Column

何故、春季沖縄県大会は全国で唯一、開催出来たのか【前編】

2020.04.17

何故、春季沖縄県大会は全国で唯一、開催出来たのか【前編】 | 高校野球ドットコム
日本ウェルネス沖縄ナイン(興南戦より)

 3月25日から開催した沖縄県高校野球春季大会をめぐり、テレビのコメンテーターが、「やらない方が良かったのではないか」という指摘もあったが、沖縄県高野連が大会開催を決断したのには、それなりの理由があった。

 3月はじめ。新型コロナウイルスの感染拡大の脅威に悩まされた沖縄県は、県立校が一斉休校に入る。暫くして感染者が3人で終わっていることを踏まえ、16日から全校の登校が再開。沖縄県高等学校野球連盟は20日に開催予定だった春季大会を、25日へスライドした。

 「練習期間が短い。(開校した)16日から大会へ入る4日程度では大きなケガにも繋がる。」と懸念したのだ。
 大会に入ると選手やチームスタッフ(監督、コーチら)の体温チェックはもちろん、箇所に消毒液の設置。選手らに密集と密閉の場を避けるなど、コロナウイルス感染拡大防止を図るための工夫を施した上で、無観客試合での大会開催を決定した。

 当初無観客試合は3月いっぱいまでを予定していた。「4月にはコロナウイルスが収束していて欲しい。そして父母を始め、高校野球を応援する方々に観に来てもらいたい。」との、沖縄県高等学校野球連盟の願いゆえであった。しかし、それは叶わず。新型コロナウイルスは収束するどころか少しずつ増え続けた。

 厚労省が発表した10万人当たりの感染者数日別推移によると、3月24日の時点で東京都が1.2人。大阪府が1.6人ほど。沖縄県はというと0.2人だった。30日に沖縄県は0.6人と、緩やかに増えたことを踏まえ、沖縄県高等学校野球連盟は4月も無観客試合とすることを決定。沖縄県は4月5日まで、そのまま0.6人と感染者数が増えることは無かった。

 

 30日の両都府を見てみる。

 大阪府が2.4人、東京都は3.2人。4月4日には大阪府が4.4人。東京都は6.4人。4月8日には大阪府が6人に。東京都は約10人(9.74人)と増大の一途を辿った。

 春季大会準々決勝終了の翌日、沖縄県高等学校野球連盟は、準決勝以降の日程を中止すると発表。沖縄県の感染者数は8日には2.2人と増えたことを見ても、沖縄県高等学校野球連盟が下した決断は正しかったと言える。

大会で撮影と取材をした筆者の思い

何故、春季沖縄県大会は全国で唯一、開催出来たのか【前編】 | 高校野球ドットコム
逆転タイムリーを放ったウェルネス沖縄・平良一葵(興南戦より)

 無観客試合のため、ベンチからの声はもちろん、プレイヤー同士の掛け声がこんなにも透るものなのかと、驚きとともに新鮮な気持ちに包まれた。選手たちも「応援団のためにも!」という気負いは見られず、それぞれが純粋にプレーを楽しむ姿が見て取れた。

 他県他者からは「こんなときに野球なんてやってるのか!」という厳しい声はあったであろう。だが、思い出して欲しい。東日本大震災後の選抜高等学校野球大会だ。

 「人は、仲間に支えられることで、大きな困難を乗り越えられると信じています。私たちに今出来ること。それは、この大会を精一杯元気を出して戦うことです。頑張ろう!日本。」と。

 あのときの選手宣誓で、「私たちは、阪神大震災の年に生まれた」と語りかけ始めた創志学園野山主将。全国民を感動させたあの言葉こそ、野球が持つ力。
 今回の沖縄県高校野球春季大会では、観客の皆様に選手たちの、愛息子の勇姿を直接観せることは出来なかったが、選手の父母、指導者の方から沖縄高野連へ感謝のコメントが多くあった。

 後編で選手の父母、指導者の方々の反応や開催したことによるメリットについて迫ります。

(文=當山 雅通

何故、春季沖縄県大会は全国で唯一、開催出来たのか【前編】 | 高校野球ドットコム後編はこちらから!
選手ファーストで動き、開催ができた春季沖縄県大会【後編】

関連記事はこちら!
2年ぶりの甲子園へ 興南(沖縄)の課題とキーマンは??【前編】
チーム内での競争激化が、来る春そして夏への二連覇をもらたす 沖縄尚学(沖縄)
センバツ出場校に対しての救済策を考える 「選抜出場を勝ち取っていた学校で甲子園大会を!」

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.22

【愛知・全三河大会】三河地区の強豪・愛知産大三河が復活の兆し!豊川を下した安城も機動力は脅威

2024.05.23

春季関東大会でデビューしたスーパー1年生一覧!名将絶賛の専大松戸の強打者、侍ジャパンU-15代表右腕など14人がベンチ入り!

2024.05.22

【宮城】仙台育英は逆転勝ち、聖和学園が接戦を制して4強入り<春季県大会>

2024.05.22

【北信越】帝京長岡の右腕・茨木に注目!優勝候補は星稜、23日に抽選会

2024.05.22

【秋田】明桜と横手清陵がコールド勝ちで4強入り<春季大会>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.17

「野球部や高校部活動で、”民主主義”を実践するには?」――教育者・工藤勇一さん【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.5】

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.05.20

【春季京都府大会】センバツ出場の京都国際が春連覇!あえてベンチ外だった2年生左腕が14奪三振公式戦初完投

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【岩手】盛岡中央、釜石、水沢が初戦を突破<春季地区予選>

2024.04.23

床反力を理解しよう【セルフコンディションニングお役立ち情報】

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?