Interview

自分の居場所を見つけて勝負ができれば、チームも強くなる 宮崎仁斗(大阪桐蔭-立教大)【後編】

2019.06.22

 6月17日から大阪桐蔭特集がスタート!17日連続で記事を掲載していきます。大阪大会夏3連覇を狙う大阪桐蔭の選手たち、OBたちを取材し、大阪桐蔭の魅力をたっぷり伝えていきます。今回は1番打者として切り込み隊長を務め、打線に勢いを与え続けた立教大1年生・宮﨑仁斗選手です。

 自分と同級生を比較しながら、自分の生きる道を考え、見事にレギュラーを獲得した宮崎仁斗。後編ではあの名試合の内側に迫りつつ、立教大への進学についてや、将来の展望も語っていただいた。

 自分の生きる道を考え続けた3年間 宮崎仁斗(大阪桐蔭-立教大)【前編】

履正社戦は負けも覚悟した

自分の居場所を見つけて勝負ができれば、チームも強くなる 宮崎仁斗(大阪桐蔭-立教大)【後編】 | 高校野球ドットコム
練習中の宮崎仁斗(立教大)

 最後の夏までの約3ヶ月、大阪桐蔭ナインは尋常ではないプレッシャーの中で戦っていた。それは当然、宮崎も感じていた。
 「練習試合もそうですけど、自分を倒しに来るという気概が相手チームから感じられましたし、勝つ、負けるではなく、負けてはいけない気持ちはありました。ただ西谷先生から『力に変えろ』といわれていたので、それがしんどいと思うことはなかったです」

 夏は結果が求められる。宮崎は調子が上がらない日々もあったが、「良くないで終わったら、高校野球は負けて終わりです。調子が悪いことを口にも出さない、態度にも出さず、試合に臨みました。技術はこれまで培った来たものがあるので、最後は気持ちでできるようにやっていきました」

 宮崎の精神力の強さが発揮されたのが、北大阪大会・準決勝履正社戦だ。9回を迎えて点差は3対4と1点ビハインド。さらに二死。ここで打席に立ったのが宮崎だった。この場面で宮崎は四球を選んだ。焦りたくなるあの場面で冷静に四球を選ぶ宮崎を見て、鳥肌が立つ思いをした高校野球ファンは多いだろう。当の本人に聞くと、
 「自分が打席に立つまで、何アウトで打席に立つのかを想定していて、前の打者の場面で無死一塁になっていたので、自分に回ってくる場合、一死二塁か、ダブルプレーになって二死になるのはもちろん予想していました。
 二死になった瞬間、自分はやるしかないと思って打席に入りましたね。あの場面、四球を狙いにいったわけではなく、もちろんヒットを狙っていました。ただ、四球の前、とんでもないボールを空振りをしてしまったので、結果的に四球狙いにいった感じですね」

 宮崎は上位打線につなぐつもりだった。そして結果として押し出し四球から同点に追いつき、大阪桐蔭 山田健太の適時打で勝ち越しに成功し、激戦を制したのであった。この試合は1つのターニングポイントになったと振り返る。

 「あの試合、みんな、負けるかも思っていました。だからあの試合を乗り切ってから、甲子園優勝まで凄い早く感じましたね。1つのターニングポイントだったかなと思います」

 甲子園に入ると、宮崎の持ち味が発揮される。6試合で23打数10安打、5打点の大活躍。その要因は守備の安定感が活躍につながったと宮崎は振り返る。
 「それまで甲子園で良い結果が出ていなかったので、良かったです。最後だけというのは情けない限りですが、打撃面では積極的にいけたのが結果を残せた要因だと思います。
 積極的にいけたのは、守備が良くなったのが大きかったと思います。捕球、送球も確実性というところを求めていて、それができたので、気持ちの切り替えもうまくできて、打撃の結果も良かったと思います。自分の役割を果たした大会でした」

[page_break:それぞれが違う角度で勝負すれば、チームのためになる]

それぞれが違う角度で勝負すれば、チームのためになる

自分の居場所を見つけて勝負ができれば、チームも強くなる 宮崎仁斗(大阪桐蔭-立教大)【後編】 | 高校野球ドットコム
早稲田大戦での宮崎仁斗(立教大)

