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専門種目外のスポーツを取り入れよう

2019.12.15

専門種目外のスポーツを取り入れよう | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 オフシーズンに入り、これから3月までは対外試合のない日々が続きます。体づくりや基本動作の習得のため、練習強度の高いものや何度も繰り返し行う「練習量」はある程度必要ですが、その程度を越えてしまうと慢性的なケガを誘発したり、オーバートレーニングに陥ってしまったりすることもあります。

 オフシーズンは積極的に体力強化を行う時期でもありますが、同じ体力強化を行うのであれば専門種目外のスポーツや動作などを行うクロストレーニングなども取り入れてみましょう。今回はクロストレーニングのメリットや代替となるスポーツなどについて紹介したいと思います。

アメリカと日本における学生スポーツのとらえ方

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複数種目を行うことによって、特定の部位への大きなストレスを避ける

 よく比較対象として取り上げられるアメリカと日本のスポーツですが、アメリカでの部活動はシーズンごとに分かれており、夏は野球、冬はアイスホッケー等、シーズンがかぶらなければ野球以外のスポーツと並行してプレーすることが可能です。

 複数のスポーツを経験することは繰り返し動作などによる慢性的なスポーツ障害のリスクを下げるという指摘もあり、アメリカでは多くの学生が複数のスポーツを経験しています。

 一方日本の部活動では一般的に一つの競技のみを年間通して行うことが多く、慢性的なスポーツ障害をどのように予防するかが課題となっています。

 野球は特に投球動作やバッティング動作などを繰り返し行うスポーツであるため、こうした繰り返される外力に負けない筋力や筋持久力、しなやかな動作を実現するための柔軟性などを高めて、体力レベルを向上させることを行っています。

違うスポーツや動作を行うことで体力向上をはかる

 クロストレーニングというのは、一般的には自分の専門種目以外の種目をトレーニングとして取り入れることをいいます。皆さんの場合は野球以外の種目をトレーニングとして取り入れるということになります。

 普段とは違った動きを行うことが多くなるため、普段あまり使っていない筋肉を使うことで筋力バランスを整えたり、運動神経に刺激が加わることで筋−神経のコーディネート能力が高まったりといったことが考えられます。

 また違ったスポーツをすることでリフレッシュをはかり、同じ動作の繰り返しによって「飽きてしまう」ことを避ける目的もあります。

《クロストレーニングのメリット》
・専門種目以外の動作を行うことで筋力バランスや筋−神経のコーディネート能力を改善する
・同じ動作を繰り返すこと(オーバーユース=使いすぎ)によるケガ予防
・同じ部位にかかる負担を軽減し、疲労回復をはかりながら基礎体力を維持する
・全身的なフィットネスレベルの維持向上
・普段とは違ったスポーツを行うことで「飽き」をなくす
・心理的な休息、気分転換、リフレッシュ効果
・天候や施設など外部環境などに対し、柔軟に対応することができる

[page_break:違うスポーツや動作を行うことで体力向上をはかる]
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ジャンプ動作は下肢のバネ能力を養う。チームで大縄跳びにチャレンジすることもオススメ

 チームとして取り組みやすいクロストレーニングをいくつかご紹介します。

【バドミントン】
投球フォームの確認としても利用されるバドミントンは、肘が肩の位置から下がった状態でスマッシュを打つことはむずかしく、正しい腕の振り方や肩甲骨の使い方などを体で覚えるために非常によいトレーニングと言えるでしょう。一度に大人数で行うことはむずかしいですが、投手やバッテリーといった少人数やペア、グループワークとしてのクロストレーニングとしては実施しやすく、楽しみながら野球の技術的な動作を習得することが期待できます。ただしバドミントンのシャトルは風に影響されやすいため、風の影響を受けない屋内(体育館など)で行うほうが望ましいと言えます。

【フライングディスク】
ウォームアップとしても活用できるスポーツです。フライングディスクを使ったアルティメッドという競技では、フィールドの端にそれぞれエンドゾーンを設けて、そこまでパスをつないで得点を競います。チームに分かれて行うようにすると、ディスクを追いかけながらランニングをすることになり、寒い時期でも体が温まりやすくなります。

【縄跳び】
個人で行うときは目線や姿勢に注意し、足首を固定した状態で跳ぶようにします。「ドスンドスン」という着地ではなく「トントン」とリズミカルに着地した足をすぐ地面から浮かせることで、足裏からアキレス腱、下腿部にかけてのバネ能力を養います。チームで行う時は大縄跳びを行っても楽しめると思います。ジャンプ動作を繰り返すため心拍数が上がってウォームアップ効果も期待できますし、何より楽しみながら基礎体力を向上させることにつながります。

 クロストレーニングを行う際は普段とは違った動きを行うため、十分にウォームアップを行ってから臨みましょう。紹介したものの他にも人数、場所、用具や施設などによって実施できるものは多くあると思います。心身のリフレッシュも兼ねて、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

【専門種目外のスポーツを取り入れよう】
●同一種目だけではなく複数種目を行うことがケガの予防にもつながる
●自分の専門種目以外の種目を取り入れることをクロストレーニングという
●クロストレーニングのメリットは筋力バランスの改善、神経−筋のコーディネート、スポーツ障害の予防など
●クロストレーニングをウォームアップとして使うこともできる
●バドミントンやフライングディスク、縄跳びなどは比較的取り組みやすい
●普段とは違った動きを伴うため、ウォームアップは入念に行うこと

(文=西村 典子

次回コラム公開は12月31日を予定しております。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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