将来性抜群の大型右腕・佐々木朗希(大船渡)の行き先はパ・リーグか?1位指名球団を予想!
10月17日に行われる2019年プロ野球ドラフト会議。星稜・奥川恭伸や明治大・森下暢仁らと並び、今年のドラフトの目玉の一人として注目されてるのが大船渡の佐々木朗希だ。最速163キロの未完の大器の交渉権を獲得するのはどの球団なのか。
春先までの高評価が急降下した最後の夏
佐々木朗希(大船渡)
ストレートが高校野球史上最速の163キロを計測した佐々木朗希(大船渡)が10月2日、プロ志望届を提出した。U-18の代表合宿の紅白戦で163キロを計測した4月6日、対戦した森敬斗(桐蔭学園)は「奥川くんも速かったが、スピードが違う」、紅林弘太郎(駿河総合)は「ほかの投手とはレベルが違う」、黒川史陽(智辯和歌山)は「自分の実力のなさを教えてくれる直球」とそれぞれコメントしている。
3人とも今年のドラフト候補で、森は上位指名が予想されている好打者だ。そういう選手が春先に言った言葉だと、まずはしっかりと認識したい。
夏の岩手大会4回戦の盛岡四戦では延長12回を7安打、2失点に抑え、ストレートの最速は160キロを計測した。このあたりまでの佐々木に対してマスコミは「12球団が1位で入札してもおかしくない」など高く評価したが、盛岡四戦で194球投げたことで、監督が肩・ヒジの故障を心配したのだろう、準々決勝を欠場し、準決勝の一関工戦は先発して完封(129球)するが、翌日の決勝、花巻東戦を欠場したあたりからネガティブな評判が目立ち始めた。
侍ジャパンの壮行試合、高校日本代表対大学日本代表戦では高校日本代表の先発マウンドに立ち、宇草孔基(法政大4年)を152キロのストレートでレフトフライ、小川龍成(国学院大3年)をフォークボールで空振りの三振、柳町達(慶応大4年)を152キロのストレートで空振りの三振に取り、このイニングの最高球速は小川に投じた3球目の156キロだった。ちなみに、宇草と柳町は今ドラフトの指名候補である。
試合前には2、3イニング投げると言われていたが1回を投げ終わって降板、期待感が大きかっただけに「あれ?」と思ったのも確か。韓国で行われたU―18ベースボールワールドカップでは奥川恭伸(星稜)と並んでエース級の働きが期待されたが、オープニングラウンドの5試合には登板せず、スーパーラウンドの韓国戦でようやく先発して、1イニング投げただけで降板、ここから評価は急降下した。
100%の完成度を求めないパ・リーグが獲得すると予想
U-18日本代表の佐々木
侍ジャパンの壮行試合、U-18W杯ともに1イニングしか投げられなかったのは右手中指に血豆ができたためだ。肩・ヒジの故障にくらべれば重大な故障ではないが、重要な局面での欠場や早い降板が続いたため、「精神的に鍛えられていない」と言われやすい状況が生まれたことも確か。私もそれに対しては「おっしゃる通り」と同感する。
しかし、そもそも高校生のピッチャーに対して100パーセントの完成度を求めることがおかしいと思う。 高校生は投手でも野手でも60パーセントくらいの完成度、つまり40パーセントの伸びしろを残してプロ入りするくらいでいいと思う。その60パーセントの完成度を見てスカウトはその選手の100パーセントになったときの姿を正しく予測すればいいのである。総じてマスコミは高校生に対して100パーセントの完成度を求め過ぎる。
さて、今年のドラフトだが、佐々木を1位で入札するのはパ・リーグの球団のほうが多いと思う。これまでのドラフトを見れば、選手に完成度を求めるのがセ・リーグのほうで、パ・リーグはダルビッシュ有、大谷翔平を単独指名しているように将来性を重視する傾向になる。それを前提にして、佐々木に1位入札する球団を予想してみよう。
セ・リーグ……巨人
パ・リーグ……ソフトバンク、日本ハム、楽天、ロッテ
ドラフトをセVSパで見れば、1球団でも多く入札したリーグのほうが交渉権を獲得することが多い。
18年藤原恭大(大阪桐蔭)………楽天、阪神、○ロッテ
小園海斗(報徳学園)………オリックス、DeNA、ソフトバンク、〇広島
根尾昂(大阪桐蔭)………○中日、日本ハム、巨人、ヤクルト
17年清宮幸太郎(早稲田実)……ロッテ、ヤクルト、○日本ハム、巨人、楽天、阪神、ソフトバンク
16年田中正義(創価大)…………ロッテ、○ソフトバンク、巨人、広島
そう考えると、佐々木の交渉権はパ・リーグの球団が獲得するとかなりの確率で予想できるのだ。最後に実力評価だが、私はこんなスケールの大きい高校生ピッチャーを見たのは初めてである。ストレートの速さ、スライダー、フォークボールの精度、さらに投球フォームにも気になる悪癖がなく、コントロールも安定している。どのような野球教育を経ればこういうピッチャーが誕生するのか、今はそれを一番知りたい。
(記事=小関 順二)