これぞ球史に残る一戦! 東京 2019年ベストゲームは名門校同士の一戦!
群雄割拠、好ゲームの多かった1年
神宮第二球場最終戦の試合前、東京都高野連より挨拶が行われた
この1年、春季都大会の優勝は東海大菅生、準優勝は国士舘、東東京大会の優勝は関東一、準優勝は都立小山台、西東京大会の優勝は国学院久我山、準優勝は創価、秋季都大会の優勝は国士舘、準優勝は帝京と、東京都高校野球連盟主催の公式戦の決勝進出チームは7校になる。
東東京大会の8強のうち5校はノーシードで、西東京大会でも3校はノーシードといったように、群雄割拠の1年であった。
こうした混戦模様を反映して、どの大会も序盤から好ゲームが多かった。
中でも平成最後の大会となった春季都大会では、結局東西東京の代表として甲子園に行くことになる関東一と国学院久我山の延長戦の熱闘、終盤の逆転が圧巻だった都立小山台と早稲田実の一戦、それに最後は主将の石田隆成のサヨナラ打で決着した東海大菅生と国士舘の決勝戦などは、強く印象に残っている。
夏の大会では、3日連続で登板した後、中1日の登板にもかかわらず、150キロ近い速球で修徳を抑えた上野学園・赤坂諒の力投、宮崎恭輔のサヨナラ満塁本塁打で決着した国学院久我山と早稲田実の一戦をはじめ、目を離せない熱戦が数多くあった。
好ゲームの多かった1年であるが、ベストゲームとなると、秋季都大会の準々決勝の帝京・日大三の試合になるだろう。
神宮第二球場、最後の日は来た
帝京勝利の瞬間
1961年の完成とともに東京の高校野球の主要舞台であった[stadium]神宮第二球場[/stadium]は、秋季都大会の準々決勝を最後に球場としての歴史に幕を閉じることになった。
その最後の試合が、前田三夫監督率いる帝京と、小倉全由監督率いる日大三という、まるで仕組んだかのような好カードになった。
もちろん各校の代表が抽選した結果であり、帝京は関東一など、日大三は東海大菅生などの強豪を倒しての準々決勝進出であり、運命とも言える一戦であった。
帝京との対戦が決まり、日大三の小倉監督は、「前田さんに強くしてもらった。前田さんと試合ができるのは、嬉しいことです」と語っている。
1980年代から激しい戦いを繰り広げている両雄の激突である。
試合当日、早朝から大勢の高校野球ファンが詰めかけ、スタンドは超満員の観客で埋まった。
そして試合開始前には東京都高校野球連盟の役員がグラウンドに整列し、堀内正会長や武井克時専務理事があいさつし、この球場の最後の試合であることを告げた。
フィナーレを飾った球史に残る一戦
前田三夫監督(帝京)左、小倉全由監督(日大三)右
この一戦が特別な試合であることは、この球場にいる誰もが感じていた。これまで、猛打のイメージが強い両校であり、狭い[stadium]神宮第二球場[/stadium]とあって打撃戦が予想されたが、1点を取るのが難しい守り合いの試合になった。
日大三の児玉悠紀は、走者を出しても、軽快なバント処理で進塁を許さない。
帝京の田代涼太もバント処理で走者を刺したが、帝京の守りで光ったのは中堅手の加田拓哉であった。
4回裏にセンターへの低い当たりにダイビングキャッチしてピンチを切り抜けたのに続き、5回裏も、日大三が2番・熊倉幹太の二塁打で1点を先制した直後、3番・柳舘憲吾の低い打球にもダイビングキャッチで好捕した。
もしこのファインプレーがなければ、完全に日大三のペースになっていたかもしれない。それを防いだ代償として、加田の手は傷だらけになっていた。
帝京は6回表無死二、三塁から代打・尾瀬雄大の二ゴロで同点に追いついたのに続き、1番・武者倫太郎の初球スクイズで勝ち越した。
試合の終盤に入るとスタンドには、勝敗の行方を見守る一方で、試合が終わってほしくないという思いが入り混じっていた。[stadium]神宮第二球場[/stadium]のラストゲームは、一流選手の引退試合と雰囲気が似ていた。
9回表、帝京の2番・武藤闘夢のレフトへの打球は本塁打かと思われたが、日大三の左翼手・國森陸がフェンスの上から捕球して望みをつないだ。
そして9回裏日大三は二死後、代打・伊藤 翔が三塁打を放ったが、1番・渡辺凌矢が左飛に倒れ、試合が終わると、スタンドは歓声と同時にため息が入り混じった。
観客はなかなか球場を去らず、試合後に行われた両チームの記念撮影を見守り、撮影していた。
「両チームとも甲子園に行かせてあげたい」。そんな声が漏れるほど、中身が濃く、レベルの高い一戦であり、[stadium]神宮第二球場[/stadium]のフィナーレを飾るに相応しい試合であった。
(文=大島 裕史)
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