沖縄で着実に受け継がれる甲子園のDNA

　1999年、選抜高等学校野球大会で沖縄尚学高校が初優勝。その後、2008年に沖縄尚学高校が二度目のＶ。その僅か2年後の2010年、興南高校が史上6校目となる甲子園春夏連覇を達成。「沖縄の高校は強い」と、全国に知らしめた。

　改めて沖縄の高校野球が、どのように強さを増していったのか。県民悲願だった甲子園での優勝。
　一方で2015年以降、甲子園で勝てなくなった理由など。高校の先生たちの意見も載せつつ、沖縄県高校野球史を振り返ってみたいと思う。

　今回は沖縄水産の逆襲などについて紹介していく。

これまでの連載
◆野球後進県だった沖縄はいかにして強豪県に成長したのか？
◆
「沖縄強し」を印象づけた語り継がれるベストゲーム

沖縄水産　※写真はイメージ

　一方、県内では「打倒栽監督」を目指す機運が高まり、二人の名将が生まれる。まずは1993年、浦添商業高校を初めて[stadium]甲子園[/stadium]に出場させた盛根一美監督。そしてもう一人が那覇商業高校の神山昂監督（現KBC学園未来高校沖縄監督）。

　だが、人一倍負けず嫌いの栽監督が、このまま黙っているわけは無かった。

　新垣渚（ダイエー）、宮里康の二枚看板をはじめ、稲嶺誉（ダイエー）。そして大野倫同等かそれ以上の強打者大城直也ら「歴代最強メンバーが揃った」と言わしめた1997年の秋。県大会を圧倒的な強さで制した沖縄水産高校は、九州地区高校野球大会も制覇（翌年の春と合わせ県勢初となる九州大会の連覇を果たした）。

　　明治神宮大会では初戦8-3で仙台育英高校を撃破すると、準決勝の敦賀気比高校には14-3と大勝。県勢初の決勝に進むと、あの松坂大輔擁する横浜高校と対戦。

　7回までゼロに抑えられていたが、8回に松坂から3点を奪い準優勝。[stadium]甲子園[/stadium]で悲願の優勝を遂げるのはこのメンバー。誰もがそう思っていたが、現実は厳しく、聖地では思うような成績を残せなかった。

　1998年の秋、沖縄尚学高校が躍進する。比嘉寿光（広島）、荷川取秀明（松山聖陵監督）らを擁し県を制すると九州でも勝ち進み選抜高等学校野球大会の切符を手に入れる。

　初戦の比叡山高校戦を1-0の接戦でものにした沖縄尚学高校は、浜田高校、市川高校を撃破し勝ち進む。迎えた準決勝の相手は高校野球大横綱、大阪のPL学園。過去の沖縄球児たちに見えていた名前負けも、もう過去のものだった。

　左腕比嘉公也（現沖縄尚学高校監督）が延長を投げ抜く。追い付いてくるPL打線だったが、味方も譲らない。最後は比嘉公也自身のバットからタイムリーが飛び出す。これを比嘉公也が守り抜き延長12回の勝利。決勝の水戸商業高校戦では、右腕照屋正悟を立てた金城孝夫監督。そして遂に、県民悲願の[stadium]甲子園[/stadium]優勝が成し遂げられた。

　20世紀が終わりを迎えるこのときに、「沖縄強し」の思いが本当の意味で広がっていったのだと思う。

宜野座　※写真はイメージ

　21世紀に入り、沖縄の高校野球図がだいぶ変わってくる。その一歩目を踏みしめたのが奥濱正監督。北部の宜野座高校を全国に知らしめていったが、一番注目を集めたのが、誰も見たことがない「宜野座カーブ」だった。

　当然県内の各高校の打者も簡単には打てず、2000年の県秋季大会、宜野座高校は3回戦で沖縄水産高校を4-3で下すとそのまま秋の県大会を制する。

　九州地区高校野球大会では惜しくも準々決勝で敗退。だが、沖縄と宜野座高校にはまだ光が残っていた。

　「21世紀枠」が新設され、宜野座高校が選ばれたのだ。田名部和裕現日本高野連理事は、当時の頃を振り返って「宜野座高校がベスト4に進出したことで、21世紀枠を新設した意義も深まった。」と語った。

　ただの推薦枠で、弱々しいチームが[stadium]甲子園[/stadium]にいるのなら、他の強いチームに枠を与えた方がまし。そういう声が聞こえてきそうな21世紀枠という懸念は、日本高野連の中に正直あったと思う（当時2年は継続決定も、3年目以降は未定だったとのこと）。

　ちなみにベスト4の宜野座高校主将であった安富勇人氏は、現在那覇工業高校で野球部監督を務めている。2000年に那覇高校で甲子園に出場した高良耕平氏も現在、辺土名高校野球部監督。着実に[stadium]甲子園[/stadium]のDNAは、ここ沖縄で受け継がれている。

（文＝當山 雅通）

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