甲子園10度出場の「YAOKO」 現代的マネジメントで躍進へ 府立八尾(大阪)【前編】
夏は南大阪大会8強、秋は16強と激戦区の大阪で公立の進学校ながら結果を残している大阪八尾。専用グラウンドがなく、完全下校が7時と決められた時間の中で成果を残したことを評価されて近畿地区の21世紀枠候補に選出された。甲子園の可能性が見えてきた大阪八尾はどんなチームなのか。今回はその真相に迫る。
多くのOBの声援を力に変え戦う
練習中、選手間でミーティングを開いて何かを確認中
大阪八尾は創部が1915年と100年以上の歴史を誇る伝統校だ。26年春に甲子園初出場すると、その後もコンスタントに甲子園に出場し、春夏合わせて10度出場。52年夏には準優勝に輝いていた。それ以外にも4度の4強入りと甲子園で抜群の強さを見せている。
学校の資料室には過去の栄光を示すものが多数展示されている。そんな伝統校だからこそOBの応援も熱心だ。就任6年目の長田貴史監督はこう語る。「公式戦になったら70代、80代のOBの方が応援に来て暖かく見守ってくれるので、凄くありがたいです」。多くのOBの声援を力に変えて彼らは戦っているのだ。
長田監督は大阪市出身の41歳。大手前高から筑波大に進み、大学では主将も務めた。大学卒業後は一般企業に就職したが、その後、科目等履修生として教員免許を取得し、講師を経て2006年から柏原東に赴任。同校で7年間監督を務めた後、2013年から大阪八尾の指揮を執っている。
長田監督が指導で重視しているのが選手の自主性を伸ばすことだ。「ある程度練習の流れはできたので、ステップアップする時に生徒の主体性が必要」と感じた長田監督は、昨年から練習メニューを選手たちに考えさせている。昼休みに主将が監督に練習メニューを伝えてそれを了承するという流れだ。
「どこまで成功しているかはわからないですけど、こちらが前に出ることは少なくなったと思います」と長田監督はその変化を語る。特に現主将の西浦謙太(2年)は長田監督が「彼がキャッチャーに行くかどうかでガラッと変わる。チームの雰囲気を変えられる選手」と話すように、捕手としても主将としても信頼が厚い。彼がプレー、言動の両面でチームを引っ張っているのが練習を見れば一目でわかるほどの存在感を見せている。
短い練習時間をプラスに考え夏8強
ノックを打つ長田貴史監督
大阪八尾のグラウンド自体は広いもののサッカー部、ラグビー部、陸上部、ソフトボール部などと兼用となっている。野球部が練習している後ろで陸上部が走っていることも日常茶飯事だ。さらに学校の規則で完全下校が7時と決められているため、平日の練習時間は3時間弱しか取ることができない。
決して恵まれている環境とは言えないが、長田監督は「下校時間が決まっていることをマイナスと捉えるのではなく、時間が決まっているからこそやり切れる環境であるのかなと思います」と決して悲観的に捉えていない。
昨夏は初戦で興国に5対4で勝利。興国は春に履正社を完封で下している強敵だったが、2回戦からの登場だった大阪八尾は興国の1回戦を見て対策をしっかりすることができた。初戦で接戦を勝ち切ったことで勢いに乗って8強進出。限られた時間でもやれるということを証明することができた。
前編はここまで。後編では、新チーム始まってからの取り組みやオフシーズンの意気込みに迫ります。後編もお楽しみに!(後編を読む)
(文・馬場遼)