試合当日のトラブルに対応する
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
早い地域ではすでに夏の地方大会が始まっています。三年生の皆さんにとってはこの大会が最後の公式戦ですね。今まで積み上げてきたものが、試合という大舞台で十二分に発揮できるよう、準備して臨んでもらいたいと思います。さて今回はそうした試合当日に思わぬアクシデントに見舞われたときの対応について、確認しておきましょう。
試合当日のトラブル 腹痛、発熱
筋温が上昇すると自然と体温も上昇する。こまめな水分補給を適切な冷却を忘れずに。
【試合当日にお腹が痛くなったら…】
前回の「ベストコンディションをもたらす試合前日の過ごし方」でも書きましたが、試合前日の食事は当日のコンディションに大きく影響します。特に胃腸に負担をかけないよう、脂質が多く消化に時間のかかるものや、お刺身やお寿司などの生もの、食物繊維を多く含む根菜類、普段食べ慣れていないものについては、なるべく控えるようにします。それでも当日お腹の調子が悪くなってしまうケースがあります。食べすぎ、冷たいものの摂り過ぎなど消化不良が原因と考えられるものや、食べ物にあたってしまった食中毒、試合前のストレスなどによっても腹痛を起こすことがあります。
もし試合前に下痢や腹痛が起こってしまったら、まずはあせらずトイレで用を済ませ、痛みがおさまったところでお腹を冷やさないように温かい飲み物をとるようにしましょう。お腹をくだしてしまうと脱水症状を引き起こします。水分をとって「またお腹が痛くなったら…」という不安はあると思いますが、少しずつこまめに水分をとりながら様子をみましょう。冷たい飲み物や炭酸飲料などは胃腸を刺激しやすいので避けるようにします。
【発熱したかもしれない…】
試合当日になって体調が優れないときがあるかもしれません。わかりやすい発熱のサインとしてはのどの痛みや、関節の痛み、悪寒、体のほてりや熱感などが挙げられます。体を動かすと体温はさらに上がるため、ムリをしないことがまず優先されます。発熱した状態が続き、さらに灼熱の炎天下でプレーをするとさらにコンディションを崩す可能性が高くなるからです。その上でこまめな水分補給、氷や保冷剤などを利用して首の後ろや脇の下などを冷やすようにすると、体温の急上昇をおさえることができます。また発熱時はビタミンCをいつも以上に消耗するので、ビタミンCを含んだ果物や水分なども積極的にとるようにしましょう。
試合当日のトラブル 爪が割れた時と足がつった時
つけ爪の方法を覚えておくといざという時に役立つ
【爪が割れてしまったとき】
試合当日になって爪が割れてしまった…という経験がある選手もいるでしょう。普段から爪のケアを怠らないようにすることはもちろんですが、アクシデントなどで爪が割れてしまうこともあります。そういう時はつけ爪をつくって応急処置を行いましょう。伸縮性のあるキネシオテープなどを爪の形にカットし、その上から液体絆創膏(もしくはマニキュア)を使ってテープの上から塗り込みます。しばらくそのままにしているとキネシオテープが硬くなってつけ爪のような状態となり、違和感なく投球動作を行うことができるようになります。液体絆創膏を何度か繰り返し塗り込むと、つけ爪の強度があがり、数日間はそのままプレーすることが出来ます。爪をとる場合はクレンジングオイルなどを使って柔らかくし、入浴時などにお湯につけるとはがれやすくなります。ムリヤリはがそうとすると爪の表面を傷めてしまうので注意しましょう。
【試合後半に足がつったとき】
「足がつる」という状態は、足の筋肉が不意に細かく収縮・けいれんを起こす状態のことを指します。運動中や運動後に起こることが多いのですが、特に試合後半は筋疲労、水分・ミネラル分不足などからよく見られるようになります。足がつってしまったときは、あわてずゆっくりと息を吐きながらストレッチを行うようにしましょう。一人で行うことがむずかしい場合は誰かに手伝ってもらってパートナーストレッチを行います。筋肉を軽くさすったりほぐしたりすることや温めることも効果的です。ケガをした際の多くは氷などで患部を冷やすRICE処置を行いますが、足がつった場合などの一時的な筋けいれんは、局所の血流不足を改善させるために冷やすのではなく温める、固定ではなくより積極的に動かすことで、血流を増やすようにします。
ただし、筋けいれんが長く続くと筋肉の肉離れを起こす場合があります。ストレッチをしたり、温めてほぐしたりしても痛みが変わらない、痛みが増す場合はプレーをやめてRICE処置を行う必要があります。
当日のアクシデントがないに超したことはありませんが、いざという時のためにも対応方法などを覚えておきましょう。
次回コラム公開は7月15日を予定しております。
(文=西村 典子)