チーム打率.382、20本塁打の強力天理打線を封じた秋田駿樹(広島新庄) 迫田前監督の教えを胸に躍動!
昨秋の大会でチーム打率.382で20本塁打と強力打線を擁する天理。それを4対2で下したのが広島新庄。守備をウリとするチームで、昨秋は2年生左腕・秋山恭平が中心となって中国大会ベスト4まで勝ち進んだ。
だが、天理戦で好投を見せたのは昨秋活躍した秋山ではなく、3年生のサウスポーエース・秋田駿樹だった。
恩師から教わった、低めへの制球力は技術だけではない
秋田駿樹 ※写真は2020年1月の野球部訪問より
ノーワインドアップから始動して、少しひねりを加えつつ重心移動の際に股関節を引き込むことで、下半身で力をしっかりタメて込んでいく。そこから力むことなくスリークォーター気味の高さから、下半身で作ったパワーを無駄なくボールに伝えて、130キロ台のストレートに大きく曲がるスライダーで天理打線を圧倒した。
「警戒する打者に対しては何で攻めていくのか。しっかりと決めましたが、それ以外には基本的に低めに投げることを大事にして行きました」
旧チームの夏の大会でベンチ入りした唯一の投手として秋田は「他の投手陣を引っ張っていけるように」と冬場の取材では覚悟をもって練習に取り組んでいた。しかし秋季大会中に肘に違和感を感じて戦線を離脱。2年生左腕・秋山恭平に任せる形となった。
その影響もあり、「春は恭平が先発となると思いますので、リリーフで投げる時はしっかり抑えられるようにしたい」とあくまで2番手以降での活躍を秋田の中でも想定していた。
だが新型コロナウイルスの影響で選抜の中止どころか、練習も中止となった。秋田は実家の岡山に帰省して、ランニングを中心に練習を続けた。だが、肘の影響を考慮して自粛期間中はあまり投げ込まなかった。
万全の体制で迎えた甲子園交流試合で秋田は好投を見せた。守備の広島新庄の良さを十分に発揮させる、打たせて取る投球で天理打線を封じた。特に素晴らしかったのは低めにボールが集まっていたこと。これが出来たからこそ、低めの変化球で空振りや打ち損じを誘うことが出来たことが考えられる。
これに関しては、「ブルペンでは真っすぐが低めにボールが集まっていたので、その辺りは良かったです」と本人も納得の状態で投げていた。ではいかにして低めにボールを集めることが出来たのか。それは恩師の言葉だった。
「あまりフォームに関しては意識はしていないんです。ですが、低めに投げることだけは考えてやっています。迫田守昭前監督からも『ボールが高めに浮くのは気持ちや意識の面にある』と冬場くらいに言われてきました」
この春に退任した恩師の言葉を胸に、技術ではなく意識に目を向けて取り組んできた秋田。その結果が天理戦のピッチングだった。
「甲子園のマウンドに立てたことは嬉しかったですし3年間広島新庄でしっかりやってきて良かったと思います。将来的には三振をとるのも大事ですが、打たせて取れるテンポの良い投手になりたいです」
上のステージの継続を考えているという秋田。広島新庄、そして甲子園で学んだことを活かし、さらなるステージで成長した姿を見せて欲しい。
(記事=田中 裕毅)
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