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千葉明徳(千葉) 先輩たち超え、初の甲子園へ

2018.05.27

 大阪桐蔭(大阪)が連覇を遂げたセンバツも終わり、いよいよ高校野球は第100回記念大会の夏へ。大会最多56校が出場する中、実力校がひしめく千葉県は第80回・第90回に続き、東千葉地区・西千葉地区それぞれ1校ずつが甲子園出場権を得る。

 そんな東千葉地区のうち、他校からも一目置かれる存在が千葉県千葉市にある千葉明徳。甲子園経験こそないものの、過去に2009年春・2015年秋に関東大会出場。昨夏もベスト16入り。さらに昨年秋には右腕・鈴木 康平(登録名・K‐鈴木、国際武道大~日立製作所)がオリックス・バファローズから同校出身初となるドラフト2位指名を受けた。

 では、そんな千葉明徳は現在、どんな課題をもって練習に取り組んでいるのだろうか?岡野監督や主力選手たちから話を聴いた。

「2015~2016年型」への主将2人制導入

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ストレッチ中の千葉明徳野球部

 昨秋は千葉県大会初戦で、市立船橋相手に中盤の大量失点が響き2対9で7回コールド負けを喫した千葉明徳。しかし、春を迎えた岡野 賢太郎監督の表情には悲壮感は見られない。というのも現チームの成長曲線は、過去のチームも辿ってきたものだからだ。

 「前チームは菅井 紀美靖(捕手・国際武道大1年)をはじめ、3年生のポテンシャルが高くて、1番から9番まで本塁打が打てるチーム。逆に2015~2016年は絶対的な力がなくても、公式戦で力を出せる選手たちがいました。そして現チームは秋までは選手個人に突出した実力はなく、公式戦で力を発揮できる精神的な強さもまだなく、全体的に課題が多いチームなんです。
 彼らは先輩を間近で見ているからどうしても長打を追いかけてしまいますが、でも野球で勝つ方法はそれだけではない。2016年の選手たちは微妙な変化を見抜く観察力の高さがあったので、試合運びはうまかったですし、自分たちで考えて行動できる力もありました。今年の選手たちはそういうところを勉強しながら実力を付けてほしいと伝えています」

 もちろん、具体的な施策も怠りはない。千葉明徳が今回、導入しているのは高沼 良樹(3年)と内藤 駿平(3年)による「2人主将制」。「1人の目ではなく、2人の目を通じてチームを引っ張る方針から始まりました。内外野の連携、バッテリー間の連携だったり、その中で主将が2人いるのはチームを作る上で良い制度だと感じている」と概要を説明してくれた内藤がチームを優しく励まし、高沼がより具体的に練習方法や試合でのアプローチを指示する。
「私が選手たちのミーティングに入ることは少ない」と岡野監督が話すように、この冬は細かい連携プレー、バント練習、1日1000スイングを目標にした打撃強化ノルマに加え、「自主性の強化」にも重点をおいてきた。

[page_break課題を刻み、向かった春の戦い]

課題を刻み、向かった春の戦い

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最速138キロの右エース・宮崎 宏哉

 では、選手たちは個々にどのような課題を刻み、春への準備を進めてきたのか?まずは最速138キロの右腕エース・宮崎 宏哉(3年)。彼は強豪校が相手になると、打ち込まれてしまうケースがあった昨秋を踏まえ、課題をこう語る。
「僕は立ち上がりが良くないので勢いを大事にしてやっていました。ただ、最初はうまくいくんですが、強豪校は中盤以降にしっかりととらえられる。ですので、制球力と終盤まで投げ抜くスタミナ、投球術を身に付けていきたい」

 よって冬場はトレーニングだけではなく、タブレットでの動画撮影を通じ、下半身・体重移動の動きを見直す作業にも着手。「目指すのは最速145キロ。常時140キロ台のストレートも投げられるようになれば、ピッチングの幅は変わってくると思います」と、エースとしての自覚を見せる。

 秋からクリーンアップを打つようになった183センチ85キロの右打ち強肩捕手・福井 玲央(2年)の場合はどうだろうか?彼はスローイングタイム2秒台を切る二塁送球ゆえの課題に目を向けている。
「自分の肩に頼りすぎて送球が乱れてしまう。スローイングの安定感もまだまだですし、打撃も確実性が課題です。春は打撃、守備の技術を鍛えて正捕手として活躍したい。2学年上の菅井 紀美靖さんを超える正捕手となり、いずれは中村 奨成(現・広島東洋カープ)さんのような強打の捕手になりたいです」と、高い目標を設定し、冬を過ごしてきた。

 また、藤井 颯生(3年)と共に打線の中心を張る左の好打者・清水 健斗(3年・中堅手)は「力強さを身に付けて長打を打てるようになりたい」とパワーアップを目指してきた。そして、千葉明徳が浮上する上で絶対に欠かせない存在は……。主将の内藤である。

[page_break「浮上条件」整え、夏の東千葉制覇へ]

「浮上条件」整え、夏の東千葉制覇へ

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2人主将の1人内藤 駿平

 

 実は新チーム当初、内藤は「4番・エース」候補の筆頭格にあった。しかし大会前のケガにより秋は打者専念。ただ、岡野監督は夏の東千葉大会へ向け、内藤の投手起用を視野に入れている。
「130キロ以上のボールも投げられますし、打撃でも長打力もあって勝負強い。内藤が投打で活躍するようになれば、このチームはもっといけると思います」

 実は2人主将の1人に内藤を指名したのもそれゆえ。「みんなの信頼が厚いから主将にしたんです。優しすぎる欠点はありますが、言葉でも、行動でも引っ張り、チームを引き締める存在になってほしい」。そんな指揮官の期待に対し、内藤は「絶対にケガを治して、エースの宮崎を助けられる存在になりたいですし、打者としても活躍して、チームに貢献していきたい」と意気込んでいる。

 かくして昨秋千葉県大会優勝の拓大紅陵、同じくベスト4の木更津総合、ベスト8の東海大市原望洋と強豪が多くそろう夏の東千葉大会へ向け、「王者と呼ばれるチームに勝つことを考えて練習に取り組んだ成果を、シード権確保・関東大会出場で示したい」(岡野監督)と臨んだ春の千葉県大会。

 地区予選代表決定戦で強豪・敬愛学園を破り県大会出場を決め、県大会1回戦では実力校・多古との接戦を8対7で制した千葉明徳であったが、2回戦では拓大紅陵に1対5で敗戦。新たな「浮上条件」を得てノーシードの夏に挑むことになった。

 これで覚悟は決まった。主将・内藤&高沼を中心とした男たちは、「浮上条件」を整え、すべてのリミッターを外し、過去の先輩たちを超える力を発揮して、初の甲子園出場へと突っ走る。

(文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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