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4度目の甲子園へ!広島新庄(広島)の安定した強さを支える重圧という伝統

2020.01.08

 堀瑞輝(北海道日本ハムファイターズ)や田口麗斗(読売ジャイアンツ)、さらには永川勝(広島東洋カープ)など数多くのプロ野球選手を輩出した広島新庄。夏は準々決勝で姿を消したが、新チームで迎えた秋は見事広島県の頂点に返り咲き。中国地区大会でもベスト4にまで勝ち進み、選抜出場のボーダーラインに乗った。

 広島広陵や如水館、さらには広島商と実力ある学校を押しのけて優勝に辿り着いた。そんな広島新庄だが、今年のチームは夏8強からいかにして頂点に上り詰めたのか。名将・迫田守昭監督や選手の話から、新チームの足跡を追いかけてみた。

力が落ちると思われた世代が広島の頂点まで駆け上がった

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練習中の広島新庄の選手たち

 「夏ベスト8で終わったのは久しぶりだったんです。まして、決勝に行けなかったのは6年ぶりでした。去年のチームは2年生の時から試合に出ている選手が多く、力があるチームでした」

 3年生たち中心の夏までのチームを振り返る迫田監督。エース・桑田孝志郎にキャッチャー・木村優介のバッテリーを中心に優勝候補の一角として数えられていた。しかし、準々決勝で尾道商に2対7で敗戦。2016年以来の3年ぶりの甲子園とはならなかった。

 その後、広島新庄は唯一スタメンに名を連ねていたライトの下志音を主将に立てて、新チームをスタート。再び広島の頂点を目指す日々が始まった。

 新チームに対して迫田監督は、「ライトをやっている下しか試合に出ていなかったので、力が落ちると思っていました」と厳しい船出になることを想定していた。それでも迫田監督が理想とする、守備を鍛え上げたチーム作りをすることを曲げることはなかった。
 「いつもと変わらず守備で最少失点にすること。そのうえで打線が何とか粘って、全員で繋いて点数を取る。それが大会でも実を結んだと思います」

 こうした守備をベースとした広島新庄らしさがあったからこそ、「地区予選から県大会と1つずつ成長できた」と迫田監督は振り返る。そんな今年のチームを「試合で勝てる選手、チーム」だと迫田監督は呼ぶが、実際の選手たちは今年のチームをどう受け止めているのか。

 チームを引っ張る下は、「去年のチームよりも、チームメイト同士の仲や練習の雰囲気の良さといった意識は良いと思います。ただ技術に関しては去年より劣る印象でした」と迫田監督同様、力が落ちていることを感じ取っていた。

 エースとして秋の大会に臨んだ秋田駿樹も「守りのチームになっていくと思いました」と広島新庄らしいチーム作りになっていくことを予感しながら夏休みを過ごした。ではどうやってチーム力を上げていったのか。それは広島新庄の伝統にあった。

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伝統がチームを強くしていった

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ノックを受ける広島新庄の選手たち

 広島新庄は普段から実戦形式を多く取り入れる。今年もチームも例外ではなく、夏休み期間中から実践を多く積んできた。それには迫田監督の考えがあるからだ。
 「新庄のグラウンドでやっていることは試合の延長だと。ここでエラーを平気でしたり、しっかりできなかったりする選手は試合でもできないんです。だから甲子園のつもりで意識を持ってやらないといけないんです」

 広島新庄は進学校として学業にも力を入れている。そのため、練習は16時もしくは17時から始まることもある。そうなると、練習時間は1、2時間程度しか確保できない。そんな制限の中で成果を上げるためには、練習から本気で取り組む姿勢が求められる。

 こうした考えの下、広島新庄は結果を残し続けてきた。言わば広島新庄の伝統とも言えるが、今年のチームもその歴史をきっちり継承したのだ。

 下主将も「(先輩方が築いてきた伝統が)チームを強くしてきたと思います」と語ると、エースの秋田も「ミスを許さない空気感があった」と厳しい練習が大きく関わっていることを語った。

 こうして確実にレベルアップしていった広島新庄は秋の県大会の地区予選を危なげなく突破。県大会に駒を進めると、初戦で甲子園出場校・広島商と激突。1対4のビハインドで9回二死一、二塁から追いついた広島新庄が延長に持ち込んでサヨナラ勝ちで勝利したが、ここが大きなポイントだったことを下主将は振り返る。
 「最後まであきらめずに全員で戦えたからこそ、サヨナラ勝ちできたと思います。あれで勢いが出てきました」

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ランメニューをこなす広島新庄の選手たち

 中国地区大会の高川学園戦でも延長戦を制するなど、厳しい試合を重ねながら「(試合をこなすごとに)力をつけられました。計算ができる、強いチームかな」と迫田監督は確かな手ごたえを感じながら中国大会4強まで駆け上がることが出来た。また、準決勝の倉敷商戦まで7試合でノーエラーで勝ち上がることが出来たことも、大きな収穫となった。

 下主将も秋を振り返って「他県のチーム力を肌で感じることが出来たのは良かった」語りつつ、中国地区ベスト4の結果を春先以降に活かしていく姿勢を示した。

 選抜出場かどうか、微妙な立ち位置にいる広島新庄。それでも「選ばれると思って練習すれば、落選しても夏に向けてはプラスになる。そういう希望をもって練習をしている」と迫田監督。春だけではなく、夏も見越した選手育成は既に始まっている。

 同じ練習でも考え方、取り組む姿勢を変えるだけ、得られる効果は変わってくる。広島新庄はこれからも脈々と受け継がれてきた伝統を引き継ぎ、全国の舞台で勝利を掴むことで証明し続けていく。

(文・田中 裕毅

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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