叩き上げの習志野っ子・飯塚脩人(習志野)!習志野のエースに相応しい実力を身に付ける!
10年ぶりの選抜甲子園出場の可能性が高い習志野。昨秋の関東大会ではベスト4に導く活躍を見せたのがエース・飯塚脩人(2年)だ。右腕から最速145キロのストレートとキレのあるスライダーで勝負する速球派だが、入学当初の球速は120キロ台。そんな飯塚はどんな成長をたどってきたのか。
2人の先輩投手から学び140キロ右腕へ成長

桐蔭学園戦の飯塚 脩人(習志野)
今や千葉県を代表する速球派右腕へ成長した飯塚だが、千葉県のエリートが集まる習志野の中でも経歴は地味な方。小学2年生から野球をはじめ、軟式・大久保ゼロックスに所属。習志野第二中ではエースを志していたものの、2番手、3番手という立ち位置にとどまり、外野手として試合に出場していた。
自分の立ち位置からすれば、習志野で活躍できるか分からない。それでも地元・習志野に行きたい思いは強かった。
名門をたたくと、周囲のレベルの違いに驚く。
「軟式上がりでしたので、先輩や同い年の硬式出身の投手や打者を見ているとパワーが違うと思いました」
それでも投手として負けたくない気持ちはあった。まず80キロと太り気味だった体重を落とすためにひたすらランニングを行い、1年秋には67キロまで落とした。球速は120キロ中盤と速くなかった。飯塚の投球フォームは強い上半身を生すところが特徴的だが、入学当初は「立ち投げで上半身投げで今よりもひどかったです」といえば、小林徹監督は「めちゃくちゃでした」と苦笑いする。
飯塚の成長に欠かせなかったのが3年生投手の古谷拓郎(千葉ロッテ)、佐藤将聖の存在だ。
しなやかなフォームでキレのある140キロ台のストレートを投げる古谷からは「とにかくフォームが素晴らしい方なので、フォームは一から教わりましたし、コントロールも学びました」
また冬場のトレーニングでは「ブレが少ない体の軸を作ることと、下半身強化を中心に行ってきました」と、投球の基礎となるフォームと体力づくりを行ってきた。
そして制球力、変化球の精度、クイック、フィールディングと投手としての技術が優れている好投手だった佐藤からは「変化球の投げ方や大切さ、頭を使ってピッチングをすることを学びました」と両先輩の強みを学びながら、実力を身に着けた飯塚は2年春にベンチ入り。
「入れていただきました」というが、それでも春の県大会では常時130キロ後半・最速142キロを計測。一躍、県内屈指の速球派右腕へ成長する。ベンチ入りしたことでこれまでにない経験を味わえた。それは強豪校からの洗礼である。
県大会決勝では木更津総合、関東大会では日大三相手に先発した。
「木更津総合は強かったです。今まで対戦した打者よりも個々のスキルが高くて実力で負けたという感じでした。抑えるためにフォークも投げたんですけど、それも捉えますし、力負けしました。また日大三戦は調子自体は良かったのですが、打者のレベルが一枚も二枚も上手でしたね」
今の結果に見合う投手になれ

飯塚 脩人(習志野)
夏の大会まで普段の練習・練習試合では強豪校を抑えることを想定しながら練習を重ねた。そして夏の大会では初登板となった佐倉戦では「緊張した」と振り返るが、その後2試合では計14回を投げて、3失点の好投を見せる。
自信を深めた飯塚は2年秋は抑えという立場でスタンバイ。常に緊迫した場面の登板が続いたが、これまでの経験を生かして並み居る強豪を破っていく。関東大会1回戦では桐生第一戦では6回裏から登板し、延長14回まで投げ切り、被安打4、無失点の好投を見せた。
この好投には小林監督も「あのゲームは栄養価が高い試合でした。乗り越えたことで、個人としても、チームとしても大きい試合だったかなと思います」とたたえた。さらには準々決勝の東海大甲府戦は2回3奪三振無失点の好投。準決勝の桐蔭学園戦では3.2回を投げて2失点したが、6奪三振と意地を見せ、関東大会では計3試合で14.2回を投げ、17奪三振、2失点と関東大会でも実力を発揮した。
冬場では自身の目標を設定し、「勝負所で三振を奪える投手になりたい」と決めた飯塚は、「選抜出場が実現して、150キロは出せればと思います」と速球派としてのこだわりを見せた。小林監督はさらに努力することを求めている。
「今の実力は、出している結果に見合っている投手と聞かれたら全然まだまだです。後付けでもいいからそれに見合う投手になればよいと思います。中学時代から一流だった強豪校の投手と比べて、彼は地元の中学軟式で3番手投手としてスタートしたんですから、なおさらですよね。自分で工夫して、良いものはマネして取り組んでもらえばと思います」
関東大会ベスト4という結果に満足するな。貪欲に取り組み、全国レベルの投手になれ。取材日では投球練習中、小林監督から熱心に指導を受ける姿があった。
甲子園出場・甲子園勝利は2011年夏以来、遠ざかっている。たたき上げの習志野っ子が甲子園1勝を呼び込んでみせる。
文=河嶋宗一