Column

夏3連覇が潰えた大阪桐蔭。それでも随所に大阪桐蔭らしさは見せた!

2019.07.26

 よく強豪校が負けるとなぜ負けたのか?という論調が行き交うが、惜しくも大阪大会準々決勝で敗れ甲子園を逃した大阪桐蔭金光大阪戦を振り返ると、秋の近畿大会と比べるとよくここまで成長したと実感させられる試合内容だった。

悔しさを糧にして強大なチームに

夏3連覇が潰えた大阪桐蔭。それでも随所に大阪桐蔭らしさは見せた! | 高校野球ドットコム
大阪桐蔭ナイン ※6月に行われた招待試合で撮影

 秋の近畿大会で敗れた智辯和歌山戦は3失策。相手を上回る9安打を放ちながらも2点しかとれなかった。そして中野波来主将は代打として右前安打を放ちながらも、牽制死でチャンスを潰した。中野自身、「本当に申し訳ないプレーをした」と振り返る。

 そしてオフの間では個々の能力を伸ばし、春の練習試合では猛打爆発。多くの本塁打が飛び出した。しかし春の大阪府大会では近大附戦に敗退。投手陣は集中打を浴び、打線は相手投手を打ち崩すことができなかった。プロ注目をされるような投手を打てなかったわけではない。中野は「狙い球を絞り切れない、気持ちの弱さ、技術の弱さが出た試合」と振り返る。

 そこから自分たちの課題である「接戦の弱さ」を克服するべく日々の練習、練習試合に臨んでいった。大会前、中野は「接戦をものにできない試合もありましたが、夏に近づくにつれて接戦を制する試合もありましたので、自信にしています」

 と接戦の戦い方に手ごたえを感じていた。

 敗れた金光大阪戦は随所にその強さが出ていた。まず9回裏、同点にされてからも一死二、三塁のピンチを招くが、遊ゴロを遊撃手・榎木貫太が冷静にさばいて二死にすると、つづく打者を打ち取り延長戦へ持ち込むと、12回裏は二死三塁、13回裏は一死二、三塁と絶体絶命のピンチを堅い守備で点を与えなかった。そして延長14回表、一死一、二塁。5番加藤巧也の場面で、エンドランを仕掛け、加藤は右前適時打を決め、ランナーも三塁に陥れると、つづく中野はスリーバントスクイズを決め、2点をもぎとった。

 タイブレークの場面で、エンドラン、スクイズのサインを出す西谷浩一監督もすごいが、それを実践した選手たちも素晴らしかった。惜しくもサヨナラ負けをしたものの、接戦時の攻撃内容、守備内容が格段に良くなっており、14イニングでわずか1失策。随所に大阪桐蔭らしさを見せていた。

 試合後、大阪桐蔭の選手たちが球場の外で保護者に挨拶。そして有友部長がこう話した。

「主将・中野、副主将・宮本をはじめよく怒られていたチームでしたが、最後は意地を見せてくれました。ナイスゲームでした」と語れば、西谷監督も「みんなの頑張りに報いてやれず申し訳ない気持ちです」と選手をかばった。

夏3連覇が潰えた大阪桐蔭。それでも随所に大阪桐蔭らしさは見せた! | 高校野球ドットコム
中野波来主将(大阪桐蔭) ※6月に行われた招待試合で撮影

 中野は涙を流しながら、後輩たちへメッセージを送った。

「この1年間、部員全員まとめる難しさ、伝える難しさがあり、本当に苦しい1年でした。この苦しかったことを後輩たちに伝えて、誰が主将になるかは分かりませんが、後輩たちにはしっかりと強い大阪桐蔭を築いてほしいです」

 春夏連覇した先輩と比較され、なかなか勝てず、苦しい期間を過ごした。それでも敗れた金光大阪戦は1年間の成果をしっかりと見せてくれた試合だっただろう。

 「まだこれからの人生が長い」と指導者陣が選手たちに声をかけたように敗れた3年生は素質のある選手が多く、これからが楽しみであり、そして負けをグラウンド、もしくはスタンドで見ていた1,2年生はこの悔しさをバネに強いチームになってほしい。悔しさを糧にして強大なチームになる。それが大阪桐蔭なのだ。

 

