準決勝を迎える春季東京都大会!試合に先がけ見どころをチェック!
注目の伝統校対決!カギを握る好調の日大三・中村、早稲田実・野村
両校のキーマン野村大樹選手(早稲田実業)と中村奎太選手(日大三)
高校野球の枠を超えて、社会的な関心を集めた早稲田実・日大三のナイター決勝から1年。両雄が今度は準決勝で相まみえる。
今年は早稲田実に清宮幸太郎(日本ハム)、日大三に櫻井周斗(DeNA)、金成麗生(トヨタ自動車)らがいた昨年に比べると小粒の印象もあるが、戦力の質は、勝るとも劣らない。
日大三はセンバツの後、都大会初戦の都立文京戦で苦戦するなど、序盤はぱっとしなかったが、徐々にエンジンがかかってきた。チームの活力源となっているのが、二刀流の中村奎太。4回戦、準々決勝では12回投げて失点は1。打つ方でも2試合連続で本塁打を放っている。それに1番の金子凌は、同じく4回戦、準々決勝の2試合で、6打数5安打と当たっている。3回戦以後、4番の大塚晃平に長打がないのが気になるが、どこからでも得点ができるのが強みだ。
ただし今までは力の差があるチームとの対戦であった。早稲田実戦は、真価が問われる一戦になる。
早稲田実は、準々決勝で関東一を破り勢いに乗る。野村大樹の特大の一発に続き、生沼弥真人、野田優人が本塁打を放つ。投げては雪山幹太が6回を被安打5、奪三振7、自責点2と好投。池田徹が3回を自責点0に抑えた。
この大会では1番・茅野真太郎、9番・江本達彦らの打撃も好調。投手陣は雪山を軸に池田、左の石井豪、赤嶺大哉と充実している。
清宮が抜けて、小粒になった感はあるものの、投打ともに選手の層は厚くなっている。清宮、野村さえマークすればという感じがあった昨年のチームより、相手チームとしては、むしろ対策が立てにくいのではないか。
とはいえ、主将で4番の野村が打つとチームが勢いづくだけに、早稲田実のキーマンは野村になるのではないか。それに雪山にとっても、投手としての正念場だ。
夏の前哨戦でもあるこの一戦。互いに探り合いの部分もあるだろうが、注目度が高い伝統の一戦だけに、好ゲームを期待したい。
[page_break:勢いに乗る両チーム。創価・菊地、国士舘・赤川の江戸川中央シニア対決も注目]勢いに乗る両チーム。創価・菊地、国士舘・赤川の江戸川中央シニア対決も注目
江戸川中央シニア対決となった赤川輝選手(国士館)と菊地郁也選手(創価)
準々決勝では東海大菅生を破った国士舘、帝京を破った創価の対決も興味深い。
特に創価は、帝京相手にあわやコールドという圧勝だった。2年前の夏、菊地郁也、浪川広之、藤井隼、門脇誠の4人の1年生を擁して西東京大会の4強に進出した時、創価時代の幕開けを予感させたが、その後は、結果を出せないでいた。
彼らが3年生になったこの春は、眠れる獅子が目を覚ました感じだ。特にエースで4番の菊地は、投げる方では制球が安定し、ブレがなくなってきた。
上位を打つ経験豊富な4人に引っ張られる形で、捕手で8番打者の若林裕司ら下位打線も活躍。攻撃に厚みが出てきた。
国士舘は石井崚太、井田尚吾、草薙柊太の3人の左腕の存在が大きい。準々決勝の東海大菅生戦では、先発の井田は不調であったが、石井がロングリリーフをし、草薙が最後の1回を締めるといったように、実力のある投手が、相互に補い合いながら試合を作っている。
打線も3番・倉田和明、4番・門間大樹を中心に上位下位、切れ目がなく、ベテラン・永田昌弘監督の指導の下、相手の隙を突く走塁にも磨きがかかっている。
また3人の左腕をリードし、打順は下位ながら攻撃面でも活躍している赤川輝は、創価のエースで4番の菊地郁也とは、江戸川中央シニアのチームメイトだった。互いをよく知る2人の対決も注目だ。
春季都大会の4強が、全て西東京勢になるのは、2006年以来12年ぶりだ。投手力、守備力、打力のどれをとっても、1人、2人に依存しない、バランスのいいチームが残った。準決勝に勝てば、関東大会出場が決まる。強豪校と公式戦で戦う関東大会は、選手にとって貴重な経験になる。夏の大会を意識しながらも、準決勝らしい緊張感のある試合を期待したい。
文=大島 裕史