8奪三振の投球で海城が都大会へ!
海城・渡辺向輝
4連休に入り、秋季東京都大会1次予選は一気に都大会出場校が決まっていく。[stadium]日体大荏原グラウンド[/stadium]でも海城と都立武蔵村山による代表決定戦が開かれた。
まず紹介したいのが海城先発・渡辺向輝。身長166センチ、体重54キロと身体こそ小柄ではあるが、投げ込むボールの質が素晴らしい。ノーワインドアップから始動し、東北楽天・涌井秀章を彷彿とさせるような左足を伸ばしながらゆったりとした体重移動から鋭く縦に身体をひねる。回転に合わせて腕を振り抜き、全体のバランスの良さが印象的なフォーム。
伸びのあるストレートに合わせて大きく曲がるカーブ。そしてストレートに近い軌道から鋭く沈む縦のスライダーが中心だが、フォームがほとんど同じで再現性が高い。ランナーを背負ってもクイックは1.3秒前後とレベルの高さを見せつける。
立ち上がり無失点で迎えた2回、都立武蔵村山5番・大塚愛都のライト前と打撃妨害で得点圏にランナーを背負うと、7番・宮崎樹に甘く入った変化球をレフトまで運ばれ、先取点を献上。海城は追いかける展開となる。
しかし直後の攻撃、4番・板野直央主将のレフトへの二塁打で反撃の口火を切ると、相手のミスですぐさま同点。さらに6番・福本晃大の犠牲フライで逆転に成功。続く3回には1番・島村壮の三塁打から追加点のチャンスを作ると、4番・板野の2本目の二塁打などで一挙4得点。6対1と海城が試合の主導権を握った。
海城の攻撃のキーマンである4番・板野はオープンスタンスで構えて、ピッチャーの始動に合わせてすっと足を小さく上げてタイミングを取り始める。肩甲骨を寄せるようにバットを引いて、トップを作る。少しばかり後ろが大きいのが気になるが、あまり癖のないバランス取れた良いフォームだ。
都立武蔵村山先発・大塚愛都
その板野のタイムリーなど、野手の援護を受けた渡辺は6回に1点を失い6対2となったが、逆に直後の攻撃で3番・亀徳正純の追加点で7対2とした海城。そして、8回に2点を追加した海城が都立武蔵村山を9対2のコールドで下して都大会の切符を掴んだ。
見事都大会出場をきめた海城の梶徹監督は、「最後まで諦めずにやろうと話をしましたが、序盤でどのボールを打つか決めたのがハマりました」とコメントした。新チームスタート時は自分たちの戦い方を模索するところから始まり、20失点する試合もあったが、5、6試合ほど経験し始めたところから戦う準備はできてきた。都大会に向けて「守備でリズムを作るスタイルなので、ミスを減らしつつ走塁を詰めていければと思います」と課題を語った。
また好投を見せた渡辺は「打たせて取る投球がしっかりできましたが、終盤にスライダーの変化が悪くなったのは改善点です」と語った。夏休みの段階ではストレートで押していくスタイルだったが、打たれることが多く、変化球でカウントを取れるようにキャッチボールから投げ込むことでコントロールを磨いた。それが結果として変化球で勝負できるように、打たせて取るスタイルを確立した。都大会でも渡辺のピッチングに期待したい。
一方、都立武蔵村山は夏の独自大会ではベスト16まで勝ち進んだが、今秋は予選で姿を消すこととなった。しかし4番・粕谷憲司と7番・宮崎は身体はしっかりしておりチームの中でもバットが振れている印象だった。春以降の成長が楽しみなスラッガーだ。
また先発したエース・大塚はセットポジションからインステップ気味に踏み込んでくるフォームから、腕を鞭のようにしならせて投げ込むストレート。さらに右打者には縦のスライダー、左打者には上手く抜けたチェンジアップとパターンをいくつかしっかり確立していた。味方のミスで失点することもあったが、一冬超えてどんな成長を遂げるか楽しみだ。
指揮を執る井上雅章監督は、「まだまだこれからで伸びしろがありますので、基本をやりながら身体を作っていきたいです」と語ると、川島達弥主将は「身体を大きくして打てるようにしつつ、捕れるアウトは確実に取れるようにしたいです」と春への巻き返しを誓った。
(記事=田中 裕毅)