文・河嶋 宗一

夏3連覇が潰えた大阪桐蔭。それでも随所に大阪桐蔭らしさは見せた! | 高校野球ドットコム関連記事はこちらから
「3時間30分の死闘 金光大阪が大阪桐蔭より上回ったもの
金光大阪戦の詳しい試合経過

大阪桐蔭特集

6月17日12時 大阪桐蔭 野球部訪問【前編】「夏の全国連覇を目指して、大阪桐蔭の現在地」
6月18日12時 大阪桐蔭 野球部訪問【後編】「どんな結果でも日本一を追求しつづける毎日は変わりない」
6月19日12時 中野波来主将 インタビュー【前編】「偉大な先輩たちの背中を追ってきた下級生時代」
6月20日12時 中野波来主将 インタビュー【後編】「知られざる主将としての重圧。すべてを乗り越え、夏は大爆発を」
6月21日12時 宮本涼太選手 インタビュー【前編】 名門の道を歩んできた野球人生 転機となった台湾遠征
6月22日12時 宮本涼太選手 インタビュー【後編】 そして憧れる強打の二塁手へ 宮本涼太(大阪桐蔭)【後編】
6月23日12時 西野力矢選手 インタビュー 憧れは中田翔!2年生4番・西野力矢(大阪桐蔭)はチームの勝利の為に打ち続ける
6月24日12時 OB 青地斗舞選手(同志社大学)インタビュー【前編】 大阪桐蔭最強世代の2番になるまでの軌跡
6月25日12時 OB 青地斗舞選手(同志社大学)インタビュー【後編】史上初2度目の春夏連覇を達成の影に高校生活で最も厳しい練習があった
6月26日12時 OB 道端晃大選手(同志社大学)インタビュー【前編】 センバツ連覇で喜ぶ同級生たちをスタンドから見守った
6月27日12時 OB道端晃大選手(同志社大学)インタビュー【後編】「野球は高校野球だけじゃない」恩師の言葉を胸に
6月28日12時 OB 宮崎仁斗選手(立教大)インタビュー【前編】「自分の生きる道を考え続けた3年間 宮崎仁斗(大阪桐蔭-立教大)」
6月29日12時 OB 宮崎仁斗選手(立教大)インタビュー【後編】「自分の居場所を見つけて勝負ができれば、チームも強くなる 宮崎仁斗(大阪桐蔭-立教大)」
6月30日12時 OB 山田健太選手(立教大)インタビュー【前編】「甲子園で活躍するための練習、生活を送ってきた 山田健太(大阪桐蔭-立教大)」
7月1日12時 OB 山田健太選手(立教大)インタビュー【後編】「4年後はメンタリティも、技術もプロに進むのに相応しい選手へ 山田健太(大阪桐蔭-立教大)」

7月2日12時 OB 田中誠也選手(立教大)インタビュー【前編】「コントロールで生きる!自身のスタイルを確立させた大阪桐蔭時代 田中誠也(立教大)」


7月3日12時 OB 田中誠也選手(立教大)インタビュー【後編】「研究を重ねてどり着いた回転数の高いストレートと決め球・チェンジアップ」


7月13日12時 OB 中川卓也選手(早稲田大)インタビュー【前編】「今、振り返る濃密な1年間 「我が強い」チームとの向き合い方」


7月14日12時 OB 中川卓也選手(早稲田大)インタビュー【後編】「不屈の闘志を胸に 西谷野球の体現者、中川卓也という男」

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.13

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.05.13

【仙台六大学】“投手王国”にまたひとり…リーグ戦初登板初先発の東北福祉大・柴田由庵が史上15人目ノーヒットノーラン達成!

2024.05.14

【2024年春季地区大会最新状況】近畿大会、北信越大会、全道大会で出場校が決まる

2024.05.13

【首都大学】14季ぶりリーグ戦優勝の帝京大のエース左腕・榮 龍騰は「絶対にマウンドを譲りたくなかった」ストレートを軸にした投球で前回対戦の悔しさ晴らす11奪三振快投!

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.09

プロスカウトは190センチ超の大型投手、遊撃手、150キロ超右腕に熱視線!この春、浮上した逸材は?【ドラフト候補リスト・春季大会最新版】

2024.05.09

【熊本】九州学院は城北と文徳の勝者と対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.05.09

「指導者はどこにいる?」九里学園(山形)が 選手主体の”考える野球”で成果着々

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?