 そして決勝戦では金足農のエース・吉田輝星(北海道日本ハム)から本塁打を放った。
 「本当にあの本塁打は自分の実力ではなくて、データ班が分析して、真っ直ぐのタイミングはどう合わせればいいのか、配球も分析してくれたからこそ打てたものでした。とはいえ、あそこまで飛ぶものだと思っていなくて、本塁打は素直に嬉しかったです」

 そして史上初の二度目の春夏連覇を達成。連覇を達成した大阪桐蔭ナインは本当に戦いぶりにスキがなかった。ではなぜあんな戦いができたのか。なぜそれぞれの選手が持ち味を発揮できたのか。宮崎の答えはこうだ。
 「自分がうまくなるには、謙虚になることが大事だと思っていました。適当にやっていたらただ落ちるだけだと思っていましたし、僕は、他の人にはないことで自分にできることはないか?入学からそれをずっと考えて取り組んできました。気づいたら、ここまできた感じですね」

 また同期の根尾昂(中日)、藤原恭大(千葉ロッテ)の存在がその気持ちを強くさせた。
 「同じ土俵で勝負するのではなく、違う角度で勝負すれば、お互いが良い方向で行くと思いますし、チームのためになる。目立つ、目立たないではなく、僕はチームとして勝ちたかったので、そこを意識してやっていました」

 チームメイトと同じところで勝負するのではなく、自分の居場所を見つけ、勝負することでチームも強くなる事を考えたのだ。そういう選手が多くいるのが大阪桐蔭の強みだといえよう。

 そして卒業後、立教大へ進学。当時から憧れを持っていた東京六大学でのプレーとなった。
 「立教大はものすごいレベルが高い環境です。木製バットの対応にも時間がかかりましたし、今もまだ対応できたとはいえません。それでも先輩方に助けられながら、なんとかやり通す事ができていると思います」

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ポーズをとる宮崎仁斗(立教大)

 金属バットではヒットにできた打球も木製バットでは全く飛ばないことを痛感。1年春で35打数9安打、打率.257と、1年春の野手としては及第点と言える数字である。ただ宮崎は内容面がまだまだと口にする。
 「他の先輩たちとは打球の質が全然違いますし、レベルの違いを痛感しました」

 一方、宮崎が誇れる数字と胸を晴れるのが盗塁数だ。なんと春季リーグ最多の6盗塁を記録。
 「1番を打たせてもらって、自分ができる役割は盗塁です。監督さんからも積極的に走っていいといわれているので、積極的に走ろうと思いました」

 クイック、牽制、送球の技術が高まる大学野球に対抗するために工夫をした。
 「牽制球に引っかかる事が多かったので、一歩目を意識することから、安全に速く走ることを意識しています。リードを大きくとって、投手のモーションをよく見ていきます。自分より足が速い選手はいっぱいいますし、自分は考えてやらないと、盗塁ができないので、これからも考えてやっていきます」

 宮崎は高いレベルに対応するために、その都度、自分の課題を設定して、乗り越えていく強さがある。いずれは社会人、プロでプレーできる選手になりたいと目標に掲げる宮崎が目指す選手像とは。
 「これからは1年春の結果を超えて一歩ずつ成長していって、チームを代表する選手になりたいと思っています。自分かここからホームラン打者になることはないと思うんですけど、自分がイメージしている選手像は小さくまとまっているので、殻を破って一回り大きくなった姿を見せていきたいです。正確さをさらに高めつつ、力強さを兼ね備えた選手にならないと勝負ができないので、それは追求していきたいです」

 つなぎ役に徹することを考え、誰もが認めるいぶし銀タイプの選手へ成長した宮崎。少しずつ上積みを見せる宮崎ならば、数年後、もっと高いステージで勝負しているかもしれない。それができるだけの人間力、能力の高さが宮崎にはある。

文=河嶋 宗一

大阪桐蔭特集がスタート!!

 6月17日から大阪桐蔭特集がスタートしています。17日連続で記事を掲載していきます。大阪大会夏3連覇を狙う大阪桐蔭の選手たち、OBたちを取材し、大阪桐蔭の魅力をたっぷり伝えていきます。
6月17日12時 大阪桐蔭 野球部訪問【前編】「夏の全国連覇を目指して、大阪桐蔭の現在地」
6月18日12時 大阪桐蔭 野球部訪問【後編】「どんな結果でも日本一を追求しつづける毎日は変わりない」
6月19日12時 中野波来主将 インタビュー【前編】「偉大な先輩たちの背中を追ってきた下級生時代」
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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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