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60年ぶり吉報はなるか?近畿地区代表候補で見えてきた到達レベル 府立八尾(大阪)【後編】

2019.01.24

 夏は南大阪大会8強、秋は16強と激戦区の大阪で公立の進学校ながら結果を残している大阪八尾。専用グラウンドがなく、完全下校が7時と決められた時間の中で成果を残したことを評価されて近畿地区の21世紀枠候補に選出された。甲子園の可能性が見えてきた大阪八尾はどんなチームなのか。後編ではチームの取り組みやオフシーズンの意気込みに迫る。

【前編】甲子園10度出場の「YAOKO」 現代的マネジメントで躍進へ 府立八尾(大阪)

打力と走力に力を入れ激戦区を勝ち進む

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ティーバッティング中の様子

 3年生に比べると打力が劣ると言われた新チームは、打撃練習に力を入れてきた。さらにチームで力を入れてきたのが走塁だ。西浦は新チーム結成当初のミーティングで「打力で去年より勝るのは難しいけど、得点力という部分で去年のチームを上回れる」と発言。足を使って得点力を挙げる方針を決めた。

 走塁に磨きをかけるという部分で実践しているのが、積極盗塁だ。「練習試合、公式戦問わずにいけるならいっていいよというサインで戦っていました。上に上がるにつれて盗塁数は減ったかもしれないですけど、積極的にどんどん走ってくれたなという思いはあります」(長田監督)と、基本的にグリーンライトの指示を出して果敢に次の塁を狙わせた。

 打撃練習に力を入れてきたこともあり、秋の大阪大会の頃には打力も向上。4回戦までの4試合で36点と高い得点力を誇った。5回戦の戦でも11得点を奪ったが、乱打戦の末に11対13で敗戦。秋は悪天候に見舞われることが多く、日程が大きくずれ込んだ。それにより3回戦から5回戦までは3連戦を強いられることになった。投手陣は継投策を執っていたので、疲労は少ないと長田監督は考えていたが、公式戦の重圧で疲労は普段以上に感じていたのだろう。5回戦は選手の動きが重く見えたという。

 秋の大会が終わってからはさらに思い切った策に出た。それが選手たちにサインを考えさせるということである。練習試合ではネクストに立つ選手が長田監督に「この場面になればこのサインを出してほしい」と伝え、指揮官がそれを実行する。当然、上手くいかないこともあったが、「徐々に合うことも増えてきましたし、色んな事を考えるいい練習になったかなと思います」と長田監督は一定の手応えを感じている。

[page_break:甲子園出場へ向けて準備しOBに感謝を伝える]

甲子園出場へ向けて準備しOBに感謝を伝える

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笑顔を見せる八尾の選手とマネージャー

 そうした中でチームに朗報が舞い込む。センバツの21世紀枠候補に近畿地区代表として選出されたのだ。一気に近づいた甲子園。彼らはこの現状をどう捉えているのか。長田監督はこう語る。「嬉しい半面、怖いなという部分もあります。このままでは20、30点差突くぞと発破をかけながらやっている状況です」。甲子園出場が現実味を帯びたことで危機感が芽生え、より引き締まった空気が生まれた。

 選手たちも浮足立っている様子はない。西浦は「嬉しい部分は全体的にありましたが、このままだったらボロボロに負けてしまうと思ったので『浮足立っている暇はない』という話をしました。近畿で選ばれてからはより高いレベルを意識して、細かい所まで気を配るようになりました」と甲子園を意識して練習に取り組むようになった。

 甲子園に出るからには恥ずかしい試合はできない。この冬はチームの底上げを目指して取り組んでいる。投手陣は右腕の藤澤丈(2年)と左腕の永井希翼(2年)の2人が軸となる。両者とも球速は130キロに満たないが、サイドスローから交わす投球で凡打の山を築くのが持ち味だ。

 野手では捕手の西浦に加えて守備の要である二塁手の瀧野翔太(2年)と遊撃手の藤井楓也(2年)が不動のレギュラーだが、それ以外は横一線だという。「1年生の頑張りがチームの底上げに繋がってくると思います」と、指揮官は下級生の台頭に期待している。

 甲子園出場に向けて着々と準備を進めている選手たち。もし選出されれば60年ぶりの復活となる。久しぶりの甲子園に向けて長田監督は「OBの方に一生懸命やっている姿を見せたいというのはありますね。ここまで来られたのも伝統が僕たちを押し上げてくれているからだと思いますので、恩返しとして頑張っている姿を見て頂けたらと思います」と歴代のOBに感謝の思いを伝える大会にするつもりだ。

 選ばれる可能性は9分の3。25日の出場校発表に全てが決まるが、「何かしたら選ばれるということはないので、今はとにかく選ばれたことを考えて質の高い練習を心掛けようという話をしています」(西浦)と選ばれることを信じて鍛錬を積んでいる。果たして60年ぶりに甲子園に返ってきた大阪八尾の姿をセンバツで見ることはできるだろうか。

(文・馬場遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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