2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し13年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えしている寺下友徳氏のコラム「四国発」。
早いもので第50回を迎える今回は、6月8日(土)・9日(日)の両日行われた「香川県高等学校野球連盟招待試合」にやってきた[team]横浜[/team](神奈川)が伝えてくれたことを中心に、「野球の未来像」を探っていきます。
横浜高校が示した「強さ」だけでない部分
尽誠学園とのストラックアウト対決に勝利し心から喜ぶ横浜の選手たち
2019年6月8日(土)夕方。その瞬間、空は「YOKOHAMA」のユニフォームから突き出される人差し指で埋まりました。
もちろん、ここは同じ週末に柳沢 慎吾さんがナイジャー・モーガンさんらと共に観衆を大いに沸かせた[stadium]横浜スタジアム[/stadium]ではありません。これは香川県高松市の[stadium]レクザムスタジアム[/stadium]で行われた「香川県高等学校野球連盟招待試合」初日後に子どもたちを招いて行われた「キャッチボールイベント」最後に行われた尽誠学園とのストラックアウト対決に勝利した直後の出来事です。
大会では四国学院大香川西・尽誠学園・高松商、藤井を相手に51得点・47安打・14二塁打・4三塁打・7本塁打をマークした圧倒的な打力と147キロを連発したドラフト候補左腕・及川 雅貴(3年)を軸とした豊富な投手陣で4連勝を飾った彼らですが、こんなところにも勝負にこだわっていたのです。
ただ、彼らがこの2日間で示したのは「強さ」だけではありません。キャッチボールイベントでは「子どものころを思い出した」と振り返った及川投手や平田 徹監督をはじめ、子どもたちの目線に立って共に楽しむ姿が随所に。
また、常に逆方向を狙いながら甘いボールを一発で仕留める打撃に代表される技術力の高さ。「楽しく」が明らかに解るベンチの雰囲気とTPOをわきまえた礼儀。囲み会見で侍ジャパンU-18代表合宿で学んだことをそれぞれの言葉で明かしてくれた及川、左腕・松本 隆之介(2年)、主将の内海 貴斗(3年・二塁手)をはじめ、自己表現力も備わっていました。やや抽象的な表現になりますが彼らは単純に「カッコいい」のです。
松坂 大輔投手(中日ドラゴンズ)、筒香 嘉智外野手(横浜DeNAベイスターズ)をはじめ数多くのOBが活躍し高校野球を超えて世間の認知度も高い横浜高校野球部ですが、こんなところにも名門であり続ける一端を見たような感じがしました。
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未来の野球に望まれるのは「強く、正しく、カッコいい」
ストラックアウトを完璧にこなした子どもを抱き上げて祝福する横浜・平田徹監督
このような現象から私はもう1つ学習できたことがあります。それは「未来の野球像」について。ともするとこれまでは「勝利こそが全ての正義」という視点もあった部分は否めない高校野球ですが、現代はそれではとても世間の支持は得られない。
「強い」ことはもちろん、「正しく」、そして「カッコいい」。これが高校野球、しいては野球という競技が日本・世界において発展を続ける大きなポイントであると私は確信します。
6月17日(月)に愛媛県の全高校野球部監督が集い開催された愛媛県松山市の「にぎたつ会館」で開催された「第101回全国高等学校野球選手権愛媛大会打ち合わせ会」では、日本高等学校野球連盟主催の全国審判講習会に参加した杉長 祐樹審判員らから特にいわゆる「サイン盗みの禁止」について長い時間が割かれた「周知徹底事項」や、捕手はホームプレートの直後に位置し投球前にキャッチャーズボックスから出ない」などの「ルールに則ったプレイ=フェアプレイ」重点指導事項が示されましたが、野球界だけでなく世間から見ても「正しい」がその根底にあることは言うまでもありません。
これから高校野球を中心に野球と世間との距離が最も近づく夏。私自身も含め、すべての野球関係者は「強く、正しく、カッコいい」とは何かを常に頭において、日々の言動をしていくことが大事だと考えた最近でした。
(文・寺下 友徳)