試合レポート

静岡vs駒大苫小牧

2018.03.24

全力疾走の徹底と自我を抑えた打撃を徹底する静岡高

静岡vs駒大苫小牧 | 高校野球ドットコム
2打席連続で三塁打を打つ齋藤來音(静岡)

 真っ先に紹介したいのは静岡の全力疾走だ。私が俊足の目安にしているのは打者走者の「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」というタイム。これを私のストップウォッチがクリアしたのは駒大苫小牧の0人に対して静岡は5人7回。クリアしたのは村松開人(3年)、齋藤來音3回(2年)、加茂翔太(3年)、黒岩陽介(3年)、山本貫太(3年)の面々。

 3点が入った3回裏は2死一塁の場面で黒岩が三塁安打を打ち一、二塁、さらに3番齋藤の左中間を破る三塁打で二者が生還、4番成瀬和人(3年)もセンター前に運んで齋藤が生還して3点目。斎藤の三塁打は私には二塁打の打球に見え、二塁到達でストップボタンを押してしまったが、このときのタイムが8.19秒。前を行く黒岩を見ながらの走塁だったので二塁ベース近くでスピードを緩めていたが、走者がいなかったら11秒台前半で三塁に到達していたと思う。

 5回の3点を奪ったシーンは俊足がより際立った。先頭の山本が二塁内野安打(一塁到達4.26秒)で出塁、村松がレフト前ヒットで続き、3番黒岩の送りバント(一塁到達4.19秒)で二、三塁とし、齋藤のライトの頭を越える三塁打(三塁到達11.79秒)で2点、さらに成瀬のライト前ヒットで3点目を入れた。

 好守備も静岡の持ち味だ。1回表には4-6-3、8回には6-4-3の併殺を完成させているように、二塁加茂、遊撃村松の二遊間が守りの中心。シートノックの併殺プレーの際、加茂の送球を受けた村松がわざわざヒジを下げてサイドスローで送球するのを見て違和感を覚えたが、実戦では極端にヒジが下がらず、安心して見ていられた。三塁成瀬まで含めた内野の堅実な守りはここまで見た中ではナンバーワンと言っていいと思う。

 バッティングは駒大苫小牧の先発、大西海翔(3年)がカーブ中心で、ストレートにスピードもなかったので各打者はゆったりしたタイミングで間を取っていた。逆方向のヒットは村松、齋藤、成瀬、木下将吾(3年)、春翔一朗(3年)が1本ずつ記録。「緩い球を引っ張ったら術中にはまる」は技巧派攻略の合言葉である。自我を抑えた静岡打線は精神的にも大人に見えた。

 静岡の先発、春は逆に技巧で駒大苫小牧打線を封じ込めた。27アウト中、ゴロアウトは19個。さらに奪三振が1つもなかった。130キロ台前半のストレートに横変化のスライダー、カーブ、チェンジアップを丁寧にコーナー、低めに集め、打者の打ち気を誘ってゴロに仕留めるという戦略はみごとに数字になって現れている。野手陣の好守備が春の技巧を支えていることは言うまでもない。

(文=小関順二

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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