本命・神村学園、対抗馬・鹿児島城西? 台風の目はどこか?【鹿児島大会展望】
<第101回 全国高等学校野球選手権 鹿児島大会 大会日程>
<トーナメント表>
本命か、それとも伏兵か?鹿児島の夏は波乱の予感
今春の県大会を制した神村学園
第101回全国高校野球選手権記念鹿児島大会の組合せが決まった。
3つの連合チームを含む78校70チームが7月7日から23日(雨天順延)まで、鹿児島市の[stadium]平和リース[/stadium]、[stadium]鴨池市民球場[/stadium]で熱戦を繰り広げ、101回目の夏の甲子園を目指す。今大会から投手の連投など球児の負担を軽減するために、準決勝前日に加えて決勝前日にも休養日が設けられた。これまで抽選会参加校による投票だったシード校も、昨秋、今春、NHK旗の3県大会の成績に基づくポイント制になった。
シード校は第1シードから順番に神村学園、鹿児島城西、尚志館、鹿児島情報、鹿児島実、枕崎、鹿屋中央、鹿児島商となった。投票制でも顔ぶれ、順番はおおむねこうなったであろうと思われるが、NHK旗で鹿児島実に勝って4強入りした樟南や昨秋、今春8強入りした武岡台などはポイントが足りずにシードから漏れた。樟南は鹿児島を代表する甲子園常連校であり、投票制なら下位シードに食い込んでいたかもしれない。
投票者の主観が入り込む余地がなくなり、シード予想やサプライズで挙がってくることはなくなった。一方でなぜこのチームがシードで、その順番なのか客観的に示す根拠ができたのは歓迎すべきことだろう。シードに入ろうが入るまいが、夏の甲子園に行けるのは1校のみ。相手がどこになろうと一喜一憂せず、負けない野球、勝てる野球を積み重ね、一番強いチームになる努力を怠らなかったチームが勝ち取る。
昨秋、今春と鹿児島大会を制し、県内負けなしを続けていた第1シード・神村学園が頭一つ抜けていた印象があったが、NHK旗準々決勝で鹿児島城西にサヨナラ負け。鹿児島城西は余勢を駆って大会を制した。有力な対抗馬としての実力をつけてきたことを印象づけた。
3つの県大会の戦績をみればこの2校が抜けている印象はあるが、夏は例年、大会を通じて急成長し「台風の目」となるチームが必ず出てくる。特に今年は例年に比べて計算のできる投手が全体的に少なく、戦前の予想が覆る可能性は大いにある。
大隅の雄・尚志館、鹿屋中央、連覇を目指す鹿児島実、2年生主体の鹿児島情報、公立校の意地をみせたい枕崎、鹿児島商、ノーシードから巻き返しを図る樟南、武岡台、鹿児島玉龍…台風の目になる可能性を秘めたチームはシードの有無に関係なく散見する。
「本命」がそのまま勝ち抜くか、「台風の目」がサプライズを起こすか、組み合わせを4つのパートに分けて展望を考えてみた。
4ブロックそれぞれの注目ポイント!
森口修矢(神村学園)と沖田龍之丞(鹿児島情報)
【神村学園―鹿児島商】
第1シード神村学園は選手層が厚い。リードオフマンの森口修矢(3年)をはじめ、スタンドに放り込める力のある打者がそろい、機動力も絡めてそつなく得点する打線は例年と変わらない力がある。
昨秋の県大会を無失策で勝ち抜いたように今年は特に「守り勝つ」(小田大介監督)野球に力を入れるが、九州大会、NHK旗は守備の乱れが敗因になっているのが気になるところ。田中瞬太郎(2年)、桑原秀侍(2年)、中川武海(2年)と投手陣の駒はそろっているが、核になるエースの台頭が2年ぶりの甲子園のカギになりそう。
初戦の薩南工をはじめ、NHK旗初戦で苦戦した鹿屋、シードクラスの力がある鹿児島川内などの対戦が予想され、序盤から気の抜けない戦いになる。古豪復活を目指す鹿児島商は春の県大会でみせた終盤の粘り強さが武器。5月以降主力選手の故障などが続き、万全の状態で大会に臨みたい。鹿児島中央―鹿屋、加世田―鹿児島大島は初戦の好カード。
【鹿児島実―鹿児島情報】
2年生中心の鹿児島情報、連覇を目指す鹿児島実、シード2校の力が抜けている。春は4回戦で尚志館に打ち負けた鹿児島情報だったがNHK旗で昨秋準優勝の鹿屋中央に競り勝ち、枕崎にコールド勝ちで4強入り。主砲・西山知宏ら力のある2年生が主力に名を連ねるが、左腕エース沖田龍之丞(3年)に復調の兆しが見えるのが好材料だ。
昨秋は4回戦で鹿児島城西に敗れた鹿児島実だったが、今春3回戦でリベンジ。昨夏を制したチームに比べて「経験不足」(宮下正一監督)を指摘されたチームが春準優勝、九州大会出場の経験を積んだ。2年生右腕・髙田隼之介が成長し、リードオフマン・山添倭茄主将(3年)、4番・吉木涼晴(3年)を軸とする打線も迫力が出てきた。
これを追う力を秘めるのは昨夏、神村学園に土をつけた加治木工、鹿屋工、国分中央あたりか。種子島―加治木工は初戦の好カードに挙げておく。
福重圭誇(尚志館)と小峯新陸(鹿児島城西)
【尚志館―枕崎】
ノーシードにも実力校がそろう激戦区。春4強、NHK旗準優勝の第3シード尚志館も序盤から気の抜けない戦いになりそう。尚志館は福重圭誇(3年)、窪田翔太(3年)、平安山亜門(3年)、是枝丈一郎(3年)と強打者がそろう打線は県下屈指の力がある。13年センバツ以来となる甲子園へのカギは「守り負けないこと」と鮎川隆憲監督。
昨秋、今春と結果を残せず、NHK旗4強入りを浮上のきっかけにしたい樟南や鹿児島工など、序盤からシードクラスの力を秘めた強豪との対戦が予想される中をどう勝ち上がっていくか。
第6シード枕崎は左腕エース・上野倖汰(3年)の復活がカギ。昨秋以降、故障でマウンドに上がっていない間、小湊晴矢主将(3年)らの継投でしのぎつつ、春、NHK旗8強の実績を積み上げた。看板の強力打線が健在のれいめい、昨夏4強入りして旋風を起こした鹿屋農なども虎視眈々と上位をうかがう。
【鹿屋中央―鹿児島城西】
第2シード鹿児島城西が春の県大会以降、急速に力をつけている。ファーストストライクから果敢に打ってくる打線は、火が付くと一気にビッグイニングを作る。優勝したNHK旗では先発・前野将輝(2年)、中継ぎ・松原文太(3年)、抑え・八方悠介(3年)の3投手による継投が勝ちパターンだった。夏にどのような投手起用をしてくるか不明だが、元プロ野球選手で就任2年目の佐々木誠監督の采配にも注目したい。
鹿屋中央は投手陣の整備がカギを握る。新有留優斗主将(3年)、柊木野太助(3年)、山本聖(2年)ら強打者、好打者のそろう打線は十分優勝を狙える力を秘めている。秋春連続で8強入りした武岡台は久保亮祐(3年)、下別府昂希主将(3年)のバッテリーがリーダーシップを発揮し公立ではトップクラスの実力校。鹿児島玉龍、鹿児島、徳之島、曽於なども台風の目になりそうな力は秘めている。
文=政 純一郎