3年ぶりの四国大会優勝を果たし、公立校唯一の神宮大会出場の高松商。そのエースは香川 卓摩である。左腕から投げ込む最速141キロのストレート、多彩な変化球を武器に、7試合6先発で48回を投げ被安打41・奪三振50・防御率2.06と好成績を残した。そんな香川の投球、人柄を見ると、想像以上に興味深い投手であることが分かった。
全国レベルの打線と対戦したことは大きな収穫
エース・香川 卓摩(高松商)
165センチ62キロと、投手としてはそれほど大きくない。マックスは141キロで普段は135キロ前後と速くない。突出としたそれでも四国大会で勝てた理由はどこにあったのか。神宮大会で香川のピッチングを見たり、香川へ取材を進めていくと、その理由が分かる。
まず八戸学院光星戦。投げていくうちに、打線が変化球に狙いを絞っていることが分かった。
「打たれていくうちに変化球を絞っているのが分かりました」
一転してストレート中心の配球に切り替えた。ストレートで押したり、相手がストレートを狙っていることに勘づいて、変化球で交わしたりと、感性を働かして6回4失点の力投を見せた。打者の動き、反応を見て自分なりに配球を組み立てて勝負ができるのが香川なのだ。
そして星稜打線についてはこんな印象を持っていた。「八戸学院光星の打者は一球、一球をしっかりと振っていて、隙の無い打線だと感じました。星稜打線はブンブン振っていくのですが、変化球を低めに集めていけば打ち取りやすさは感じました」
ストレート、スライダー、カーブ、チェンジアップを交えながらピッチングを展開する。ただ悔やむは力みすぎて、思い通りのコントロールができなかったこと。6回裏、奥川恭伸に適時二塁打を打たれ、8回裏にも奥川にも適時打を浴びた。ただ奥川との対決は楽しんだ。相手の考え、動きを読むために表情を見ながら配球を考えるという香川。奥川を見ると、なぜか笑っていた。
「奥川君は勝負を楽しんでいるかなと思いました。実際に僕も楽しかったです。彼に対してはリーチが長いので内角を攻めるか、高めが弱いので外角高め。しかし力んで彼の腕が届くところに投げてしまって、とても悔しいです」
しかし八戸学院光星、星稜と全国レベルの打線を対戦したことで何が通用するのか、しないのかを感じていたようだ。
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参考にする投手、参考にするスキルも具体的
香川 卓摩(高松商)
香川の話を聞くと、どんどん自分の考えを話すことができて、とても賢さを感じるが、「学校の成績はあんまりよくないんです…。だけど、野球は好きで、野球のことは考えられますし、野球の本もよく読みます」
レベルアップに貪欲な香川。参考にする投手も自分のタイプにあった投手を参考にする。多くの選手の名前を挙げてくれたが、アマチュア野球の選手では日本選手権準優勝のJFE西日本の河野竜生、関西国際大の武次春哉を参考にしているようだ。河野は174センチ75キロと上背はそれほど大きくないが、常時140キロ台の速球と切れのある変化球で勝負する速球派。武次は165センチの小柄から140キロ中盤の勢いある速球とカットボールを武器に神宮大会4強まで勝ち進んだ実践派左腕だ。2人の投球は香川のお手本となっている。
「河野さんは中学生のころ、甲子園のピッチングを見たとき、体が小さくても本当に速いボールを投げていましたし、投球スタイルも参考になるものばかりです。武次さんについては、高校の先輩である石田(啓介)さんから話は聞いていて、映像でも見るのですが、武次さんのピッチングは体が小さくても勝負できる投球は参考になります」
高松商は野球ノートをとるが、その内容はピッチング、チームに関することなど多岐にわたる。「2年生になって、自分のことだけではなく、チームのことを考えるようになりました」とエースとしての自覚も出てきている。
自身が課題とするのはスタミナ、ストレートの力強さだ。
「今、速球の最速は141キロなんですけど、最速は145キロ。常時141キロ~143キロは、来春~来夏までには出せるようになりたいです」
四国地区屈指の好左腕から全国屈指の左腕へ。研究心旺盛な香川は来春、どんな姿を見せてくれるのか、楽しみである。
取材=河嶋 宗一