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かつて四国4商と言われていた時代が、高校野球の歴史を作っていた

2019.12.21

高知商、松山商を追いかけてきた徳島商

かつて四国4商と言われていた時代が、高校野球の歴史を作っていた | 高校野球ドットコム
チームを牽引してきた高松商・香川卓摩

 高校野球の前身となるのがかつて中等学校野球である。現在の高校生世代に当たる旧制中等学校と商業学校、工業学校などが出場していて、その第1回全国中等学校優勝野球大会(1915年)こそ現在の全国高校野球の原点である。

 その10年後にはセンバツの前身となる中等学校選抜野球大会も春に開催されることになる。その最初の優勝校が高松商だった。さらに翌年の選抜大会は高松商松山商という四国の2校で決勝が争われ松山商が優勝している。高松商はその年の夏に優勝を果たしている。そして高松商はその2年後にも優勝を果たすなど、その時代に全盛期を誇った。

 高松商松山商は昭和の中等野球~高校野球の時代に久しくライバルであり続けた。
 松山商は学校創立の1902(明治35)年に創部している。高松商の学校創立はそれより1年早く香川商として設立している。ただし創部は1909(明治42)年となっている。

 松山商が高松遠征してきて高松中と試合をしたことなどにも触発されたようだ。全国大会代表を決める四国大会には第1回大会から出場している。第2回大会には全国出場して関西学院に勝利して初勝利を挙げている。松山商は全国に登場するのは1933(大正8)年の第5回大会だが初戦で竜ケ崎中を下している。

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松山商

 ここから四国の雄として両校のライバル関係が続いていくことになる。
 1924(大正13)年の第1回選抜中等学校野球大会では高松商が優勝。さらに翌年は決勝で松山商高松商を下して優勝。その年の夏は高松商が優勝するなど、その実力はまさに当時の日本一を誇った。

 1927(昭和2)年夏(第13回大会)にも高松商が優勝している。松山商も1930(昭和5)年春、32年夏に準優勝。38年夏には全国優勝を果たす。

 この両校を追うようにして台頭してきたのが徳島商だ。
 徳島商の創部は高松商の翌年で四国大会には第1回大会から参加しているが、四国大会ではなかなか壁を破れなかった。1935(昭和10)年春に初出場。その2年後の春にはベスト4に進出して存在を示す。こうして戦前の中等野球時代は四国3商が競い合っていくことになる。

 徳島商は太平洋戦争の戦況悪化で甲子園大会が中止になった1942(昭和17)年の文部省主催となった全国大会で優勝しているという歴史も有している。そして戦後に復活した最初のセンバツとなった1947(昭和22)年春に全国優勝。これで、松山商高松商などに肩を並べる存在になっていったとも言えよう。

[page_break:野球後進県的にあった高知県から現れた高知商]

野球後進県的にあった高知県から現れた高知商

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高知商を牽引してきた田嶋 俊

 そして翌年、四国4県の中では野球後進県的な位置づけにあった高知県から高知商が春夏連続で初出場を果たす。さらに2度目の出場となった1950(昭和25)年春(第22回大会)に強力打線で準優勝。「黒潮打線」と称せられる勢いだった。こうして、四国4商が並び立っていくことになる。

 その後の昭和の高校野球史を見ていくと、53年夏に松山商が優勝。58年夏には徳島商が準優勝を果たすが、板東英二投手は大会通算83奪三振の記録を樹立。また、延長18回引き分け再試合の第一号適合試合となった魚津との3回戦では1試合25奪三振という怪記録も達成している。

 60年春には高松商が優勝。翌年春も準優勝。66年夏には松山商が準優勝。そして69年夏は伝説の決勝戦引き分け再試合を制した松山商が太田幸司投手を擁する三沢を下して優勝。78年夏には高知商が準優勝。そして2年後の80年春には悲願の初優勝。

 四国勢としては愛媛県では西条も全国優勝し、今治西新居浜商も台頭。香川県では高松商のライバル高松高松一、さらには坂出商なども実績を残している。徳島県では鳴門や徳島池田が一時代を形成したり、高知県では高知商に先立って高知が優勝したり、土佐が決勝進出を果たすなどもしていたが、歴史を眺めていくと、各県を代表する商業校がやはり県の球界を引っ張ってきていたということになる。

 自身も徳島商出身で、徳島池田で黄金時代を築いた故蔦文也監督は、「徳島商がおったけん、それを倒さなんだら甲子園へは行けんのじゃ。ほなけん、これだけ頑張って来られたんじゃ」というように、ライバルをリスペクトしていく姿勢を示していた。それだけ、その存在は大きかったということである。

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2011年以降、甲子園から遠のいている徳島商

 時代は平成に移り、高校野球の勢力構図も徐々に変化を遂げていく中で、1996(平成8)年に松山商熊本工と伝説の名勝負の末に優勝。松山商は2001(平成13)年夏にもベスト4に進出しているが、以降、甲子園には姿を現していない。21世紀になって最初の大会を最後に甲子園から遠ざかってしまった。

 徳島商はその10年後の2011年夏を最後に甲子園出場を果たしていない。
 その一方で、昨夏の2018年には高知商が12年ぶり23回目の出場で復活した。また、高松商は96年の春夏連続出場以降、久しく低迷していたが、2015年秋に明治神宮大会で優勝。

 さらに翌春のセンバツでは準優勝で見事に名門復活を果たした。そして2019年は春夏連続出場。平成最後の春と令和最初の夏の代表となっている。高松商は、大正~昭和~平成~令和と、4時代にまたがっての甲子園出場を果たしていることになる。

 高校野球新時代到来という中で、四国4商について述べながら、昭和の高校野球全盛期に思いを馳せるのもまた、高校野球の今の楽しみ方でもあるのだ。

文=手束 仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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