報徳学園のエース・坂口翔颯が目指す「圧倒」する投球。スケールと制球力を高めて夏こそ聖地へ
秋季兵庫県大会で優勝を飾った報徳学園。決勝では、2季連続で甲子園ベスト4入りを果たした明石商を5対1と力で押さえ込み、6年ぶり13度目の栄冠を手にした。
優勝の原動力となったのは、間違いなくエースの坂口翔颯だ。最速142キロの直球だけで無く、スライダーやフォーク、カーブなど多彩な変化球を器用に投げ分け、コマンド能力も非常に高い。強豪がひしめく今年の近畿地区の中でも、指折りの好投手だ。
今回はそんな坂口に、これまでの歩みや秋季大会での成長、そして夏に向けた取り組みを伺った。近畿地区を代表する、好投手に迫っていく。
変化球の投げ込みを一部制止されて直球の威力が向上
坂口 翔颯(報徳学園)
阪神ボーイズ時代から、好投手として名が知れ渡っていた坂口。
中学3年の夏にはボーイズリーグの夏の全国大会でベスト16に進出し、球速も136キロを記録。変化球や制球力の良さにも定評があり、中学生としては非常に総合力の高い投手だった。
だが、坂口は当時のスタイルを「変化球投手」だった振り返る。速いストレートがありながらも、自らを「変化球投手」と呼ぶのは、ストレート以上にスライダーに自信を持っていたからだ。
「当時は真っ直ぐも良かったんですけど、どちらかと言えば器用なピッチングをしてたと思います。コントロールにも、スライダーにも自信があったので、コースを突くようなピッチングでした」
「非常に器用な投手」と大角健二監督も語るように、スライダー以外にもカーブやフォーク、ツーシームなど6種類を投げ分ける坂口。だが、器用が故にコントロールと変化球に頼りがちになる性格を見抜いた報徳学園首脳陣は、坂口が入学後すぐに3種類の変化球の投げ込みを一旦制止する。
より真っ直ぐの強いスケールの大きな投手目指して、まずは投球の基本であるストレートを磨くためだ。
「1年生の時にお前はとにかく真っ直ぐを磨けと言われ、そこからピッチングが変わりました。
試合でも真っ直ぐ中心の配球にして、1年間で5キロくらい球速は伸びましたと思います。真っ直ぐで推していけるピッチングが出来るようになりました」
元々、大きな期待を背負って入学した坂口は、1年の夏から本格的に登板機会を掴んでいき、前チームでは2年生ながら投手陣の一角として活躍。球速は142キロまで達し、徐々に本格派としての道を歩み始めたのだ。
更なるスケールアップと投球にも幅を
坂口 翔颯(報徳学園)
制球力に球威も加わってき、新チームではエースとなった坂口。
秋季兵庫県大会では明石商を相手に1失点完投勝利を挙げ、自らのピッチングにも自信を持ち始めたが、秋季近畿地区大会では再び大きな壁にぶち当たった。
「天理戦は打たれてはいけない場面で、ホームラン打たれてました。それも『投げ切ったボール』ではなく『甘く入ったボール』です。1球の怖さを改めて感じましたし、単純な力の面でも負けているなと感じました」
天理戦での敗戦を経て坂口は、更なる制球力の向上に取り組むことにした。
これまでの投球練習では、多少甘いコースにいってもボールが強ければ「ナイスボール」で済ませていたが、この冬からは甘いコースに対しては妥協を無くし、「ナイスボール」で済ませないことをバッテリーで徹底。一球一球への意識を徹底的に高めた。
またピッチングのバリエーションを増やすために、更なる直球の威力向上にも取り組んでいる。
これまでの坂口の投球スタイルは「変化球を見せて、速い真っ直ぐで仕留める」組み立てであったが、ここに「速い真っ直ぐを見せて、変化球で打ち取る」組み立ても増やしていきたいと大角監督は話す。
「変化球を見せて、真っ直ぐを速く感じさせる配球はいつでも出来ますが、逆ができるようになるともっと投球が楽になるかなと思います。
夏はバッター(のレベル)が全然違ってくるので、全部逃げの配球だとしんどくなってきますからね」
越えるべき壁はまだまだあるが、大角監督は「課題」という表現は使わない。それは坂口の持つ潜在能力への期待と、これまで積み上げてきた信頼の表れだろう。
大きな期待を背負う坂口だが、最後の夏に向けて掲げるのは「圧倒する」ことだ。
「兵庫県でギリギリで優勝してるようでは、甲子園でもダメだと思います。優勝するのは当たり前ぐらいの気持ちでやっていかないと、甲子園では勝てないと思うので、それぐらいの気持ちを持って戦いたいと思います」
総合力高き右腕が、一冬越えてどこまでスケールアップしているのか。春からの投球に注目だ。
(記事:栗崎祐太朗)
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